第93話決戦の開始
《新しい仲間》
「んっ」
少女はそんな声と同時に目を覚ます。
「おはよう・・・もう半日立って夜だからこんばんはかな?」
僕は少女に軽く挨拶をする。
「おはようございます・・・・。あれ、私なんでベッドの上で寝て・・・そうだ、勝負は?! わたしは負けたんですか?」
少女は実力勝負の結果を言うようせかしてくる。
「勝負の結果は君の負けだよ」
僕がそう言うと、少女は涙を流し悔しそうにうつむく。
「でも、仲間に入れないとは言ってないけどね」
少女の顔がきょとんとしている。それと同時に少女の目から出ていた涙もとまっていた。
「いやぁ、まさかムイがあそこまでやられるとはおもってなかったんだよね。しかも、勝負の後にムイまで倒れちゃうから少し驚いたんだよね。
まぁ、ムイとあそこまで互角に戦えるんだったら連れて行っても足手まといにはならないかなとおもったから・・・・」
ぼくはわざと言葉を切る。
「連れて行ってあげるよ」
僕がそういうと、少女が嬉しそうに息をはきながら『やったー』と小さな声で言う。
「だから、そろそろ名前を教えてくれないかな?」
少女は今度は『あっ』と言って、ベッドから出て僕のほうを向きながら。
「私の名前はユメミです。あと、今までいろいろしてくれていたのに、村をめちゃくちゃにした奴らの仲間と疑って、嫌なことばかり言ったりしてごめんなさい」
少女は地面に座り両手を地面に添え深々と頭をさげる。いわゆる土下座というやつだ。
「別にそこまで謝らなくてもいいよ。ほら、顔を上げて、ね?」
僕は少女に顔を上げるよう言うが、少女は顔を上げようとせずに、
「いえ、今までの私の行動の重さを考えるならばこれぐらいでは全然足りていません」
どうやら、イナ大陸の人は自分の犯した失敗に対してすごい責任感を感じると言う噂は本当のようだ。
僕はずっと土下座をしている少女にどうにかして土下座をやめてもらおうと考える。
「じゃあさ、今度は僕にあの技を使って見てよ」
僕がユメミにそう言うと、ユメミの顔から血の気が引いた。
「ええ、あの技を食いたいんですか?! フェルトさんってマゾなんですか?!」
「いやいや、ちょっと待って。確かに言い方が悪かったけど、それを大声で言わないで」
「え、じゃあ。どう言う意味で言ったんですか?」
「いや、この刀強化されたみたいだからどれぐらい強化されたか試したくなって」
僕はそう言って腰に差している刀を抜き刀身をユメミに見せる。
「え、ヒビがなくなってる? フェルトさん、どうしたんですか。それ?」
「実はね、昨日の夜に精霊に直してもらったんだ。だから、決戦の前に試しておきたいんだ。頼めるかな?」
僕がユメミにそう聞くと、ユメミは嫌な顔一つせず首を縦に動かし頷いてみせる。
「じゃあ、早速今からお願い」
僕とユメミは仮宿から数分のところにあるひらけた場所まで歩いていく。
「あの、打つ前に一つお願いしてもいいですか?」
「なに?」
「先ほどの戦いを見ての通り、この技を放ったあと体力切れで倒れてしまうので仮宿までまた運んでくれると助かるのですが」
「別にそんなことわざわざ頼まなくても、もう仲間なんだから」
僕がそう言うと、ユメミは嬉しそうに飛び跳ねる。
「じゃあ、そろそろお願い」
僕がユメミにそう言うと、ユメミは刀を構える。
そして、ムイと戦った時と同様に刀の刀身が赤く光る。僕は刀を腰から抜き構える。
「行きますよ。奥義・斬龍剣」
ユメミが刀を振り下ろすと、刀から無数の赤い刃が僕めがけて飛んできた。
僕はそれらを刀で防ぐ。そうしているうちに僕は刀のある異変に気付いた。
それは、刀で赤い刃を防ぐと刀が纏う冷気が強くなっていた。
僕は刀を空に向かって振り上げる。そして、刀をまっすぐ立てに振る。
直後、氷の刃が刀から放たれ赤い刃を相殺していく。
「す、凄い。これが新しい刀の力」
僕は目の前で起きた光景に驚いていると、『バタッ』と言う音が聞こえ、音がした方を見る。
「あ」
ユメミが倒れていた。
「もうちょっと刀のことについて知りたかったけど、ユメミがこうなっちゃ仕方ないなぁ」
僕はユメミを背負い、仮宿に戻る。
《襲撃》
異変があったのはユメミが仲間になった次の日の朝だ。
「ドゴォォォン」
大きな爆発音と共に僕は目が覚める。その直後ムイが僕の寝ている部屋に走ってきた。
「フェルトお兄ちゃん、この近くに天空都市がきてる。しかも、この辺りの村をかたっぱしから壊して行ってる」
僕はすぐに刀を腰に刺しムイにみんなを食堂に集めるよう促し、僕は外の状況を確認するべく外に出る。
「なんだ、これは」
外の景色は異常だった。
昨日までは、あんなに緑に包まれていた森だったのにもかかわらず。今は炎の海とかしていたからだ。
僕はその光景を見た直後、アクアのお墓のことが気になり空を飛行しその場所へと向かう。
「よかった」
僕がアクアのお墓に着いた時に思った最初の感情が安心だった。
なぜなら、あの場所だけ精霊たちが固まり特殊な防壁を作っていたからだ。
「これならなんとかなるかも」
僕はそう思い、仮宿まで戻る。
仮宿に戻ると、そこには入り口で迎えるムイの姿があった。
「フェルトお兄ちゃん、みんなもう食堂に集まってるよ」
僕はムイと一緒に仮宿の食堂に向かって歩く。
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