第42話別れは突然



 僕とアクアが馬車に戻るとまだ誰も馬車には戻っていなかった。


「そういえばハルトどこ行ったんだ?」


 僕はアクアに聞くと。


「そういえば、どこに行ったんだろう」


 アクアと僕とで馬車の中、近くを探す。


 1時間ぐらい経っただろうか。


「フェルト! これ見て!」


 アクアが走って僕の方へやってきた。そして僕にハルトの魂が入っていた小人を見せてきた。


「・・・・え」

「この子じゃないの?!」


 アクアは僕に質問してくる。


「そうだけど、どこにいたの?」

「馬車の下」


 アクアはそう言って馬車の下を指差す。


「フェルト、さっきからこの小人喋らないの、喋るどころか動きすらしない」


 アクアからそう聞くと、僕は小人を揺さぶる。


「な・・・んで動かないの」


 僕は小人の背中などを触ったりする。僕は小人の背中に何か刺さっていることに気づく。


「なんだ、これ」


 僕はそれを引き抜くと植物でできた小人は植物の茎へと戻っていく。僕が引き抜いたのは折りたたまれた一枚の紙切れだった。


『フェルトへ。

 

 久しぶりにお前に会えてよかったよ。この6年、あの時なんで俺は助けられなかったんだろうとばかり思い後悔ばかりしていた。多分この手紙を読んでいる頃は俺が入っていた植物でできた小人も動かなくなっていて、俺の魂も天に昇っていることだろう。

 実はお前とあったのはいいけど、もう俺がこっちの世界に居られる時間は残りわずかだったんだ。ごめんなフェルト、もっとお前とたくさん話をしたかった、だけど蘇生もされていない死者は天に戻らなきゃいけない。

 久々にお前と共闘ができて楽しかったぞ。それにお前は今一人じゃないことを確認できたから少し安心した。アクアだっけ、その娘のこと守ってやれよ。

 それと最後に俺が掴んだ情報だ。キラーズの獣討伐隊待機場所は・・・・・・・だ。

 最後にこれだけ言わせてくれ、絶対に死ぬな。そして生きろ。


 ハルトより                           』


 僕は手紙を読む。


「はは、こんなので友達との別れを済ませるなんてひどいな」


 僕は目の上に手を当て苦笑する。


「それに、ネイと同じことを言うなんて反則だろ」


「ギュッ」


 アクアがいきなりハグをしてくる。


「・・・・・・え」


 僕が唖然としていると。


「フェルト、今はたくさん泣いて。でも忘れないで、フェルトは一人じゃないと言うことを」


 アクアはそう言って手に力を込める。

 僕はアクアの腕の中で情けないぐらいないた。





 僕は馬車の中へ入ろうとする。


「もう大丈夫なの?」

「ああ、もう大丈夫。その、忘れてくれ」


 僕はそっぽを向きながらアクアに言う。


「私は何も見てません」

「助かる」


 僕とアクアは馬車の中で座って待つことにした。



 それから少ししてエル、ムイ、ジル、ハイドが馬車に帰ってきた。


「次の目的地が決まったから言うよ」


 僕は馬車の外にみんなを集めて次の目的地について喋る。


「次は獣討伐隊待機所がある山、流氷山だ。流氷山はでかくて険しいらしくて別名、地獄の山と呼ばれてるらしい。ここから流氷山まで行くのに山を4つほど超えなければいけないから6ヶ月ぐらいかかるかな。今が冬だから着く頃には夏か。それと、一つ問題があって。この街から流氷山方面は村などが全くなくて凶暴な獣ばかりが出現して人間が不用意に近づけないから未開の地とされてる場所なんだ、だから正直死ぬかもしれない・・・」

「まさか、フェルト一人で行くとか言わないよね」


 アクアが僕の言おうとしたことを察したのかそう言ってくる。


「でも、アクアは復讐はほとんどすませてるし、エルはエルが死んだら目的を成し遂げられないでしょ。ムイとジルとハイドだって成り行きで一緒に旅してただけじゃん。それに、エルからもらったお金の半額があれば旅ぐらいできるし、お金だってなくなればアクアたちほどの実力があれば獣をかるなりして稼げるから僕についてこなくてもいいんだ」


 僕はさらに続ける。


「僕はあの男が僕とどう言う関係なのか、あの男は一体何を知っているのかが知りたいんだ。復讐はネイやハルトが復讐を望んで居ないことはわかったけど、この6年ずっと復讐だけを望んで居たからもう戻るのが怖くなったんだ、しかもこれから僕がやろうとしていることはただの自己満足なんだ。他人の自己満足にアクアたちが付き合う必要なんてない」


 僕が最後まで言い切ると。


『バチーン』


 僕の左頬に痛みが走る。


「なんでそんな風に言うの! フェルトは私たちといるのが嫌になったの?」


 アクアが泣きながら強く言い放ってくる。


「別に嫌になったわけじゃない」

「ならどうして」

「アクアたちに死んでほしくないんだ」


 僕は自分の気持ちを伝える。


「それを言ったら私だってフェルトには死んでほしくない」

「まだわからないのか! アクアは僕と関わってこの街に来たせいで一度死んでるんだぞ!」


 僕は気付いたらアクアに強く言い放って居た。


「それは、私がフェルトについていきたいと思ったからそうしただけ、その結果がたまたまあれだっただけでしょ! フェルトについていきたいと思ったのは自分の意思で選んだことなの勝手にフェルトのせいにしないで!」


 アクアは強く言い放つと森の方へ走って行ってしまう。


「なんでこうなるんだ」


 僕がそう吐き捨てると。


「フェルトお兄ちゃん! なんですぐにアクアお姉ちゃんを追いかけないの!」


 ムイが怒って僕のお腹をぼかぼかと殴ってくる。


「そうだぞフェルト、それにどんだけ僕たちの強さを下に見てんだよ」


 ムイに続いてエルまでそう言う。


「僕はフェルトくんたちと一緒にいるのが楽しいからここまでついて来てたんですよ。それに、僕は強くなりたいんです。フェルトさんたちと一緒にいたら強くなれるし楽しいしの一石二鳥です」


 ジルが言う。


「私もジルと合わせてもらった恩もありますしフェルトさんたちと一緒にいるのは楽しいですから」


 ハイドまでそう言う。


「フェルト、お前の言い分は後で聞いてやるから早くアクアを連れ戻してこい」


 エルがそう言って僕の背中を押す。


「フェルトお兄ちゃん、アクアお姉ちゃんを連れ戻してこなかったら白虎で引き裂くからね!」


 ムイが可愛い顔でものすごい恐ろしいことを言ってくる。


「わかった」


 僕はアクアが走って言った方へ走って行く。

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