第5話 新生魔王の食堂会議



 当面、ネーメの抱っこ係はスピカが担当することとなった。


 が、しかし。

 彼女とて、赤ん坊の世話をした経験は皆無らしい。

 ネーメの日常生活の責任をスピカに丸投げしてしまうのは、俺としても避けたかった。

 ゆえに、今後の対応を決めかねていた俺たちのところへ――、



『ありゃま、皆さんお揃いで。何かあったんですかぁ~?』



 ――小さな小さな救世主が現れた!!


 彼女はリリス。俺

 の秘書官を務める、ピンクの髪がトレードマークの堕天使少女だ。

 堕天使の証たる黒き光輪は、彼女の頭上にふわふわと浮かんでいる。


 リリスの外見は、まさしくつるぺた。

 大変なだらかなボディラインを描く彼女だが、その【性欲】の旺盛さと【性技】のポテンシャルは天井知らずである。

 そして俺たちは思い知ることとなったのだ。

 リリスの【育児力】の高さを――!



『んっふっふ~♪ ネーメちゃんっ、リリスお姉ちゃん特製の離乳食ですよぉ~♪ はい、あ~んっ』

『だぁぁ~♪ おい、ちぃ~♪』

『おぉっ、おいちぃですかっ! よかったです! さぁ、皆さんも食べさせてみてください。スプーンに載せるのは、ごく少量ですよ~♪』



『おっと、そろそろおしめを替えなくては』

『んぁ~♪』

『皆さん、集まってください。これからおしめの替え方を実演しますので、キチンと覚えてくださいねっ。ささ、魔王様もお近くで』

『ばぶぅ!?』

『さぁ、ネーメちゃん。おまたをくぱぁ、と開いて……おりょ? ほらほら、抵抗するのはメッですよ~?』

『だ、だぁぁぁ……』

『おぉっ、そうそう。おしめを替えるときは、おまたをくぱぁ、ですよ。わかりましたね~?』

『ば、ばぶぅぅ……』



『おやおや? そろそろおねむさんですね?』

『んまぁ~……』

『皆さん。赤ちゃんを寝かせるときは、こうして……丁寧に抱っこするのが一番イイです。ベッドに寝かせた方が楽ですが、こちらの体温に触れさせて安心感を与えた方が、この子の心が健やかに育ちますからね~』

