高校生、体一つで今を生きる。
雨飴 夜星
一章 桐谷最中
プロローグ
ジリジリジリジリ.......
日が差し込む部屋で一つの時計が鳴り響く。朝から響くその音に、鈍く反応しながら布団を剥ぐ一人の少女がいた。
白く透き通りそうなシャツを袖に通し、一つだけ目立つ赤いリボンを襟下につける。お辞儀したときにチラチラと見えそうなほど短い無地のスカートを履いたなら、妖艶なラインを描く生足を見せながら紺色の靴下を履く。
朝食はいらない。階段を足音立てずにとっとっと...と降りると、玄関に直行。まだ1年しか履いてない少しきれいなローファーを履くと、誰もいない部屋にいってきますと告げて家を出る。3年前からかな。いってきますの声が一人寂しくこだまするようになったのは。昔はいってきますという父の声から始まり、最後に出ていく年の離れた弟を見送る、母のいってらっしゃいの声が聞こえたはずだ。
風が吹く。すると頭の上に花びらが舞って落ちてくる。自転車にも幾つかのっている。軽く払ってから自転車を出すと、バックをかごに乗せて自転車に乗る。走り出すと、ちょうどいい、いやまだ少し肌寒い風が花びらと一緒に吹いてくる。でも気持ちいい。道路を真っ直ぐ走る。途中踏切で止まるが、すぐに走り出す。
少し閑散とした商店街を走っているとき、おばさんに声をかけられた。
「おお、最中ちゃん。おはよう。今日も行ってらっしゃい。」
いってきます...そうお辞儀しながら言う。最中と呼ばれたその少女は。
桐谷 最中(きりたに さなか)、私はそういう名前だ。高校2年生、17歳。真面目、それが私を覆う
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