新生魔王の女神狩り【ヴィーナスハント】 ~史上最強の快楽スキルで、奪われた世界を取り戻す~

是鐘リュウジ/ファミ通文庫

第1部

第1話 新生魔王と三〇〇年後の世界


 復讐……。そう、復讐だ。


 あの麗しくも憎たらしい、女神王ヴィーナスと六芒の女神どもめ。

 もしも復活できたなら、一体どうしてくれようか……。


 俺はそれだけを考えてきた。

 不快きわまる神聖空間の流れの中を、精神体のみの状態でゆらゆら漂っているあいだ、ずっとずっと。

 奴らに封印されてから、どれほどの月日が流れたのか……もはやわからない。


 しかし希望は残っている。

 魔王ジュノとしての身体は滅ぼされたが、精神――思考力は奪われなかったのだ。

 ゆえに、脱出方法はいくらでも模索できた。

 しかし結局、実行はできずにいる。手足が無いのだからどうしようもない。

 あぁ……なんと歯がゆいことか。


 女神どもへの復讐を誓い、その一念で『魔導調律』という史上最強の快楽魔法を編み出すことにも成功した。

 俺から思考力を奪わなかったことが、奴らの決定的な失敗だ!

 とはいえ、このままでは。

 魔導調律の威力を発揮することもなく、これから先も永久に、この神聖空間を漂うしかないわけで……。


 俺を封印してから、女神たちは世界――リリアヘイムに何をしたのだろう。

 魔界の仲間たちはどうなったのだろう。

 リリスは…………無事だろうか。


 そのときだ。


 ――っ!?

 ふと、大きな力に引き寄せられるのを感じた。

 精神体になった俺を、この神聖空間の流れから引きずり出そうとするかのような、猛烈な魔力の波動だ。

 どこだ。これほど邪悪で心地よい力……一体どこから!?


 邪悪な波動が強まっていく。

 加速を感じる。

 遠く彼方へ引き寄せられていく――。

 

 その速度が頂点に達したとき。

 俺は、一切の思考を断ち切られた。



 ガッシャアアァァァァンッ!!



 激しい破砕音が耳をつんざく。

 直後に衝撃。

 地面に倒れたのだとわかったのは、それからしばらく経ってからだ。


「……うぐ、ぐ……」


 自然と声が洩れた。

 ……声? 声が出せる、だと?


 いや、声だけではない。

 ざらざらとした地面を感じる。薬草のような匂いがする。ぼやけた視界の先には、石づくりの壁が見える。あと、身体が濡れている。というかヌルヌルする。

 どれもこれも、精神体のままでは感じ取れないものばかりだ。


 ということは。もしや!


 混乱していると、ふいに声をかけられた。


「魔王……様?」


 こちらを見下ろすのは、幼い堕天使だ。

 ツインテールにまとめたピンクの髪。頭上に浮かんだ黒い光輪。

 なだらかなラインを描く未成熟な身体を、扇情的な黒革の衣装で包んでいる。


「もしもし、魔王様? 魔王……ジュノ様ですよね?」


 ジュノ――俺の名だ。

 幼女は緊張しているのか、やや表情がこわばっている。

 だが、間違いない。この愛らしい顔! 愛おしい声!


「リリス、か」


 切れ切れにそう告げると、次の瞬間。


『わああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!』


 室内のあちこちから、少女たちの大歓声が巻き起こった。

 ここはどこだ? リリスの他には誰がいる?

 とっさに起き上がろうとしたが、身体が動かない。くっ、周囲の様子を確かめたいというのに。


 すると、後頭部にふにゅっとした感触がやってきた。


「あぁ、魔王様……魔王様ぁ……!」


 リリスが膝まくらをしてくれたのだ。

 大きな瞳には涙があふれ、俺の身体にポタポタと滴ってくる。


「リリス……会いたかったぞ」


 俺は右腕に力を込めた。よし、ゆっくりなら動かせそうだ。

 手を差し伸べ、リリスの頬をそっと撫でる。柔らかい。温かい。


「うぐっ、ひぐっ……リリスも会いたかったです魔王様ぁ……うわぁぁぁぁんっ!」

「リリス……うわぁぁっ!?」


 俺は目を瞠り、リリスよりも大きな声を上げてしまった。

 腕が! 封印される前は、漆黒の鎧そのものだった俺の腕が!


