第87話リウの復讐



 僕は狼の異能力だけを使っていては見た異能力を使うことができる異能力を知ることができないため、僕は着るの異能力を使って見る事にする。


剣生成ソードメイク


 僕の目の前に一本の剣が生成される。


「この異能力もあまり難しくないな。・・・・・でも、大量に作ろうとすると失敗するんだな」


 僕は試しに同時に同じ剣を10本生成しようとすると、一瞬だけ生成できたもののすぐにバラバラに壊れて消えてしまった。


「・・・・そうだ、いいこと思いついた!」


 僕は獣の攻撃を避けながら剣を生成する準備をする。


剣生成ソードメイク、獣の上に落ちろ!」


 獣達の頭上に一本の像に似た獣の6倍ぐらいある大剣を生成し、僕はムイたちと馬車、アクアの体を包み込んでいる氷を覆う赤透明の防壁を生成し、大剣が獣達を突き刺し地面に刺さった時にでた暴風を防ぐ。


「これで大半は片付けられたかな」


 僕は残りの獣の方をどれだけ減ったか確かめるために見る。


 どこからか殺気が飛んできた。


「誰だ?」


 僕はすぐに殺気を感じ取った方角を見る。

 そこには見覚えのある人物がいた。

 様々な竜種の特徴が体に全部現れている人間。そう、僕が殺しそこなったリウだ。

 リウはこちらにゆっくりと歩いて近づいてくる。なぜか、リウから逃げるように獣達があちこちに逃げていく。


「よぉ、久しぶりだな」

「僕に負けた人が今更何の用?」


 僕がリウに向かって挑発する。

 すると、リウは僕の服の胸ぐらを掴んで僕の体を持ち上げる。


「お前にやられた借りを返しにきた」


 リウはそう言って僕の胸グラを掴んで、そのまま投げ飛ばそうとする。

 だが、僕はすでにリウの背後に狼の異能力を使って移動していた。


「俺にそんな異能力が効くか!」


 リウから強烈な音波が発され僕は後方へと吹き飛ばされる。


「お前には恨みや殺意があるが、感謝もしているんだぜ。お前のおかげで俺はさらに強くなれたし、それを見込まれてルトバー様から新しい異能力も手に入ったんだからな」


 リウは頭の狂った殺人鬼が笑ったような顔をしながらそう言って、僕に強烈な音波を放ってくる。

 音波は耐えられないほどではなかったから、僕は音波を受けながらもリウに走って近づく。


 ある程度リウに近づいた頃に僕はある変化を感じた。


 ・・・・・音が聞こえない。


「・・・・・・・」


 リウが何か喋っている。だが、何も聞こえない。それだけじゃない、視界もぐらつき、吐き気と頭痛も感じるようになってきた。


『おい、フェルトいくら何でも強烈な音波を受けすぎだ。音波は人を殺せるほど強くはいが人の脳にダメージを与えて方向感覚などをなくすことはできるんだよ』


 頭に直接大悪魔の声が聞こえる。どうやら、頭の中では会話が成り立つようだ。


『僕の異能力を使ってよ。完治とまではいかないけど、多少は楽になるはずだから』


 僕の頭にもう一人の声、運命を操る神の声が聞こえる。


『わかった』


 僕は体がかけている力のストッパーを解除する。直後、僕の左腕が白く輝く。


「な、何だその異能力は・・」


 リウが驚きの表情をして言う。リウの声が聞こえていると言うことは、だいぶ楽になったと言うことだろう。


「強くなったのはお前だけじゃないんだよ」


 僕は右腕に黒い腕を生成する。


「喰らえよ」


 僕は一瞬でリウの目の前に移動する。そして、手に持っていた刀でリウの胴体を切断する。


「クハァッ」


 リウは口らから血を吐き出し、胴体バラバラに地面に落ちる。


「これで終わりだ」


 僕は最後にリウの心臓を一突きする。


「へへへへ」


 リウは心臓を貫かれ、上半身と下半身が離されたにも関わらず笑っていた。


「何で、笑っているんだ?」


 僕がそうリウに質問したとき、グサリと脇腹に何か刃物が刺さる。

 僕の体に刺さったものは紫色の刃の果物ナイフだった。だが、毒が塗られていたのか傷口がどんどん開いていく。

 だが、一番驚いたのは果物ナイフの持ち手の部分を持った黒い影だった。ただ、黒い影の下半身だけは先程切り離したリウの下半身だった。


「はは、どうだ俺の新しい能力は?」


 立っている僕とリウの目線が同じ高さにくる。

 僕は不思議に思いすぐにリウの足元を見る。こちらも下半身同様黒い影が足となって体を支えていた。


回復キュア重力グラビティ


 僕は自分の体を回っている毒を解毒し、リウの体にムイと出会った村で見た重力グラビティーをかける。

