20 逃げる僕、追いかける君(本当に追いかけているのは)

「絶対につかまえてみせるんだから!」


 そう君が宣言したのはいつだっけ?

 その宣言どおり、君は今も僕を追いかけてきてくれている。

 それに対し僕は――今日も逃げ続けている。


 ――うん、そうだね。僕、君のこと好きだよ?

 え、いやいや嘘じゃないって。ホントホント好きだよ。

 ごまかしてなんてないってば。本気さ。



 ……あーあ。怒って行っちゃった。

 でも君はまた、僕を追いかけてくるんだろう?

 それが嬉しくて、悲しいよ。

 僕なんかよりよっぽどふさわしい人がいるのに、君はいつまでも僕を追いかけてくる。


 ごめんね。

 本当は、君が嫌いだって言えればいいんだろうけど。

 言えないんだ。それは嘘になってしまうから。

 本当の気持ちを言わないかわりに、僕は君に嘘をつきたくないんだ。

 わがままだってしってるよ。でも、それだけは譲れない。



 だから僕は今日も逃げよう。この本音が君にばれないように。

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