『んぁ、ぁ……Zzz……』



 と、まあそんな具合に。

 リリスの育児指南は、多項目にわたって繰り広げられていった。


 そして、今。

 食堂へ移動した俺たちは、全員で会議を開始した。

 議題は『ネーメをこれからどうするか』である。


「Zzzzz……」

「ふふっ、よく寝てる……。もぅ、安らかな顔しちゃって……」


 ネーメの抱っこ係は、今もスピカが担当している。

 リリスの講義を受けたおかげか、抱っこの安定感が向上しているように感じられた。


 たっぷりの母性を湛えたスピカは、俺の胸を熱くして止まない。

 食堂の椅子に背を預けると、俺は傍らのアルテミスに囁いた。


「俺の目には、どう見てもネーメは普通の赤ん坊として映っているのだが……。先ほどの一件は、単なる思い過ごしだったのだろうか?」

「ど、どうでしょう。……正直、わたくしも自信がなくなってきてしまいました」


『はぁ……』とため息を重ねる。


 一歳九ヶ月なのに、言葉を話さないのはおかしい――。

 アルテミスがそう指摘した途端、ネーメが『え、そうなの!?』とばかりに身を震わせたのだ。

 それ以降、わずかながら言葉を口にするようになって……。


「はぁぁ~」


 再び、アルテミスがため息をこぼす。

 しかし今度は困惑ではなく、うっとりするような、愛情を宿したような吐息だった。


「あぁ、ネーメ様……なんて愛らしい寝顔なんでしょう」

「うむ……。あの寝顔を見ていると、ネーメを疑う俺たちが悪者のように感じられてくるな……」

「あぁん、困りましたねぇ」

「どうだろう。この件は、ひとまず様子見ということに……」

「それがいいと思います。心に留めておく程度にしておきましょう」


 アルテミスとの密談を続けていると、


 むにゅうん……。


 ふと、右の肩口に存在感たっぷりの質量が押し当てられた。

 ……大きい。柔らかい。温かい。

 その幸福な質量はむにゅっ、むにゅんっと自在に形を変えながら、俺の腕にまとわりついてくる。


 同時に、二本のしなやかな腕が俺の身体に絡みついてきた。

 そして鼓膜を撫でるのは、「ダンナ様ぁ~」という、甘ったるい声音。


 隣の席の自称・新妻。グルヴェイグがしなだれかかってきたのである。

 メガネの奥――そこに光る知的な瞳は、今や欲求不満に濡れきっている。


「グ、グルヴェイグ……どうしたのだ?」

「もう、アルテミスばかり……。新妻である私の耳もとに囁いてください。お前だけを愛している……と!」

「ぐぬぬぬ……」


 とは言ったものの、正直、悪い気はしない。

 グルヴェイグは(黙っていれば)文句なしの美人である。また、尻も巨大だ。


 かつては敵対していたが、今や彼女も魔界の家族。

 その熟れた肉体に溺れたくなる日も多く、自慢の巨尻に顔面を押し潰された際には、何度精を放ってしまったか……。


 というわけで、無下にはしない。

 こうして愛を囁いてくれる女性に、俺は満身の愛を返すのだ。


「グルヴェイグ、今は会議の時だ。夜まで待っておくがいい」


 言って、れろぉぉ……と舌を伸ばす。

 もちろん標的はグルヴェイグの耳だ。

 その狭い孔を押し広げるように舌先を挿入し、壁面をれろれろと舐め回す。


「んおぉぉっ!? ほぉぉあぁあぁあっ!」


 グルヴェイグが赤面を強め、熟れた身体をクネクネとよじらせた。

 知的な美人が、なんたる痴態を……。

 股間にそびえし大人の事情が、健康膨張運動を開始する。


 とはいえ、さっさと会議を始めなければ。

 グルヴェイグの孔から舌を抜き、居住まいを正す。


「……コホン。さて諸君。まずは、これを見るのだ」


 俺はテーブルに一枚の紙を置いた。

 ネーメのバスケットに入っていた手紙である。


『魔王ジュノ様へ。この子の名はネーメ。あなたの娘です』


 たったそれだけ書かれた紙面に、アルテミス、グルヴェイグ、リリス、スピカが視線を落とす。……はて、ペルヒタはどこへ行ったのだ?

 首を巡らせていると、アルテミスが「うぅ~ん」とうなった。


「困りましたね。たったこれだけでは、どうにも探しようが……」

「同感だ。もう少しヒントがあればな……」


 手紙は何の変哲もない便箋に書かれており、文字に癖や特徴もない。

 これではどうにも……。と、俺が腕を組んだときだ。



「神聖ネメシス共和国……」



 平静を取り戻したグルヴェイグが、気になる言葉を口にした。


「ネーメという名前――この子の出身国として最も可能性が高いのは、神聖ネメシス共和国だと思います」

「あぁ、なるほど!」


 アルテミスが目を見開き、パンと手を打つ。心当たりがあるようだ。


「神聖ネメシス共和国では、国教の女神・ネメシスにちなんだ名前をつけることで、彼女の祝福が得られるのです。だから民は、女の子が生まれると……たとえば『ネーメ』『ネーメス』『ネムー』『ネメネメ』といった具合に、女神ネメシスに近い名前をつけることが多くて……」

