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奥さんの話では、的場さんが『飲みに行ってくる』とだけ残して帰って来ていないそう。連絡もないとかで、先日俺の店の話をしていたから気になって来たのだそうだ。
どうやら的場さんは心臓が悪いようで、こんな寒い日に飲むなんて信じられないと奥さんはご立腹だ。
「お待たせして申し訳ありません」
「いえ、いいのよ。私が無理にお願いしたのですから」
奥さんに少しだけ待ってもらって超特急で洗剤を購入し、一緒に店に向かうことにした。
まだ開店時間じゃないから、的場さんは来ていないと思うと伝えても、一度確認したいとのこと。どうして俺の顔を知っているのかと聞いたら、以前写真を見たと答えた。いつ撮ったものか全然覚えてない。
「いらしているでしょうか」
「あの人の事だもの、あり得なくないわ。全く、考えなしなんだから」
横からビシビシと怒りのオーラを感じる。心配しているからこそ、だよな。
なんて思いつつ、奥さんの好意で相合傘をして店に向かうと、ガラス越しに店内を覗いている人影が一つ。うそだろ、もしかして・・・
「あなたっ!」
やっぱりかーっ!
「奥さんっ」
と言葉を口にするも、駆け出した奥さんは止まらない。その声に振り向いた人影は紛れもなく的場さんだったし、濡れた地面を蹴り上げて飛んだのは奥さんだし、その飛び蹴りをボディで受け取ったのはもちろん的場さんだ。華麗な飛び蹴りだが感心している場合じゃない。
「的場さん、奥さんっ!」
駆け寄ると地面に座り込んだ的場さんと、仁王立ちの奥さんが。
「こんな寒い日に飲みに歩くなんて! これ以上心配を掛けないで頂戴っ!」
こっちの方が心配だわ! と思いつつも口には出せず・・・。何となく、こんな日でも飲みに出たくなる気持ちが分かったような、分からないような・・・? 想いって難しい。
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