第11話 魔王

 腐食パンマンは宛もなくさ迷っている訳ではない。

 

 腐食パンマンは探している。

 自分をこんな姿にしたヤツを。

 自分をこの世界に送り込んだヤツを。


 最初は闇雲に捜し続けた。しかしこの世界が広大過ぎることに気付いた時、一つ一つしらみ潰しに捜す方法に切り替えた。


 ファミコンのドラクエⅢでラーミアに乗り続けると世界一周ごとに少しずつズレてスクロールをするという裏技がある。それに倣い、大陸の端から端へ移動すると景色が変わるくらい南下してまた端から端へ移動するという生活を何年も続けていた。


 途中途中で寂れた集落を見付けても男は立ち寄らない。

 いつも訳もなく攻撃されるからだ。


 たまに城や街があったがどれも高い城壁に囲まれている為、中を伺い知ることは出来なかった。


 その内、男は禍々しい城を見付け、初めて侵入した。この城こそが、あの声の主に相応しい佇まいだからだったというのがその理由だった。


 城には多くの魔物がおり、男の手によって腐食パン化されていった。


 その内、最下層の奥の部屋へ辿り着いた。

 そして、その中には魔王がいた。

 全ての魔族を統べる王、魔王。


 魔王の姿はカブトムシだった。

 キシキシとその部屋にたった一匹で佇んでいた。

 そのカブトムシが一目で魔王だと思ったのはその禍々しさだった。

 その城や近辺全てを暗黒の障気を蔓延らせる元凶がそこにいた。

 魔王は男の心に直接話し掛けてきた。

 (ヨクゾココマデタドリツイタ!コノセカイ…)

 ビュルッ!


 その瞬間、腐食パン魔王が誕生した。


 そうして男は無言で立ち去った。腐食パン魔王は怒り狂い、そうして腐角食の顔を持つ男に膨大な懸賞金を掛けて魔族をけしかけた。その噂が回り回って世界中を駆け巡った。


 『腐角食の男を取れば一生遊んで暮らせる』


 そしていつしか男は『腐食パンマン』と呼ばれ、レアキャラのような存在になった。


 『腐食パンマン』


 昆虫は嫌い。


 『腐食パンマン』


 足の細さが気持ち悪い。


 『腐食パンマン』


 蝿に集られやすい。


 『腐食パンマン』


 蝿だけに効くガスを開発。


 『腐食パンマン』


 フマキラーを超えた。


 『腐食パンマン』


 人間には無害。


つづく。

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