時は来た
つけもの
時は来た
「お父さん、来世はロックバンドを組みたいなぁ」
「来世?」
「うん。死んで生まれ変わってまた人間になったなら僕はロックバンドの一員になる。ギターが弾きたいなぁ」
「今から弾けばいいんじゃないの?」
「え? いやいや、お父さんには無理さ。学生時代にやっていたギターはどっかにしまっちゃったし。若くないし。それに、今からバンドをやるメンバーを集めるなんて、面倒だしなぁ」
「ふぅん」
「そういえば、あのギターどこにしまったっけなぁ」
「お父さん」
「ん? どうした。急に立ち上がって……」
「お父さんは前世、人間だったんだよ」
「え?」
「そしてこう言ったに違いないんだ」
「おいおい。どうしたんだよ急に……」
「来世はロックバンドを組みたいなぁ、って」
息子の手には、いつの間にかギターが握られていた。
僕が学生時代に弾いていた、アコースティックギター。
「夢叶わずとも、お父さんは弾きたいんだ。そうでしょう?」
「あ……」
「時は来た」
僕のギターの音が、再び鳴らされた。
時は来た つけもの @wind-131
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