第40話ハルト4



 男がさった後、僕はアクアたちがいるところに降り立った。


「フェルト、さっきの人、誰?」


 アクアが今言ったさっきの人とは、僕に似たルトバーと名乗っていた男のことだろう。


「わからない。でも、ルトバーはキラーズのリーダーだと言っていた、だから僕たちの敵であることは確かなはずだ」


 僕はアクアの問いに自分なりの答えを話す。


「・・・・・・・」


 僕とアクアとの間で沈黙が流れていた。ムイもエルもハイドも小人も何も言わない


「あの、ジルはどこに言ったんですか?」


 沈黙を破ったのはまさかのハイドだった。


「ああ、それならあそこの森の中に飛ばされて行ったぞ」


 小人は小さな指を出してジルが飛ばされた方向を指差す。


「じゃあ、私はジルを探しに行ってくるんで先に失礼します」


 ハイドはそう言ってジルが飛ばされていった森へ走って行く。


「いつまでも菅なところでくよくよしていてもしょうがないしジルを探し出してから服屋に戻るか」


 エルは『パンッ』と手を鳴らしてからそう言った。

 それから森で寝ているジルをエルが背負ってから服屋に歩いて行った。





 僕たちが服屋に行って目にしたものは最悪だった。


「嘘、なんで、なんでこんなことになったの」


 アクアは足を崩し下を向き泣いた。なぜなら服屋はバラバラに崩れていて、木材と木材の隙間から手が出ていてその奥は真っ赤な液体で染められていたからである。


「フェルト、お願い。まだあの人にお礼を言っていないの。生き返らせることはできる?」


 アクアは涙を流しながら僕の方を見て言う。


「・・・・・ごめん」


 僕はそれだけ言うとアクアは察したかのように服屋の方に向き直した。

 僕だって生き返らせることができるのなら生き返らせたい。でも、この能力は死んでから5分以内の人しか生き返らせることができない。


「僕のこと忘れてない?」


 泣いているアクアと沈黙している僕に向かって喋ったのはエルだった。


「僕だったら死者と対話することぐらいなら少しは可能だけど」


 エルから意外な言葉が発せられる。


「「・・・・・・え」」


 僕とアクアは同時に声を漏らす。


「いや、それほど時間が経っていないから服屋の店員と話すことができるって言ったんだけど」


 エルはさっき発した言葉をさらに細かく説明してきた。


「できるの、の?」


 アクアがエルに目を向ける。


「アクアちゃんが望むなら」

「じゃあ、お願い、します」


 アクアがそう言うとエルはご機嫌そうに「了解しました」と言い手のひらを服屋の方へ向ける。


死者対話ゴーストーク


 服屋の店員がいるであろうところが白く光る。瞬間、白色の霧のようなものが僕たちの目の前に現れた。


「ごめんね、さすがに形まで見せることは難しいわ」


 エルはそう言い申し訳なさそうにアクアに謝る。


「大丈夫」


 アクアはエルにそう言うと白色の霧に近づいて行く。


「あの、いろいろとありがとうございました。それに、私に私の親は私を捨てたわけじゃないってことを教えてくださって本当にありがとうございます。昔の私と家族の話を聞けてよかったです」


 アクアはそう言うと白い霧に頭を下げる。白い霧はアクアの耳元に行くと。


「別にいいわよ、アクアちゃんと彼との未来をもうちょっと見ていたかったけど、死んだならしょうがないからね。あとはアクアちゃんが頑張るのよ」


 とアクアにしか聞こえない声で言う。


「べ、別にフェルトとはそんな関係じゃないです」


 アクアは顔を赤くし僕の方を見てくる。僕は意味がわからず首をかしげた、アクアはすぐに白い霧の方へ目線を向ける。


「私は別に彼としか言ってないんだけどね」


 白い霧は今度は僕たちに聞こえる声でそう言った。すると、アクアの顔はさらに赤くなる。


「じゃあ、そろそろ時間みたいだから行くね」


 白い霧は少しずつ消えてきていることに気づいたのかそう言って少しアクアから距離をとった。


「「あの、ありがとうございました」」


 僕、ムイ、エル、ハイド、ジルが一斉に頭を下げて白い霧に言う。

 白い霧は少し満足そうに空へと消えて言った。


「よかった、ちゃんとお礼が言えて」


 アクアはそう言って僕に笑いかけてくる。


「エルもありがとう」


 アクアはエルに頭を下げた。


「別にいいよ、僕もお礼を言えたしね」


 エルはアクアに笑いかえす。


「それじゃあ次の街まで行こうか」


 エルはそう言うと馬車に向かって歩き出した。

 僕はその時、肩の上に乗っていたものに気がつかなかった。





 僕たちは馬車に戻ると、旅用の荷物が全部宿屋と一緒に潰れてたことに気づく。

 そしてまたペアで荷物を買うことになった。街の壊れた方でしか売っていないものもいくつかあったけれど対して影響はないらしい。

 当然さっきと同じペアだから僕とアクアは同じペアだった。


「フェルト、なんかここにくるのも久しぶりだね」


 アクアが僕にいきなり話してきた。

 確かにそうだ僕たちは今アクアの赤色の髪留めを売っていたアクセサリーショップの近くの道を歩いているのだ。


「そうだね」


 僕はアクアに返事を返す。


「・・・・・・・」


 沈黙が流れる。


「ごめん・・・その、フェルトからもらった赤い髪留め無くしちゃった」


 アクアはそう言って僕に泣きながら謝ってくる。


「えーと、いろいろあって言い出せなかったんだけど。はいこれ」


 僕はポケットにしまっていた赤いかんざしを出す。


「その、実はこのかんざし少しヒビが入っちゃってるんだけど、ちょうどアクセサリー屋さん近くだし直しに行かない?」


 僕がそう言って赤いかんざしをアクアに見せて提案すると。


「うん!行く!」


 アクアは嬉しそうに笑顔で答えた。・・・・めっちゃかわいい。

 僕とアクアはアクセサリーショップへと向かった。




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