男とか女とか花木リンとか
カゲトモ
1ページ
「みぃつけた」
その声にゾクン、と背中に悪寒が走る。まさか、この声は。なんてセリフじみた言葉が頭に浮かぶ。
嘘だと言ってくれ。
「ただいまっダーリン☆」
「っ! 誰がダーリンだっ!」
ぎゅっと背中から抱かれた腕を払うようにして振り向いた。
「やーん」
「やーんじゃねぇ、離せっ」
振りほどくようにして身体を捩るも、ぎゅっと抱いた腕は離そうとしない。むしろ締め上げてくる。ふざけてるコイツ。
「怒らないって約束してくれたら離してあ・げ・る」
「あぁん!?」
「ほらほらぁ、怒っちゃやーだ」
ぎゅっ。
「!!! どこ触ってんだてめぇっ!」
「あははははは」
満足したのかぎゅっと抱いていた腕をパッと離される。反動で前に転びそうになった。
「もう、そうちゃんが怒るからでしょっ」
「お前が悪いんだろっ」
「あたしは悪くないもーん。久々のダーリンに嬉しくなっちゃって抱き着いただけだもーん」
「誰がダーリンだ」
「そうちゃんでしょっ。それなのに全然連絡寄越してこないんだもん。捨てられたのかと思っちゃった」
真っ赤なネイルの人差し指を口元に当てて小首を傾げてくる。おいやめろ。いくら夕方だと言っても周りに人もいるんだぞ。ご近所さんにヤバい奴だと思われるだろうが。
「おいやめろ誤解が生じる」
いつお前が俺のハニーになったんだよ。そんな記憶一つもないわ。
「やだ、記憶喪失?」
「言ってろ」
相手にしてられん。ここはさっさと帰るに限る。
「今日はお休みでしょ? うちにいらっしゃいよ」
「絶対ヤダ」
「いいじゃない、サービスするわよ?」
「お断りします」
ここは全力疾走で帰るしかない。回れ右、とばかりに振り返ってはし「逃がさないわよ」
「ちょ、マジで雪降るかもしれないし」
「雪降ったら送ってってあげるわよ。ご近所のよしみでしょ?」
なに当たり前みたいな顔してんだ。ぶん殴るぞ。
「大体なんでオーナーがこんなとこにいるんだよ。店開いてんだろ」
「大丈夫よう、あたしがいなくても。うちの部下は有能なの。じゃ、行くわよ」
「嘘」
「嘘じゃなーい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます