第6話 焦燥by富小路とみころ氏

「大変よ、起きて!」





 夜更け、エリスが部屋に飛び込んできた。その顔色は青く、息は上がっている。





「……どうしたの? エリス」


「ルイ君が……いなくなったの」





 私は、カシムを叩き起こし、着替えもそこそこに部屋を飛び出した。





「なあ、ルイ君の居場所は分かるか?」


「いいえ。とりあえず、ナンシーさんの所に行ってみましょう」


「そうだな」





 ナンシーさんの居室や、リビングルームに行ってみたけれど、ナンシーさんはいなかった。まるで、誰も最初からいなかったように。





「やっぱり、怪しかったじゃん」


「そうね。でも、何か腑に落ちないのよね。怪しい過ぎて、逆に変だわ」


「まるで誰かが用意した物語みたいですね」





 私達は村の中を探索する事にした。まず、始めに向かったのは、ルイ君と出会った場所だ。何か見落としてないか、くまなく探してみたが、何も見つからずその場を後にした。





「村の中で怪しい場所と言えば、ルイ君が遊んでいた場所だけど」


「とりあえず、あちこち行ってみようぜ」


「そうね」





 私達はそんな会話を交わしながら、まだ日の当たらない暗い村を探索していく。


 暗闇で視界不良だが、ある場所だけ松明が囲ってあった。





「なんだ……あれ」


「うそ……」

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