「人間族の腕、だと!?」


 そう。

 浅黒く、やや筋肉質の、人間族の腕になっていたのだ。


「な、なんだ、これは」

「あのぅ……ジュノ様。これ……どうぞ」


 別の幼女から手鏡を渡される。

 なんて完成度の高い鏡だ。これほど鮮明に対象を映す鏡など、見たことがない。


「これが……俺、なのか?」


 鏡に映し出されたのは、人間族の青年だった。

 青みがかった黒髪。利発そうな瞳。とてつもなく整った顔立ち。

 しかし額に二本のツノが生えている。

 このかっこいいツノは以前、俺の鎧についていたモノと同じだ。


 少し額に力を入れると、ツノがスッと引っ込んだ。出し入れ自由というわけか。ツノがなくなると、いよいよ人間族の青年そのものである。

 いや、待て。待つのだ。頭とツノが痛くなってきた。処理すべき情報が多すぎる。


 ――と、そこで気づいた。

 室内にいる魔族の少女たちの視線が、俺に集まっているのだ。

 主に、俺の下半身に。

 皆、なぜか頬を染めている。


 ……まあ、それはともかく。ようやく視野がハッキリしてきた。

 見たところ、ここは工房のようだ。

 たくさんの魔導書がつまった本棚。床に描かれた複雑な魔法陣。

 そして砕けた巨大なクリスタル。

 クリスタルの中に入っていた液体が、破片と一緒に激しく飛び散っている。


 よし。だんだん気分が落ち着いてきたぞ。

 周囲の状況がわかったことだし、次の疑問を解決するとしよう。


「俺の身体は一体……」


 そうつぶやくと、リリスに手を握られた。


「ぐすっ、ぐすっ……えっへへ~♪ 魔王様。積もるお話は、お風呂でしちゃいましょう。はい、こっちですよ~」


 リリスは泣きながら笑っている。


「まずは魔導溶液のヌルヌルを落としちゃいましょうね。ほい、あんよのおけいこですよ~。いっちに♪ いっちに♪」

「う、うむ……」


 リリスに手を引かれながら、赤子のようにヨチヨチ歩いていく。

 そんな俺たちの背後では、


「リリス様ずる~い!」

「わたしもジュノ様と入りたいよぉ」

「私もですぅ!」


 魔族の少女たちがブーブー文句を言っていた。


「まーまー皆さん。これは魔導研究師長の特権ってことで~♪」


 しかしリリスはどこ吹く風だ。まったく、この子はぜんぜん変わっていないな。




 奥の扉を出て、石づくりの廊下を歩き、短い階段をのぼる。

 そこにあった浴室に入ると、もうもうとした湯気に迎えられた。

 ほどよい熱気に目を細め、俺は感心のため息を洩らした。


「俺が封印されている間に、治水技術が発達したのだな……」


 浴室自体はさほど広くない。リリスぐらいの幼い魔族が六人も入れば満室だ。

 リリスによると、取っ手をひねれば湯があふれ、使用した湯は地中に敷かれた管を通って屋外へ排水されるのだという。さらに現代では、水を温める魔法が大幅に簡略化され、広く民に普及しているそうだ。


 大理石の床を踏みしめ、その便利さに感じ入っていると、


「魔王様が封印されてから三〇〇年……。この世界も、この国も、いろんなことが変わっちゃいましたよ。ささっ、どうぞ」


 全裸のリリスに促され、小さな木のイスに腰かける。

 ここまで移動する間に、ずいぶん身体が動かせるようになった。


「三〇〇年か……」


 魔族は基本的に長命だ。三〇〇年という期間は、あくまで寿命の一部である。

 だが俺にとって、この三〇〇年は実際以上に長く感じられた。

 魔界の仲間たち――大切な家族と、いきなり離ればなれにされたのだ。

 神聖空間の中で、何度さびしさを感じたことか……。


 そこで俺はハッとした。


「リリス。するとお前は、俺を復活させるために……三〇〇年間、ずっと?」

「そりゃ~もう♪ じゃ、お背中流しま~す」


 さらっと応じ、リリスが俺の背後に回った。

 彼女が手のひらで俺の背中をこすると、身体が泡だらけになっていく。

 どうやら薬液をつけているようだ。

 すぐに魔導溶液のヌルヌルが落ちていき……なんとも心地いい。

 背中を丁寧にこすりながら、リリスは言う。


「魔王様が封印されちゃって、魔界も小さくなっちゃって……。でもリリス、諦めなかったんです。みんなで魔王様を復活させようって声を上げて……それからず~っと、復活魔法の研究に打ち込んだんですよ」

