第83話試練の終わり
《天の力》
「ごめん、待たせたね。じゃあ早速始めようか」
僕は意識が体に戻り、目の前にいる武器は持っていないが警戒しているフェイテに話しかける。
「それはいいけど、フェルト、今はお前がその体を操ってるんだよな?」
「そうだよ、だから安心して戦って」
僕は黒い悪魔の腕のような右腕を変形させ、少し離れたところに転がっているヒビの入った刀を拾い、腕を元に戻す。
「わかったよ。今から再開だ」
フェイテはそう言って雷を纏う刀と水色の剣を生成する。
僕は黒い悪魔のような右腕と左腕で刀を構え、心を落ち着かせる。
「雷よ水を纏いて敵を打ち抜け!」
フェイテが持っている雷を纏う刀から黄色の雷が僕めがけて放たれ、水色の剣からは雷を纏う刀から放たれた雷を包み込むように水が放たれる。
『フェルト、少し右半身を借りるぞ』
頭の中に大悪魔の声が聞こえ、勝手に僕の右腕と口が動く。
「
僕の影から黒い影が飛び出て、僕を守るかのように防壁となって水をまとっている雷を防ぐ。
「ありがとう、助かった」
僕は大悪魔にそう言うと、大悪魔から『気をぬくな』と返ってくる。
「何にお礼を言っているんだ?」
フェイテがいきなり僕に急接近し、喋りながら雷を纏う刀と水色の剣で僕を挟むように振る。
僕は間一髪で攻撃を避けるが水色の剣が少しかすったらしく、軽い頭痛を覚える。
『フェルト、この試練で手に言われた技も使え。使い方ぐらい使っていた本人の記憶があれば使えるだろ?』
僕は大悪魔に言われた通りに記憶の中から使えそうな異能力の使い方を選ぶ。
「
刀の周りにオーラのようなものが出る。
僕は刀を大きく振りかぶる。それと同時にフェイテの体を地面から出た鎖が縛る。
「喰らえぇぇぇ」
僕は刀を拘束されて動けないフェイテに振り下ろす。
『バキィィィン』
フェイテに刀が当たったと思いきや、刀は空中を浮遊している岩の大剣によって防がれる。
「フェルト、まだ詰めが甘かったな」
大剣は中で一回転し僕を斬ろうとする。
僕はバックステップを踏み後ろへ下がる。
大剣の攻撃は回避できたが、大剣はフェイテを拘束していた鎖を切断する。
「
僕の周りに大量の黒い炎の銃弾が生成される。そして僕はそれらを一斉にフェイテめがけて放つ。
「・・・・・・・」
凄まじかった。
フェイテは僕が放った黒い炎の銃弾を水色の剣と雷を纏う刀で全て斬り伏せてしまった。
「こんなものか? これで終わりなら、今度は俺から反撃させてもらう」
僕はフェイテから大悪魔から放たれた殺気と同じようなものを感じて身構え、さらに黒い炎の銃弾の生成速度と発射速度を速めていく。
「数が増えたところで、威力がなければ意味がない」
フェイテは黒い炎でできた弾丸を全て斬り伏せ、こちらに向かって斬撃波を放ってくる。
「なっ」
僕は斬撃波をギリギリで避ける。だが、黒い炎の弾丸の生成は止めていないはずなのに次々と斬撃波がフェイテから放たれる。
僕は斬撃波を交わし続ける。だが、斬撃波は時間が経つにつれて威力、速さ、放たれる量がどんどん多くなっていく。
『大悪魔、僕が大悪魔の力を最大まで解放したらどうなる?』
僕は大悪魔に尋ねる。
僕は今、右腕にだけ大悪魔の力を使用している状態なのだ。
『自我を保てるのは長くて2分、フェルトの体を俺が操ると言う選択肢もあるけど戦闘後の精神的疲労と肉体的苦痛がすごいことになる。言える立場じゃないが、俺が二回もお前の体全てを操っているのに今普通に立っていられること自体が不思議なんだよ』
大悪魔は説明してくれる。確かに、大悪魔が僕の体を操った後には精神的疲労や肉体的苦痛はあったが、これまで大悪魔に体が乗っ取られた時はちょうど自分の体の心配をできる状況ではなかったためか全くわからなかった。
『じゃあ、二分間お前の力を最大限使わせてもらうぞ』
僕は大悪魔にそう語りかけ体全体に大悪魔の力を発現させようとする。
『ちょっと待って、僕の力も使ってよ』
今度は頭に運命を操る神の声が聞こえる。
『僕が分け与えれた力は大悪魔君とほぼ同じで肉体に纏うことができる。だけど、全力で支える時間は2分が今のフェルト君の限度。でも、大悪魔君の力と同じタイミングで使ったら火力がさらに上がると思う』
『でもそれだと悪魔の力と神の力とがぶつかり合って反発して弱くなったり、フェルトの体が壊れたりしないのか?』
運命を操る神の提案に大悪魔は質問する。
『だから、これは賭けだよ。うまく力が混ざってくれるか、それとも反発するのかのね。残念ながらこう言う運命は僕には見えないし選べないんだよ。だから、フェルト君の運次第いてことになるかな』
運命を操るかみは僕に選択を委ねてくる。だが、僕には迷う理由がなかった。
強い力が手に入らなかったら元からルトバーには勝てない、だから僕は迷わず運命を操る神の力を使うためのトリガーを引く。
僕の左腕が明るい青色に光る。
「なんだそれは?」
フェイテは斬撃波を放つのをやめ、僕の左腕に注目している。
それもそうだろう、フェイテにとってはいきなり僕の左腕が明るいお隘路に光っているのだ、多分もし僕がフェイテと同じ状況だったとしてもフェイテと同じ反応をするだろう。
僕は右腕と左腕に宿るそれぞれの力を操る。
「刀よ大悪魔の力と運命を操る神の力を纏え」
僕の言葉に応えるかのように黒いオーラと白いオーラが刀を包み込む。
「フェイテ、いくぞ!」
僕は自分でも驚くぐらいの速度でフェイテの懐に入る。だが、体は初めからこの速度でフェイテの懐に着くと知っていたかのように刀は簡単に振れた。
『ザシュッ』
動物の肉を豪快に切り裂いた時と同じような音がフェイテから聞こえる。
「危なかった。あのままだとやられてたな」
フェイテは左腕を失っていた。そして、姿も変わっていた。
フェイテの髪は金色、瞳は水色、そしてフェイテの体のあらゆる所に様々な色の文様が浮かび出ている。
「フェイテ、なんだよその姿は」
「ああこれか、これは俺が使える全ての武器の能力を全て体に反映させた時になる姿だ。俺にこれを使わせたと言うことは誇っていいと思うぞ。ただ、この姿になったら力の加減がよくわからなかくなるんだよな。まぁ、死なないように頑張ってな」
フェイテはそう言って僕に近づいてくる。
力が切れるまで後1分20秒。
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