第39話ハルト3



 僕とキルが一斉に大男の近くまで走る。

 大男の足まで近づいた時僕は


「キル! こいつの足を切れ!」


 僕はキルに大男のアキレス腱を切るよう命じる。


「おうよ! 剣生成ソードメイク


 キルは剣を手のひらに生成し、大男のアキレス腱を切り裂こうとする。だが


「ガキーン!」


 キルが持っていた剣は大男のアキレス腱に当たった瞬間に二つに折れたのだ。


「マジか! 結構硬めに作ったつもりなのに」


 キルはバックステップを踏んで後ろに下がる。


「やっぱりあれやるしかないよ」


 僕はキルの方を持つ。まだ大男は僕たちが足の近くにいることに気づいてない。


「わかったよ。でも使った後はたいてい気絶するんだろ?」

「その時は俺が植物を使って助けてやる」

「じゃあ頼んだよ」


 キルはそう言って少し前へと進んでから。


四剣狐ソードフォックス


 キルの体の腰部分から剣でできた狐の尻尾のような形をした尾が4本生成される。そしてキルの両手には一本の鋭い剣が握られていた。


「行くぜ化け物」


 キルはそう言うと大男のアキレス腱に再度切り込む。すると、大男のアキレス腱は一瞬のうちに両足とも切断される。


「なぁ・・・んだ・・お前ワァァ」


 大男は僕たちの存在に気づき殴ってきた。


時間停止タイムストップ


 僕はすぐに大男の時を止める。


「キル、俺を上空へ」

「任せろ!」


 キルは僕の方へきて、僕を4本の尾で上空へと投げ飛ばす。


「ハルト、お願い」

「わかった」


 小人は地面に倒れかかっているキルを包み込むように植物を生成する。


時間停止タイムストップ


 僕は自分の足元を時を止め固定する。


『よし、止めている範囲は狭いからそんなに早くは時間は元には戻らないはずだ』


 僕がこう考えていると、大男は動き出し拳が地面に直撃する。その反動で辺り一面強風で吹き飛ぶ。キルを包み込んでいる植物は風に吹き飛ばされ森の方へと飛んで行く。


「ハルト、守りは任せた」

「わかった」


 ハルトは地面から巨大な黒い樹木を生成し、僕の真横に来るよう成長させる。


「じゃあ、ネイ、力を借りるよ」


 僕はそう呟くと、僕の中にいるネイの魂の残りカスが燃え盛った感覚がした。





太陽玉サンボール月光炎玉げっこうえんぎょく


 僕は自分の前に大きな二つの炎の玉を作る。片方の球は太陽のように赤く燃え盛っている。もう片方の球は炎というよりかは黒い球体のように見える球だ。


「ウガァァァァ!」


 大男は本能的に危険を感じたのか僕めがけてパンチのラッシュを放ってくる。


「そうはさせないぞ」


 小人はそう言い黒い樹木の枝を壁に何層も木を重ねて特大な樹木の黒い壁を作る。そして大男のパンチをギシギシと音を立てながら防いで行く。


「ごめんハルト、完成するまでにもうちょっと時間がかかる」

「多分なんとか耐えられるから大丈夫だ」


 話をしている最中でも大男のパンチは止まない。


『ズシン、ズシン、ズシン』


 大男のパンチが樹木に当たるたびに樹木が大きく揺れる。


「フェルト、すまん多分持って数分だ」

「充分」

「そうか、木を解除する時は言ってくれいつでも解除できる」


 小人はそう言うと笑みをこぼす。


『ベギッ』


 大男のパンチが樹木の壁の最後の一枚にヒビを入れる。


「フェルト、次が最後だ!」


 小人はそう言うとヒビの入った樹木の壁を睨む。

 大男のパンチはためていたようでまだ最後の一撃が入らない。


「バゴーン」


 轟音とともに樹木の壁が破られる、その先には大男が気味の悪い笑みをこぼしていた。


「ハルト、後2秒だけ足止め頼む!」

「わかった。樹木のウォッドランス


 巨大な木の先が槍のようない鋭くとがった状態で大男の腕に刺さる。


「グワァァ?」


 大男は一瞬振り返ったが、あまり関係ないと思ったのかすぐにこちらを見る。

 それが命取りとなった。


融合ブレイブ


 太陽のような炎の球体と黒い炎の球体が合わさる。


月陽炎玉サンナイト


 僕は大男に金環日食の時の太陽のような炎の球体を投げつける。


『バゴォーン』


 大男の上半身に炎の球体がぶつかる。


「アヅいー」


 大男は大声でそう言い炎のついた腕で必死に炎を払おうとする。


「バーン」


 いきなり風の塊が放たれ大男の燃えている上半身を吹き飛ばした。


「やれやれ、せっかく俺の組織の重要地の一部の管理権をやったのに半壊させやがって、しかも戦闘兵の半数をなくしやがって。お前の命だけじゃあ大損じゃねえか」


 さっきまで大男と一緒にいた女の首を持った、白髮で40歳ぐらいの僕に似た顔付きの男が空を飛んでいた。


「まぁ、いいや残りの戦闘員は死体でも操れるから」


 男はそう言い僕たちの方を見る。


「お前は・・・フェルトか、久しぶりだな。と言っても、お前は覚えてないだろうけどな」


 男はそう言って笑う。


「お前は、もしかしてキラーズの王。なんで俺の名前を知っている」


 僕はさっき『俺の組織』と言った男の言葉に違和感を覚えて男に聞く。


「そうだな、俺はキラーズを作った本人でありキラーズのリーダーだ、名前だけは教えといてやる。俺の名前はルトバーだ、お前の名前の一部は俺の名前からきている」

「それは、どう言う意味だ!」


 僕は男に叫ぶ。

 下では物音がしなくなったからきたのかアクアたちがいる。アクアたちも僕と同じような顔立ちをしている男を見て驚いている。


「知りたければ俺を倒してみろよ」


 男はそう言うと光の粒子になって空に消えて行く。半壊した城までも光の粒子になって消えて行く。もちろん大男の死体もだ。

 大男が完全に消えた頃。


「なん、だったんだ」


 僕は大技を出した疲れもあってか、思考速度が落ちていた。




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