「ほほぅ。つまり、ここにいるネーメも、その一人である可能性があるわけか」

「はいっ!」


 アルテミスがうなずく中、俺は口を引き結び、三〇〇年前の出来事を思い出した。


 ――ネメシス。

 我が宿敵、六芒の女神の一人である。


 女神たちによる魔界侵攻。

 やがて魔力切れに陥った俺は、ここにいるアルテミスたちによって神聖空間に封印されてしまったのだ。


 封印魔法を食らったとき、俺はネメシスの顔を見た。


「ネメシスか……。たしか、無表情な少女だったような記憶があるな」


 そうつぶやくと、グルヴェイグとアルテミスが肩を落とした。


「ダンナ様の仰るとおりです。ネメシスはいつも無表情、無反応で……。かつては同じ六芒の女神だったものの、私……あの子と会話をした記憶がありません」

「……わたくしもです。地上観光に誘っても、お茶会に誘っても、プイッとどこかへ行ってしまって……」

「女神って、地上観光を娯楽にカウントするのね」


 これまで大人しく話を聞いていたスピカが、ほのかに白い歯を見せて苦笑する。

 ネーメの身体をポンポン叩きつつ、


「ねぇ、神聖ネメシス共和国ってどういう国なの?」


 アルテミスたちに質問を投げかけた。

 それは俺も気になるところだが、しかし。


「……? この国の第四王女だったというのに、隣国の状況を知らぬのか?」

「えぇ、そうなの。神聖ネメシス共和国とはほとんど交流がなくて……しかも特に問題も起こさないから、話題に上ることもなかったのよ」


 それに私、小さい頃から勇者の代わりをやらされてて、政治方面はさっぱり……。

 と言って、スピカはアルテミスとグルヴェイグの答えを待つ。


「あらぁ、でしたら……」

「いいでしょう。それでは私の口から……」


 どうやら説明してくれるのはグルヴェイグのようだ。

 彼女はメガネの位置を直し、淀みなく語り始めた。


 ――神聖ネメシス共和国は、神聖アルテミス王国の西方に位置している。

 国土、人口ともに、神聖アルテミス王国よりもやや小規模。

 国教はネメシス教。崇拝対象は、もちろん六芒の女神ネメシスである。

 他者との関わりや、人間族の心の機微を推し量ることが苦手なネメシスが治めているせいか、この国の体制はやや特殊――というか、合理的。


 すべての基準は、数字である。

 民が善行を積めば、プラス1ポイント。

 逆に悪行を働けば、マイナス1ポイント

 そんな具合に民の行動に応じてポイントを割り振ってゆき、その数値によってネメシスが祝福や罰を与える教義を採っているのだ。


「はぁ……」


 ここまで説明して、グルヴェイグは深いため息をついた。


「かつてネメシスは、犯罪が横行した街を丸ごと焼き払ったことがあるんです。その街に住む民の“数字”がマイナスに転じすぎたせいで」


『……!!』


 俺とスピカが息を呑む。


「あぁ……ありましたね。あれはさすがにやりすぎだったように思います……」


 当時のことを覚えているのか、アルテミスは沈痛な面持ちだ。

 哀れむようなまなざしを向けつつ、グルヴェイグは続ける。


「大昔、神聖ネメシス共和国は『神聖ネメシス王国』という名前でした。しかし当時の王族がネメシスへの信仰を軽視し、ありとあらゆる罪を重ねた結果……。

 彼女は、王族たちを神罰によって皆殺しにしました。それによって君主制が崩壊し、現在のような共和制が敷かれることになったんです」


 付いた異名が、心亡き女神――。


『…………』


 グルヴェイグの一言を最後に、食堂内に沈黙が横たわる。

 だが、徐々に人物像が見えてきた。

 心亡き女神――ネメシス。

 無表情を貫きつつ、確固たる信念によって国を動かし、罪に対しては毅然とした態度を取る少女らしい。


「それだけ聞けば好印象なのだが……うぅむ」


