【自主企画参加用】私の選抜エピソード
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いつか女性主人公の仮面ライダーが出るかもね(【モジシャン】より)
7月8日。午後2時50分。
「このお店、お気に入りだったのにな……」
それもこれも全て
一体どんな言葉で
時計の長針と秒針が12を指そうとした。
その時だった。
店中のスマホのアラームが鳴り響いた、まるでアブラゼミが命を燃やしながら鳴くように。
この音は緊急地震速報ならぬ緊急怪人速報のアラーム。
近くで怪人が出没したのだ。
『民間人の皆さんは警察の指示に従って非難してください!』
外ではすでに警察機動隊が人々の避難誘導を行なっていた。さすが日本の警察は優秀だ、仕事が早い。
カフェの店員達も客達を外に誘導していた。
その時、彼女の脳裏にある疑問がよぎった。
もし後者なら、と思うと彼女の中で怒りがこみ上げてくる。こんな大事な時に、自分の彼女が別れ話を持ち出しているという時に、怪人の撮影を行っているのだろうか。
「……よし」
あることを決意した
彼女は決めた、怪人のいる現場に行こうと。そして、もし
建物の陰に隠れて機動隊の目を欺きながら、怪人が起こしているであろう破壊音を頼りに進む
そしてたどり着いた、怪人のいる広場に。
今まで怪人はテレビのニュースや
禍々しい身体、恐ろしげな顔。動画や写真では絶対に感じられないであろう、リアリティを醸し出していた。
また、あの怪人が破壊したであろう建物の残骸や瓦礫が、やつの物恐ろしさを引き立たせていた。
ふと我に返った
「……!」
そして彼女は見つけた。自分の恋人を。正確には元恋人になる予定の男を。
「(
懸念よりも憤怒の方が彼女の心を支配していた。
彼が取り出したのはカメラには似ても似つかない、奇妙な機械だった。
「まったく、こんな時まで……。これじゃあ、あいつに愛想付かされても仕方ないな」
そう呟きながら
「変、身!!」
力強くそう言いながら、
――トメル! ハネル! ハラウ! レッツ、カキトリ!!――
機械から軽快な音楽を音声が流れると同時に、どこからともなく現れた無数のメカが
そしてメカ達は、まるでヒーローが着るようなアーマースーツになった。
いや、まるで、ではない。あの装甲に
以前、テレビのニュースで見たことがあった。青で着色された和風チックなデザインの装甲。あれは正真正銘、この町を怪人の魔の手から守っていた、ヒーローの姿だ。
「なんで
今目の前で起こった現象に、
なんとか冷静に判断して、彼女は一つの結論に至った。
「ヒーローの正体は、
結論から言えば、そのとおりだ。
フォトグラファー
「まだ全快じゃないが、この後好きなやつと約束があるのでね。速攻で決めさせてもらう!」
ヒーロー
それに気付いた
「(
いや、理解しているつもりだった。
だが結局のところ、彼氏のことを何も分かっていなかったのだ。
「来い、
ヒーローがそう叫ぶと、どこからともなくメイス――頭部が4方向に尖っている棍棒のような鈍器――が現れ、
棍棒の頭部が敵に衝突するたびに、ドゴっドゴっと鈍い音が鳴り響く。重い打撃を喰らって、怪人の足取りがふらついている。
その隙を、ヒーローは見逃さなかった。
「トドメだ!」
――テンサク、フィニッシュ!!――
再びベルトから軽快な音声が発せられると、
「必殺、キーボンバー!!」
怪人の身体は爆発。メラメラと炎が燃え上がる。
「ふぅ、
「
今までずっと物陰から覗いていた
彼女の姿を見た
「私、
「そんなことよりなんでここにお前が――」
その時だった。燃え上がる炎の中からさっきの怪人が現れた。まだ完全に大破してなかったようだ。
「っ!!
慌てて
しかし、一瞬遅かった。
怪人はその鋭利な爪で
敵の攻撃のダメージが大きかったのか、
そしてベルトに付いていた機械が
「うぐぅう」
変身の解けた
さきほど
その証拠に彼はさきほどから右腕や脚ばかりで攻撃し、左腕を庇いながら戦っていた。
「どうしよう、私のせいだ」
彼女は激しく後悔をした。自分がいきなり
言うまでもなく、
早く敵を倒して
だから力が空回りし、敵を完全に仕留めていないことにも気付かなかった。
昨日の左腕の負傷も同じ理由。早く待ち合わせ場所に向かうために焦って怪我をしてしまったのだ。
全ては
しかし
自分が
彼女の目線の先には、
彼女は考える。今、自分にできることは何だろうか。
「違う」
彼に今まで奢ってもらった額を返すこと?
