事件二日後(4)
幸か不幸かで言えば勿論幸なのだろうが、例の出口から出て校門まで回る間に誰とも会わなかった。一本道だ、擦れ違ったと言うこともあるまい。
「ちゃっちゃっと済ませるわよ」
前守は携帯のライトで辺りを照らしている。だから見つかるって。
「まあ、何の変哲もない校門だよね。怪しいものが落ちてたりしたら昨日の内で警察が拾っているだろうしね」
姫宮も退屈そうに言う。最初から渋っていたんだっけな。
「この門扉の塗装が剥げてるのは関係あるかしら」
「それお前だろ」
三日前のことを忘れたのか……いや無理もないか。色々ありすぎた。
「そうだったかしらね」
本気で関係あるとは思ってないのだろう。どうでも良さそうだ。
「それにしても、暗い。水野君は何処から見ていたんだろうね。僕なんか校門が邪魔で近くに寄らないと見えないや」
「背が低いからだ」
オレでも校門の外から中を覗くことぐらい出来る……でもオレよりは背が低かったな。そういえば襲撃犯も背低かったっけ。水野犯人説が現実味を帯びてくる。
「あたしも見えるわよ」
水野と同じくらいの前守が見えるなら、水野も見えるだろう。なんてこった。折角の現実味が!
「そうなんだ……もう少し身長欲しかったなぁ」
これぐらい、と精一杯背伸びする姫宮だが、それでも百五十五もないだろう。前守は草むらに手を突っ込んで、何か無いかしら、と呟いている。
「そういえば、ケン。僕と二人で帰ったときに話し込んでいた人がいたよね。名前を聞いても良いかな?」
何でそんなこと聞くんだろうか。物語に使う気か?
「女子と男子と居たけど」
「じゃあ、両方」
両方使うのか、どんな筋書きなんだろうか。
まあ、藤代とは話し込んでたって程でもないけど。
「藤代綾と遊佐千秋」
「ふうん。明日どっちか死んでるかもね」
どっちも女みたいな名前だね、と続けたがそんなことはどうでも良い。
「それ本当なの? どうしてわかったの?」
前守も気になったらしく、作業を中断して立ち上がる。口元がにやついてるのは流石だとしか言いようが無い。
「かも、だよ。外していたら恥ずかしいし、明日言うよ」
「絶対よ!」
コイツら事前に二人に知らせて、事件を食い止めようという気はさらさら無いらしい。だからといってオレにその気があるかと言えば無いし、そもそも連絡先も家も知らないから、座して死を待つのみだ。いや、オレが死ぬ訳じゃないし、適当じゃないな。何か良い例えはないだろうか。生きていたら遊佐にでも聞こうか。
「ちなみに、楓はどっちが死ぬと思ってるの?」
「遊佐千秋」
何てこった。最近知り合ったばかりなのに、もう死ぬのか。今日死ぬというならもっと話しておけば良かった……何をだろう。
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