 神聖ネメシス共和国が小国でいるのは、もしかしたら定期的な神罰によって人口が大きく減少しているせいなのでは……。

 そんな思いを抱えつつ、俺は顔を上げた。


「話を聞く限り、ネーメは神聖ネメシス共和国の出身である可能性が高そうだ。とはいえ、親はおそらく神聖アルテミス王国内にいるだろう」


 視線の先には、堕天使少女のリリスがいる。

 こちらの意図を察したのか、彼女はぴょこんと立ち上がった。


「リリスもそうだと思いますっ! ここ数日、近隣地域でリリスたち以外の転移魔法が使われた形跡はありませんので!」


 リリスは常時、マカイノ村を覆うような大規模魔法陣を展開している。

 これは強力な防御壁だ。

 しかも、村内はもちろん、近隣地域で俺たち以外の魔力反応が現れると、そのたびに魔法陣が報せてくれるのである。


「そっか。リリスの魔法陣に反応がないということは、ネーメの母親は直接バスケットを工房へ持ってきたのね」


 スピカの言葉に首肯する。


「その通りだ。ネーメの母親は、まだ国内にいる可能性が高い。他国へ旅立ったとしても、その痕跡を辿ることはできるはずだ」


 ゆえに、俺の提案は、こうだ。


「この国をはじめ、近隣諸国にネーメの存在をアピールしよう。演説、張り紙、似顔絵……様々な手段を用いて情報を募り、必ず親を捕まえるのだ!」


 これには『おぉぉ!』と歓声が上がる。


「ジュノ様、国内のことはわたくしにお任せくださいっ!」


 大きなタレ目を輝かせるアルテミス。


「私の国でも、ネーメさんの情報を集める体制を整えます」


 グルヴェイグがメガネに手を添え、ニヤリと笑う。


「調査に必要な各種魔法陣は、リリスが担当しちゃいますよ~♪」

「ええと、私は……とりあえず、ネーメをずっと抱っこしてるわ!」


 リリスとスピカも前向きな反応だ。

 ……よし。なかなか建設的な会議ができた気がする。

 会議時間は最短で。

 取り決めの実行は迅速に。

 それが魔界の仕事術である。


「さて諸君。会議はこれにて……ぬぐぅ!?!?」


 俺が会議の終了を告げようとした、その直後。

 突如として、下半身に猛烈な快感が襲いかかってきた!!


 震源地は、我が肉体の中心部。

 会議によってすっかり落ち着きを取り戻していた、俺の痴的な愛棒だ。


「はむっ、はむぅ……。ごろにゃん……。会議、終わったよね……? んんぅ~ご主人様ぁ、構って構って~」


 犯人はペルヒタだ。

 姿が見えないと思ったら、いつの間にかテーブルの下にもぐり込んでいたのだ。


 俺の太ももに手のひらを添え、大きく身を乗り出して、ズボンの上から股間をはむはむしているのである!


「んんっ、ご主人様……ごひゅじんひゃま……はむはむ、はむはむ……」


 ペルヒタの奉仕は丁寧だ。

 首を傾け、儚くも柔らかい唇で、しぼんだ肉竿をはむはむと甘噛みしている。

 根元から先端へ――先端から根元へ。

 焦らすような甘噛みが魔性の砲身を往復し、患部が快楽の痺れに包まれる。


 膨張運動――開始。


「はぁ、はぁ……はむはむ。ご主人様の……わたしのおクチの中で、ムクムク膨らんでくるぅぅ……」

「くっ、うぅ……。それよりペルヒタ、会議の内容は!?」

「ちゃんと聞いてた……問題ナシ。それより……はむっ、あむぅ……。ずっとご主人様のえっちな部分を眺めてたから、ムラムラが……とまらにゃい……」


 ペルヒタの唇がいやらしく蠢く。

 その絶妙な圧迫感たるや――その背徳的な光景たるや――!!


「ご主人様の、ピクピク跳ねてる……」

「ぬうぅ……! あ、当たり前だ。お前の小さな唇が、これほど淫らに蠢いているのだぞ? ペルヒタよ……いいだろう。続けるがよい!」

「ごろにゃんっ」


 ペルヒタはニンマリと口端を上げ、今度は肉剣の切っ先に吸い付いてきた!