「違う」
怪人の気を引いて、
「違う!!」
彼女が選んだ、今自分にできることは……。
「こっちを見なさい化け物!!」
「よせ
「変身!!」
掛け声と共に
――トメル! ハネル! ハラウ! レッツ、カキトリ!――
定例の音声と共にアーマーが出現に、彼女の顔と身体に装着される。
「嘘だろ、なんで……」
「私の彼氏に何すんのよ!!」
変身した
「
彼は左腕を押さえているが、命に関わる怪我は負っていない。そこは
「
「待ってて! あの化け物を倒してすぐに病院に連れて行くから!!」
彼女は怪人に対峙する。怪人の方はドロップキックを喰らったが、それほどダメージを負っている様子ではなかった。
怪人が
相手の爪を用いた切り裂き攻撃を、
敵の攻撃が空振り、隙ができた瞬間を狙って、
「凄い……! このスーツ、滅茶苦茶パワーが溢れてくる!」
女ヒーローはぐっと拳を構える。
敵が攻撃してきたらそれを避けて、その隙に攻撃をする。
しかし、どういうわけか敵は全く怯んでいなかった。
それどころか全然ダメージを受けていないようにも見える。男の
「私のパンチやキックじゃダメージが無い。だったら……来て、
さっき
女ヒーローの声に反応し、
「え、なんで……」
武器が出てこなかったことに動揺した
彼女は慌てて態勢を立て直し、その攻撃をかわす。
「なんで。なんで出てこないの!?」
『ふむ、どうやら“
突如、腰に着けた謎の機械から、声がした。
この声は勇助のものではない、もちろん怪人の声でもない。
「ベルトが喋った!? ベルトさん!? クリム・スタインベルト!?」
『落ち着きたまえ。そのベルトには通信機能が備え付けられている。私は離れた場所から音声を飛ばしているだけだよ』
「あ、あなたは一体誰なんですか!?」
『だから落ち着きたまえ。私はそこに転がっている
つまりは
『今は私のことはどうでもいい。それよりその化け物を倒す方法を教えよう』
男はとても冷静な言葉遣いで、
『いいかね? その怪物は不死身ではない。そいつの正体は言ってしまえば、水、だ。攻撃が当たる瞬間に身体を液状化させて、衝撃を受け流しているだけさ。だが今までの戦いを観察するかぎり、液状化するのは一瞬だ。フェイントをかけて攻撃を当てれば倒せる』
どうりでダメージが全然無いわけだ、と
さっきの
『そのベルトの青いボタンを押したまえ。そうすれば相手を倒すだけのエネルギーが溜まる』
「で、でも私には武器が……」
『安心したまえ。エネルギーは変身者の任意の部位に溜まる。右拳でも左脚でも好きな場所を選ぶといい』
だが実際は違う。
この男が話しているとおり、青いボタンを押すとエネルギーは使用者の脳が思い浮かべた身体の部位に集中する。
『だが気をつけたまえ。攻撃が空振りした場合、エネルギーは暴発するからね』
「とにかく、青いボタンを押してフェイントをかければいいのね。分かったわ!!」
――テンサク、フィニッシュ!!――
彼女のイメージどおり、右脚にエネルギーが溜まる。
『あ、そうそう。必殺技時に技名を言うのを忘れないように』
「え、そんな急に言われても!!」
『ほらほら、早くしないと力が暴発するよ?』
「え、じゃ、じゃあ……フェイクキック!!」
その時、怪人は自身の身体を液状化されるが、一瞬で元に戻った。
敵の身体が元に戻った瞬間を狙って、
怪人の身体は爆発し、今度こそ大破した。
『ナイスドライブ、見事だよ。ベルトを外したまえ、そうすれば変身も解ける。……そうそう、
「ま、待ってください! あなたは一体……」
彼女は男が言ったとおりにベルトを外し、変身を解いた。
ふと
しかし、これは現実。
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