【R15】ルウコさんへのお悩み相談【なずみのホラー便 第7弾】

なずみ智子

ルウコさんへのお悩み相談

 こんにちは、ルウコさん。

 私は今回初めて「ルウコさんのお悩み相談室」にメールをお送りする者です。

 私の年齢はルウコさんと同じ29才です。

 しかし、旦那さんと娘さんと暮らしているルウコさんとは異なり、私は”つい3日前より”一人暮らしを始めたところです。


 さっそくのお悩み相談でございますが、私には愛する人がいるのです。

 私が愛する人とは、実の弟なのです。

 私が9才の時に父と母は離婚しました。私は母に、そして5才年下の弟は父に引き取られました。

 ですが、私が22才の時に父が病死したため、母はまだ17才の高校生であった弟を引き取り、自分の手元で育てることにしたのです。


 13年ぶりに顔を合わすことになる弟。

 小さい頃の記憶のままの姿ならともかく、17才の高校生――それも日々成熟した雄の肉体にあるつつある少年を迎え入れ、一つ屋根の下で暮らすことになるなんて……と、私は正直戸惑っておりました。

 再会した弟は、肉体こそ高校生の割には大柄ではありましたが、小学生男子が好むような漫画やゲームからいまだ卒業できておらず、男友達とワイワイ騒ぐことが好きな少年でした。

 弟は隠れて煙草を吸っていたりもしていたようです。しかし、母手作りのオムライスやハンバーグ、カレーなど月並みなメニューが相当に気に入ったらしく、何度も母にねだるというギャップも可愛い弟でした。


 いつの間にか、私は弟を1人の男として見て、1人の男として愛するようになっていました。

 ちなみに、私は男性との交際経験は今も昔も一切ありません。それもこれも神様が私が弟だけ結ばれるために、私の体を清いままにしてくれているのだと強く信じています。


 弟も私を愛していました。

 ですが、彼は実の姉である私と男女の関係になるという禁忌の花園……いや、茨の園に私を踏み入らせたたくなかったのでしょう。茨の園で、私がこの清い体と心を傷だらけにして苦しんでいる姿など見たくはなかったのでしょう。

 弟は、自分が通う高校にて彼女と呼べる存在を作ったようでした。

 その彼女に――弟と手を繋いで堂々とお日様の下を歩ける彼女に、私はこの身が千切れるほどに嫉妬しました。

 家に遊びに来ていた彼女の靴に、庭の植木鉢の下にいたダンゴムシをさりげなく入れたり、彼女にコーヒーやケーキを出す前に私の”にぎりっぺ”をそのコーヒーやケーキにお見舞いしたり……しかし”私の反撃”などはふてぶてしい彼女にとっては屁でもないものであったでしょう。

 しかし、彼女はほんの数か月で弟から手を引きました。

 彼女もきっと、言葉に出さなくても、深い絆で結ばれている私たちの愛の深さと情熱に恐れをなしたのでしょう。

 私の弟に手を出すという恥知らずなことをしたにも関わらず、彼女には全身全霊で私たちの愛の間に割り込んでくる勇気も情熱も持ち合わせていなかったのです。



 私たちの邪魔をする者はいなくなった。

 ある夏の終わりの夜、私は生まれたままの姿で弟が眠る部屋へと向かいました。

 窓から差し込む月明かりが、短パンとTシャツで眠る弟の男らしい輪郭を持つ肉体を浮かび上がらせていました。

 体が立派な男なのに、スースーと寝息を立てているその顔はあどけないままでした。

 私は気づくと、弟に覆いかぶさっていました。

 柔らかく曲線的な女の肉体である私と、固く直線的な男の肉体である弟。

 姉と弟として生を受けましたが、まず何より私たちは女と男なのです。

 私の鼻腔を、弟の肉体が放つ匂いが――汗の匂いが少し入り混じった、青々とした男の肉体の匂いがくすぐりました。

 一刻も早く弟と一つになりたい。

 私は弟にも生まれたままの姿になって欲しいと、彼の短パンへと手を伸ばしたのです。


 しかし、私は弟に殴られて吹っ飛び、壁に激突しました。

 そして、弟は「何すんだよ!! ババア!!」といった言葉まで私に向かって発しました。

 弟は涙目になっておりました。

 彼は、きっと私にここまでさせたしまったことを男として申し訳なく思っていたのでしょう。

 だから、ほんのたった5才しか年の違わない私を、わざと突き放すために「ババア!!」などとも……



 弟の悲鳴を聞いて私たちがいる部屋へと駆け付けてきた母は、全裸でいる私と涙目の弟を見て、全ての生気が失ってしまったかのごとく、その場にへたり込んでしまいました。

 我が母ながら、さして勘が鋭いところもなく凡庸を絵に書いたような母ではありましたが、この時ばかりは私たちの禁断の愛を実際に目の当たりにしてしまったのですから……


 次の日、弟は家からいなくなってしました。

 