 もちろん俺はズボンを穿いている。

 なのに彼女は、その部分をチューチューと吸ってみせたのだ。

 健気に、いじらしく、愛らしく。

 それでいて、肉棒のニオイを愉しむがごとく、鼻をスンスン鳴らしながら……。


「スンスン……スンスン……。ご主人様、えっちなニオイしてきた……。わたし、んんっ……我慢できないかも……」


 ペルヒタの頬が赤々と染まっていく。息づかいが荒くなっていく。

 その直後、聞こえてきたのは小さな水音だ。


 くちゅっ、くちゅくちゅ……。ぐちゅ……くちゅぅぅ……。


「な、なんと……!」

「はぁ、はぁん……ご主人様……しゅき、しゅきぃぃ……」


 その水源は――言わずもがな、ペルヒタの柔らかな二枚貝である。

 彼女は俺の股間をズボン越しに吸いながら、フリルたっぷりのスカートの中に片手を滑り込ませたのだ。

 フリルの向こうで何が起こっているのか――想像は容易だ。


 くちゅっ、にちゃっ……くちゅちゅっ……ぐぢょ、ぐぢゅる……っ。


「んんっ、んんぅっ……ご主人様、あぁぁ……ごしゅじんしゃまぁぁ……!」


 だんだん水音が大きくなっていく。水音の粘度も上がっていく。

 ペルヒタの呼吸が何度も弾み、スカートに突っ込んだ腕の動きも、より激しくなっていく……!


「んんっ、んんぅ……ご主人様……!」

「ぺ、ペルヒタ……!」


 テーブルの上と下。俺とペルヒタの視線が絡み合い、通じ合い、互いに小さくうなずき合った。


 そして――。



 ぶびゅぅっ! びゅるるるっ……! どびゅるるるうぅぅぅぅっっ!!!!



 白濁の砲撃音が、食堂内に響き渡った。


「うぶぅっ!? んぐっ……ぢゅぷ……。んんんっ……」

「うぬぅっ……。ぬおぉぉ……!」


 なんたる開放感だろう。

 股間はむはむによる、焦らすような快感。

 ずっと感じていたもどかしさが、激しい精暴発によって一気に解消されたのだ。


 この清々しさはどうだ。

 ズボンの中に射※してしまったことなど、些細な問題に感じられてくる。


「んんんっ……ふぐぅっ……。んぐっ、はぐぅう……」


 ペルヒタは小さな身体をギュッと丸め、ビクン、ビクンと不規則に背筋を波打たせている。強烈な絶頂を味わっているようだ。


 しかし彼女は離れようとしない。

 全身を小刻みに痙攣させながらも、


「ぢゅるっ……。ちゅー、ちゅー……。ぢゅぷぷっ……ちゅううぅぅう……!」


 と音を立て、俺の股ぐらに顔を埋めているのだ。

 まるでズボンの奥から、魔王液を吸い出さんとするかのように。

 なんて健気な……! 俺の胸は、ペルヒタへの想いでいっぱいになった。


 彼女の髪を優しく撫で、


「ペルヒタよ、大儀である。たいへん……よかったぞ」

「んうぅっ……ごしゅじんしゃまぁ……」


 吸引に没頭していたペルヒタが顔を上げ、とろけた笑みをこちらへ向ける。

 ズボンから吸い出した※液と自身のよだれによって、今や美貌はドロドロである。

 それでも――彼女は幸せそうだ。


 そこで、ふと気づく。


『………………』


 スピカ、アルテミス、グルヴェイグ、リリス。

 彼女たちが、呆れ顔でこちらをジ~ッと見つめていることに……!

 その視線によって、俺はようやく思い出した。

 ここが食堂であることを!!