「神聖空間から俺の精神体を引き揚げ、生身の肉体へ移す魔法か」


 三〇〇年前には存在しなかった術式だ。

 それを一から研究したとは。なんという想いの強さだ。


「ありがとう……リリス」

「いえいえ♪ 魔界のみんなは魔王様が大好きなんです。心から魔王様を信頼してるからこそ、三〇〇年間、復活魔法のために魔力を分けてくれてたんですよ!」


 それだけの術式、発動させるには多大なる魔力が必要だろう。

 魔界のみんなが少しずつ魔力を出し合い、リリスたちが研究を続けたことで、やっと俺は復活できたのか……。

 感謝の想いで胸がいっぱいになり、じわりと目頭が熱くなる。


「むっ……」


 ふいに、瞳から熱い雫があふれてきた。……涙だ。

 以前の俺は涙など流せなかった。

 だが、これは……。


「リリス。人間の身体とは、良いものだな……」


 しみじみつぶやくと、リリスが俺の前へとやってきた。

 細い指先を俺の目もとに添え、そっと涙を拭ってくれたかと思うと、


「魔王様……復活、おめでとうございますっ! だいだいだ~い好きですっ!」


 いきなりむぎゅっと抱きつかれた。

 あぁ……なんて柔らかい身体なのだ。

 幼い胸。その真ん中には、薄桃色の小さな突起。うっすら浮き出た鎖骨、肋骨。


「リリス……」

「ひゃんっ! ……もぉ、魔王様ったらぁ」


 思わず左右の手を伸ばし、彼女の小さな臀部をつかんだ。

 とろけそうなほど柔らかな尻肉に、指先がむにゅっと埋まっていく……。


 あまりの心地よさに、俺は衝撃を受けた。

 硬い鎧と人間族の皮膚とでは、相手に触れたときの快感が段違いなのだ!

 この繊細な手があれば、もっとリリスを可愛がれる気がする。


「むぅ! リリス、これはすごいぞ!」

「はぁっ……んっ、んっ……魔王、さまぁ……ぁんっ!」


 リリスの尻は小さく、柔らかいのにハリがあり、指先をほどよく押し返してくる。

 ――楽しい。

 幼女の尻を好き放題にまさぐるのは、なんて楽しいのだ!


「んぁっ、あぁぁっ……はぁぁんっ……!」


 リリスが洩らす甘ったるい声も、興奮を刺激してきて…………む?