 私がどれだけ母を問い詰めても、弟の引っ越し先は教えてもらえませんでした。

 数日の間は私はパート帰りの母を尾行したり、郵便物のチェックなども行ったのですが、手かがりを掴むことはできませんでした。

 それなら、弟本人から住所を聞きたいと、弟が通う高校の前で彼を待ってもいたのですが、心無い人に不審人物だと通報されてしまうことも十数回はありました。


 本物の愛など知らないであろう母には「あなたがあの子にしたことは、家庭内での性的虐待よ」と全くの見当違いの言葉を投げつけられました。

 そのうえ、母は「あの子はもう家には帰ってこないわ。この先、親戚間の集まりにも顔を出すこともないわ。私は親としてあの子の幸せを願い守る義務があるの。そして、親として、あなたを見張っておく義務もね」と。


 なんてことでしょうか!

 私たちを産んだ母こそが、私たちの前に立ちはだかる最大の敵であったのです!

 しかし、”あの女”は私たちの最大の敵でありつつ、私が弟の居場所の手かがりを知るための最短の道標でもあります。

 私は耐えました。それこそ、何年も何年も……

 弟への思いを支えとして。

 そして、”弟の私への思い”を支えとして。


 ついに、あの女は綻びを出しました。

 それは、3日前のことでした。

 あの女がデパートで、年甲斐もなく華やいだ顔で女児用の服を物色しているところを私は目撃しました。

 還暦近いあの女が女児用の服を自分で着ることは、まずないでしょう。

 そう、そのまさか……だったのです

 弟の子供へのプレゼントを――孫娘へのプレゼントをあの女はうれしそうに選んでいたのです。


 なんと、私が毎夜、愛の涙で枕を濡らし、一日千秋の思いで弟との再会を祈っていた間に、弟は結婚し、子供までも成していたのです。

 私のことを忘れるために結婚までするとは弟も弟で葛藤があったのだと思いますが、さすがにこのことは私を傷つき打ちのめしました。

 いつまでも泣いている場合じゃない。

 私は、真実の愛などない家庭で偽りの夫と偽りの父親の役割を演じさせられている弟を救いに行かなければ……!


 私は母に弟の居場所を問い詰めました。

 最初は口を割らなかった母ですが、髪の薄くなったその頭部を私が金づちで殴ったり、皺が刻まれたシミだらけの肌を私がバーベキュー用のチャッカマンであぶったり、”その他もろもろ”を行っていますと、ついに口を割りました。あの女の親としての義務に対する覚悟なんて、この程度のものであったのでしょう。

 ”母が完全に動かなくなる前”に、私は弟の居場所ならびに弟の結婚相手についての情報を断片的ではありますが、聞き出すことに成功しました。


 その断片を私はネットを駆使しながらも自力でつなぎ合わせていきました。

 何と、弟の結婚相手は私と同じ29才であり、俗っぽく軽い頭のスイーツな女たちを閲覧者の主な対象としたウェブサイトで「ルウコのお悩み相談室」なんて、ふざけた名前のコーナーの一角まで任されているとことまで突き止めたのです。







 そう

 お前だよ

 ルウコ


 私の弟をかどかわしたのはお前だ私の弟を愛を美を夢を宝をこの世の光をめちゃくちゃに掻き回して汚してくれたな許さない絶対に許さない許さない許さない厚化粧のくせに服のセンスがお水なくせに馬鹿女子大出身のくせにパンチラ寸前のチアガール時代の写真がネットに残っているくせに仕事の打ち上げと称して男との飲み会に出まくっているくせに手軽な肉便器女のくせに弟の聖なるチ〇コをしゃぶって咥えて撫でまわしたうえお前のマ〇コでも弟を蹂躙し汚しやがった臭くて汚いお前のマ〇コがひり出したお前のメスガキはほんとにマヌケだったよ声をかけておばさんはお父さんのお姉さんなのなんて言ったら何の疑いもなくついてきたよ私が産む弟の子以外はこの世に存在していることが許されないだからお前のメスガキは今うちの風呂の浴槽の中にいるよ邪魔ばかりしてきたあのババアと仲良く風呂に入っているよ赤くて冷たくて生臭い風呂だけどな地獄だろまさに地獄だろ地獄だろ当然の報いだざまあみろざまあみろざまあみろみろみろ





―――fin―――

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