「クッ、俺としたことが……。ペルヒタのはむはむが心地よすぎて、根本的な部分を忘れてしまうとは……!」


 ※※の副産物として、心がどんどん落ち着いていく。

 やがて魔賢者のごとき平静が訪れ、ズボンの中がドロドロであることが非常に気になってきてしまった。


「ちゅーちゅー……。ご主人様……ちゅーちゅー……」


 まあ、その点に関してはあまり問題ない。

 今もこうして、ペルヒタが股間に顔を埋め、中の※※を吸い出しているのだから。


 とは言ったものの。


「ジュノ……あなたねぇ……」

「ぬっ……」


 スピカの呆れ顔は、しかしなかなかの破壊力だ。

 赤ん坊を抱いた彼女に性的なアレコレをたしなめられると、罪悪感のあまり胸がチクチク痛んでくる。


 ……が、そんな視線が股間へ次なる活力を与えるのだから、人間族の肉体はまさしく神秘である。


「ぷはっ……ご主人様、またおっきくなってきた……。んふふっ、はむっ……ちゅーちゅー……んん~っ」


 白き魔弾の再装填に、ペルヒタはご満悦である。

 と、ここでもう一人、我慢が限界に達した少女が――。


「はぁ~……魔王様ったらぁ♪」


 堕天使少女のリリスである。

 頭上に漆黒の光輪を浮かべながら、チロリと舌なめずりをする。

 幼い顔立ちをしているというのに、その仕草たるや妖艶の一語である。


 リリスがテーブルに手を添える。

 テーブルの――角の部分に。

 そして彼女は腰を突き出し、自らの股間をテーブルの角に擦りつけ始めた。


 細い腰が前後する。

 テーブルの角がリリスの股間を刺激し、すぐにささやかな水音が聞こえてきた。


「はっ、はっ、はぁぁ……! もぅ、魔王様ったらぁ……そんなの見せつけられたら、リリスだってムラムラして……ガマンできなくなっちゃいますよぉ!」


 くちゅっ、くちゅくちゅ、ぐぢゅっ、ぐぢゅっ!


 テーブルの揺れが激しくなるにつれて、リリスの吐息も弾みを増した。

 彼女は股間を濡らしながら、うるんだ瞳で周囲を見渡し、


「んっ、んっ……! み、皆さん、もう会議はおしまいにしましょう! ここから先は、魔王様とのどっぴゅんフェスティバルです!」


 乱※パーティーの開催を促してきた!


「あぁん、大賛成です! わたくしだって……もうたまりません!」


 舌をレロレロ動かしながら、アルテミスが俺のズボンを脱がしにかかる。


「うぐぅ……。アルテミス、独占は……ダメ。二人でペロペロ、しよ……?」


 股間の占有者であるペルヒタは、アルテミスの侵略に抵抗しながらも、協働※淫体制を打診する。


「あぁ、股間が埋まってしまいました……では私は、ダンナ様のおクチを……!」

「グルヴェイグさん。リリスと一緒に魔王様とちゅっちゅしましょう♪」


 言うが早いか、こちらに迫ってくるグルヴェイグとリリス。

 彼女たちは目をつむり、唇をすぼめ――俺にキスの雨を降らせるつもりらしい。


 さて、残ったのは……。


「スピカよ。お前はどうするのだ?」


 ズボンを脱がされ、左右の頬に多量のキスを浴びながら、俺は赤ん坊を抱いたスピカに訊ねた。


「えぇっ!? で、でも私、ネーメを……」


 などと言って、こちらから視線をそらしたものの。

 俺は、見てしまった。

 スピカの身体が、小さく揺れていることに。


「よいではないか。ネーメもよく眠っている。……さぁ、モジモジしていないで、こちらへ混ざるのだ」

「……!? ど、どうしてわかったのよ!?」


 スピカがカ~ッと頬を赤らめ、唇をわななかせる。


 そう。

 スピカはテーブルの下で、密かに下半身をモジモジさせていたのだ。

 理由は言わずもがな。

 彼女の下着は、すでに重さが変わるほど濡れそぼっているだろう。


「うぅう……。だって、そんなの見せつけられたら、誰だって……!」


 ブツブツ言いながら、ネーメをバスケットに寝かせるスピカ。


 ――大丈夫だ。起きる気配はない。

 俺は柔らかな女体に包まれながら、両腕を広げ、スピカを受け入れんとする。


「スピカよ、今こそ性欲を解放するのだ! その底なしの性欲を、さあ……!!」

「底なしの性欲って何よ!」

「ククク……。【性欲】八八〇は、充分底なしだと思うが?」

「もぅ! 私、そんなにえっちな子じゃないんだからね!!」


 などと言いつつ、スピカは俺の胸に飛び込んできた。


 告白しよう。

 俺はこのとき、彼女の性欲を侮っていた。

 七日に及ぶ長期の禁欲を経て、ドロドロに煮詰まったスピカの性欲を……!


 その結果、スピカは誰よりも熱烈にキスをして、誰よりも執念深く下半身に奉仕し、誰よりもたくさんの射精を導くことになるわけだが……。


 ともかく。

 どっぴゅんフェスティバルは、夕食の仕込みにやってきたメイドたちが悲鳴を上げるまで続いたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る