水差し

 水差しを渡されて、これが全く空になってしまったら、その時に死ぬと言われた。中の様子は分からない。結構な重さがあるので、まだまだ入っているだろうと思うが、水差し自体の重さかもしれない。

 私は水差しに目盛を書いた。水を飲まねばそれはそれで死んでしまうので、この目盛の一つ分を一日に飲もうと決めたのだ。だが、残りの水量が見えない以上、こんなものは気休めに過ぎない。

 時折、水差しは凄く軽くなった。私は死が近いのだと焦り、大量の汗をかいた。その後は体が水を求めたのだが、とても飲む気にはならなかった。

 雨が降って、水差しはとても重くなった。己が情けなさに涙した日も、水差しは重くなった。だが、どんなに雨が降ろうと、涙を流そうと、溢れ出ることはなかった。

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