第31話アクアの笑顔



僕はアクアにここに残るように言った。


「アクアはここに残ってて、荷物持ってすぐ戻って来るから」

「わかった」


アクアは返事をする。

僕は宿屋に戻り荷物を持ち出す。大半の荷物は隠してある馬車に積んであるからあまり量はなかった。

僕は宿屋の人に。


「ここに仲間が帰ってきたら、服屋で泊まるから荷物持っていくね、と伝えてください。後、部屋をキャンセルしますからこれがキャンセル料金です」


僕は宿屋の人に袋に入ったお金を渡し、服屋の名前を伝えて走って服屋に戻る。



「ああ、おかえり。早かったね」


服屋の店員が何着か服を持って立っていた。


「それが荷物かい?結構多いんだね」

「いえ、仲間のもあるから少ないぐらいですよ」

「そうなのかい」


僕は店員に案内されて3階の部屋に行く。


「ここは、一室しかない代わりに広いから、みんなで使ってくれ」


店員はそう言い降りて言った。

その部屋には、椅子と机が部屋のはじにおいてあるだけだった。

部屋についている窓の前ではアクアが外を眺めていた。

その顔には寂しさがあった。


「アクア、荷物持ってきたから、少し手伝ってくれ」


僕はアクアに言うと。


「うん、わかった、手伝う」


アクアはそう言い荷物を取り出して行く。



荷物を置き終わった後。


「アクア、エルたちが帰って来るまでここにいてくれない?」


僕は聞く。


「いいけど、フェルトどこかに行くの?」


アクアが聞いて来る。


「ちょっと待ちの状況見て来るだけだからすぐに戻って来るよ」


僕は微笑みそう言うと。

アクアは少し安心したのか、少しだけ口が緩んだ。

僕は窓から服屋を出た。





僕が服屋に帰ると、エルたちがもうきていた。


「フェルト、おかえり」


アクアが迎えてくれた。


「ただいま」


僕が返事を返すとアクアはどこかえ行ってしまった。


「フェルト遅かったな」


若干キレ気味のエルが言って来る。


「すいません、勝手に変更して」


僕は素直に謝る。


「わかったよ、それと一つ聞いていいか?」

「いいけど」

「なんでアクアちゃん元気ないんだ?」


エルは僕がこの街に着いた頃ぐらいから考えていたことを言って来る。


「わからない、多分、この街がアクアの生まれたところだからだと思う」


僕が言ったことに驚いたのか。


「え!ここアクアちゃんの生まれた場所だったの?」


僕はエルにここの店員が話したことを伝える。


「そんなことがあったんだ」


エルは驚きながら言った。


「もしもアクアちゃんがここに残るって言ったらどうするの?」


エルが聞いて来る。


「アクアが決めたことならそれでいい」


僕は自分で言った言葉なのになぜか心が痛い。


「そうかー」


エルが何か考えている時の声で言って来る。


「まぁ、そろそろ日が暮れて来る頃だから、少しここで話そうよ」


エルがそう言うと。


「僕も混ぜてもらってもいいですか?」


ジルがそう言いこちらに来た。


「いいよ」


僕がそう言った。


僕たちはムイが夜ご飯だよと呼びに来るまではずっと、自分の能力の使いかたに対するアドバイスなどを出したりして楽しく話していた。



夜ご飯を食べ終わった後。

僕はアクアが窓を見て座ってるのを見つけた。


「アクア、どうしたの?」


僕はアクアに声をかけると。


「ううん、なんでもない、街を見てただけだから」


アクアはさっきと同じように返して来る。

僕は少し考えたのち。


「アクア、少し出かけない?」


僕はアクアに提案すると。


「・・・・え」

「ほら、ずっとここにこもってるじゃん、少し街のほうえいこうよ」

「でも、この髪と目の色だったらバレるんじゃ」

「じゃあこれで大丈夫だね。幻炎ファントムファイア


アクアの髪に黒い炎がまとわりつき、髪の色を黒色に変える。


「これでどう?」


僕が聞くとアクアは驚いたのか少し高めの声で。


「え、どうやったのこれ?」


と聞いて来た。


「黒い炎で幻を見せてるんだよ、髪の色さえ隠せれば外出れるでしょ?本当はもっと早く外に出してあげたかったんだけど、この技思いついたのついさっきだから」


僕が謝ると。


「ううん、外に出れるだけで嬉しいから」


アクアは嬉しそうに小さく微笑んだ。・・・かわいい!


「じゃあ、僕がさっき見つけたところへ案内しよう!」


僕はアクアをお姫様抱っこして、窓から飛び降りる。


「え、ちょっと待って」


アクアがなんか言うが、問答無用!

僕は目的地まで走っていく。


15分後。


「着いたよ」


僕がアクアに言うと。


「わー、なにこれ綺麗」


アクアは蔓延の笑みで笑った。


「ここ結構綺麗でしょ。夜空に街の光がいい感じに見えるんだ」


僕たちがいるのは、大きな鐘がある塔の最上階だ。


「フェルトありがとう。こんないいところに連れて来てくれて」


アクアがいう。


「あの、アクアちょっといい?」

「なに?」


アクアが首をかしげる。


「その、誕生日おめでとう」


僕は小さな箱をアクアに渡す。


「え、今日が私の誕生日だって言ってないけど」


アクアが驚く。


「実は、服屋の店員に聞いたんだ」


僕がそう言うと。


「そうなんだ。ふふ、ありがとう」


アクアは笑った。


「開けて見ていい?」


アクアが聞いて来る。もうアクアの顔にはこの街に来てからずっと元気がなかった時の顔とは違い、嬉しそうな顔をしていた。


「いいよ」


僕が言うと、アクアは箱を開ける。


「え、これって、私がさっき見てたやつ」


僕が箱の中に入れたのは、アクアがさっきのアクセサリーショップで見ていた赤いかんざしだ。


「気に入ってもらえたかな?」


僕がアクアに聞くと。

アクアは嬉しそうに微笑んだ。その笑顔は、僕が見た中で一番嬉しそうだった。


「ありがとう。大事にする」


アクアはそう言って。自分の髪をまとめていく。


「どうかな?」


アクアが聞いて来る。


「ものすごくかわいいよ」


本心だ。


「へへ、ありがとう」


アクアは嬉しそうに笑う。


「その髪留めにはちょっとした工夫がしてあるんだって」


僕がアクアに言うと。


「そうなの?どんな?」

「その髪留めはどんなところにいても見つけ出すって言う効果があるらしいよ」

「そうなんだ」


アクアは自分の髪を留めてある、髪留めを触っている。


「よかった」

「え、なにが?」

「いや、この街に来てからずっと元気なかったから」

「ああ、ごめん。心配かけちゃったよね」

「いいよ、今は元気になってくれたし」


僕はアクアに言うと。


「ひとつだけお願いしてもいい?」

「なに?」

「ちょっと後ろ向いてくれる?」

「いいけど」


言われた通りに後ろを向く。すると、アクアが飛びついて来た。


「ありがとう、これは、プレゼントのお返し」


僕はアクアの方を見る。アクアは笑顔でそう言った。


「じゃあ、帰ろっか」


僕が言うと。


「少しだけ寄り道していきたいな」


アクアが言った。


「わかった、じゃあお金持って来てるから、市場のほうえいこうか」


僕が提案すると。


「うん!」


アクアは嬉しそうに頷いた。

僕とアクアは月明かりの夜を歩いていく。








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