 リウの体は地面に少しだけ沈む。


「へぇ、そんな異能力も使えたんだな。でも、これぐらいの重力だったら簡単に動けるぜ」


 リウは黒い影でできた足をう動かし、動けるぞっと証明してくる。


『やっぱり、まだこの異能力は使い慣れないな・・・だったら、前世の僕が使っていた異能力なら』


 僕は水色の剣を右手に生成してリウの顔を2回ほど斬る。

 顔も同様に斬られた切り口から黒い影で残りの体が生成されていく。


「だぁからぁ、そんなぁ攻撃はぁ効かないんだぁよぉ」


 口を切断したからか喋り方が少しずつ変わっていった。


「もうそろそろ終わりにしてやるよぉ」


 リウは自分の体をパーツごとに切り離していく。そして切り離したところから影が伸びていき体を作る。その数は30体にまで増えた。


「どうだ? お前は俺を切断すると数が増えて、どんどん不利になっていき、倒さず避けてばかりいると体力が持たなくなっていくはずだ」


 リウはそう言って笑う。だが、その光景は異様だった。

 なぜなら、リウの分裂した体の全てに口がついておりそれらすべてが同じように笑っていたのだ。


「さぁ、いくぞ」


 リウの分身体達は一斉に僕に襲いかかってくる。


「フェルトお兄ちゃんにそれ以上近づくな!」


 少し離れたところからムイの声が聞こえ、次の瞬間炎の鳥が飛んできてリウの分身体の一体を灰にした。

 僕はまた分裂すると思ったがそんなことにはならなかった。


「な、何で分裂しないんだ?!」


 どうやらリウもよくわかっていないようだ。


「フェルトお兄ちゃん、灰にしたりすると分裂しないみたいだよ!」


 ネイはそう言って炎の鳥を操作して一体、また一体と次々にリウの分裂体を倒していく。

 僕は体に炎を纏い水色の剣を消し、ヒビの入った刀にも炎を纏わせる。


「燃えて消えろ!」


 僕は刀を振り、近くにいるリウの分身たいは斬り伏せ燃やし、刀が当たらないところにいるのは炎の斬撃で灰にしていく。

 リウの分裂体が残り一体となった時。


「くそ、くそ、こんなはずでは。・・・・お前のせいでぇぇ!」


 リウは何を思ったのかムイに竜の力をすべて解放した状態で殴りかかる。その速さは音速を超えていただろう。だが、今の僕にはその動きを戦いの中で覚えた感覚で捉えることができた。


「炎と氷、二つの力を持って消えろ」


 僕はリウの最後の分裂体を斬る。そして、切り口を境にして右側から炎が吹き出る、左側からは氷がリウの体全体を飲み込んでいてなんとも不思議な光景が見られた。


「フェルトお兄ちゃん、やりましたー!」


 リウを倒したことで少しぼーっとしている僕にムイが全速力で走ってきて飛びついてくる。

 さすがに、フェイテとの戦闘の後にすぐリウとも戦ったため、もうすでに体は限界をはるかに超えていたからかいつもは耐えられていただろうムイの全速力飛びつきによって簡単に地面に倒れ込んでしまう。


「あれ、フェルトお兄ちゃん大丈夫?!」


 こんなに簡単に地面に倒れこむとは思っていなかったのか、ムイは焦りながら僕に大丈夫かと聞いてくる。


「大丈夫だよ、少し疲れただけだから」


 僕はゆっくりと立ち、ムイと一緒に馬車の方へと歩いていく。


「ただいま」


 僕は馬車の荷台で休息をとっていたエル達の目の前でそう言い微笑んだ。


「おせぇーよ」


 エルに髪の毛をくしゃくしゃにされながらそう言われた。


「ごめん」


 僕は素直に謝る。それが最善だと思ったからだ。


「ほら、早く準備しろよ。いくんだろ、ルトバーのところに」


 エルがそういうと同時にジル、ハイド、スズ、ライ、スイ、エト達が一斉に「準備はできてるよ」といいそれぞれ自分のポジションに座っている。

 いつのまにかムイも馬車の空いているところに腰を下ろしていた。


「もうアクアちゃんの体は二階に運んであるから。お前はまずはゆっくり休めよ」


 エルはそう言って微笑む。僕はそれを見て緊張の糸が切れたのか、足からバランスを崩していく。


「はは、立てなくなっちゃった」


 僕がそういうと、みんなは可笑しそうに笑った。

 僕はそれからエルとジルの肩を借りて馬車の二階へと行き、エルが獣達が来た方角をを調べたいと言ったので馬車をムイの異能力で召喚された白虎が引きながら獣達が来た方角へ向かう。

 その間僕は備え付けられていたベッドで横になって寝た。










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