 そこで、ふと気づいた。

 股の付け根がものすごく熱いのだ。患部を見下ろし、俺は瞳を見開いた。



 股間にくっついている棒状の器官が、雄々しく膨れ上がっていたからだ。



 な、なるほど。人間族の姿になったということは、コレも生えていて当然か……。


 この股間の巨木は、漆黒の鎧だった時分には存在しなかった器官だ。よって、特に興味や関心は持っていなかったのだが……いざ生やしてみると、どうにも落ち着かない。


「わわっ! 魔王様ったら……むふふっ」


 戸惑う俺をよそに、リリスはなんだか嬉しそうだ。

 大きな瞳をイタズラっぽく細め、膨張した器官に右手の指を絡めてくる。


「ちょうどいいです。身体が動くようになってきたわけですし、コッチも正常かどうか、ちょっと試してみましょうか」

「リ、リリス。なにを……ふぐぅっ!」


 俺は低くうめいた。

 股間のダークネス・ブレイドを握ったリリスが、両手を上下に動かし始めたのだ。


「魔王様、いかがです? シコシコするの……気持ちいいですかぁ?」


 ねっとりした口調でささやかれる。

 リリスの吐息が耳をくすぐり、ますます股間が熱くなっていく。


「えへへ♪ 男の子は、こうすると気持ちいいって本に書いてありました。どうやらホントだったみたいですね」


 彼女の手のひらには薬液が残っている。

 それが滑りをなめらかにして、浴室内にぐちゅぐちゅという音が響き始めた。


「はぁ、はぁ、リリス……!」


 股間に甘い刺激が走る。予想外の快感に襲われ、自然と腰が浮いてしまう。

 俺はたまらずリリスを抱きしめた。

 しかし、その未成熟なぬくもりに触れていると、ますます気持ちが昂ぶってきて――。


「リリス、しかし、これは……い、いいのか?」


 彼女に無為な負担を強いているような気がするのだが……。

 しかし、リリスはニッコリ笑ってうなずいた。


「いいんですよ魔王様。つるぺったんなリリスの身体で、こ~んなにおっきくしてくれたんですもの。リリス、とっても嬉しいです♪」


 パァッと、輝くような笑みを向けられる。


「そ、そうか。安心したぞリリス。股間が膨らむのは、むしろ良いことなのだな!」

「もちろんです♪ 女の子を前にしたら、おっきくするのが作法というもの! 魔王様、どうか自信をお持ちくださいっ!」


 そしてリリスは声音を静め、


「三〇〇年前……魔王様は女神どもの封印魔法を受けながら、わずかに残った魔界の領土に転移魔法をかけてくれましたよね?」


 手首のスナップを利かせて、元気よく肉※をしごき始めた。

 さらに、ときおり先端部分を手のひらでこね回してくる。


「転移魔法に力を注いだせいで、魔王様は封印されてしまいました。……ですけど、おかげでリリスたちは助かったんです。それから三〇〇年間、『マカイノ村』という名前を使って、なんとか生活を維持してるんですよ」


 リリスが両手の動きを速める。ヌルヌルになった股間が、なおも刺激される。

 腰の奥が……痺れてきた。


「マカイノ村は、『神聖アルテミス王国』の田舎町ってことになってます。女神王ヴィーナスは……魔王様を封印してから、リリアへイムを六つの国に分割したんですよ。で、今は配下の六芒の女神たちがそれぞれの国を統治してます」


 腰が――熱い。背筋が震える。


「この国の人間たちは、女神王ヴィーナスの他に、六芒の女神の一角である『アルテミス』を信仰してます。国名は、それぞれ国教になってる女神の名前がついていて……」


 そこまで言って、リリスはわずかに眉を上げた。


「おや、むくむくって膨らみましたね。あぁ~魔王様、お顔がすっかりとろけちゃって。カワイイです♪」

「リ、リリス。このまま続ければ……俺の魔導砲が暴発を……」

「だいじょーぶですっ♪ 我慢せず、リリスに向かってい~っぱい出してください!」

「う、うむっ……! ならば――全力で解き放つぞ!!」


 ついに限界を迎えた俺は、リリスに向かって勢いよく腰を突き出した。


「アーン♪」


 彼女は両手を激しく上下させながら、口を大きく開けてみせる。

 そして。


 びゅるっ! びゅるるるっ! ぶびゅるるるるるるるぅっっ!!


 パンパンに張りつめた魔導砲の先端から、おびただしい量の白※液が放出された。


 その瞬間の快感たるや――。

 全身がジワ~ッと甘い痺れに包まれ、意識が飛びそうになってしまった。


「んぁぅっ! すごっ……たくさん……っ!」


 吐き出された※液が、リリスの全身に容赦なく降りかかっていく。

 ピンクの髪。大きく開けられた口の中。そして幼い裸体へと……。


「はぁはぁ……あむっ、じゅぷっ……ぢゅるるるっ」


 全身にこびりついた※濁液を、リリスは美味しそうにすすっていく。

 額や頬から※液をすくい取ってはちゅぱちゅぱと指をしゃぶり、口内に溜めているのだ。


「……ごっくん♪」


 待ちわびたように喉を鳴らし、うっとりと虚空を見つめるリリス。


「はぁぁ~……。魔王様の一番しぼり……リリスがいただいちゃいましたぁ~♪」

「う、美味いのか……?」


 荒い息をつきながら訊ねると、リリスはボーッとしたまま、


「だって、魔王様の想いそのものですもの。そりゃ~もう美味しいですし、心が満たされますよぉ。魔王様の貴重な子種が、体内に入ってくる感覚……たまりません♪」

「そ、そうか」


 まあ、リリスが満足しているなら良しとしよう。

 すると彼女はポンと手を叩き、


「それはそうと魔王様。リリス、シコシコしながら、魔王様が封印されてからのお話をしましたけど……ちゃんと聞いてましたか?」

「…………」

「……魔王様?」


 小首をかしげるリリス。

 ここは魔界を統べる王として、威厳あふれる回答をしなければならないところだが、しかし。


「……気持ちよすぎて、何一つ覚えていない」

「で、ですよねー……」


 リリスがクスクス苦笑する。その表情の、なんと愛らしいことか。

 この子の前では正直になってもいいだろう。


 俺は、そう思った。

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