第32話事件



 僕とアクアは市場を見て回っていた。


「アクア、人が多いからもっとこっちに寄って」


 僕はアクアの手を掴んで寄せる。


「え、ありがとう」


 アクアは顔を赤くして下を向いてしまう。


「顔赤いけど熱があるの? 大丈夫?」

「大丈夫だから、早く行こうよ!」


 アクアは慌てながら先に進んでいく。


「そんなに慌てると転ぶよ」


 僕が注意すると。


「大丈夫だよ、キャッ」


 アクアが転びそうになる。僕はアクアの手を引きアクアの体を支える。


「ほら、気おつけないと」

「ごめんなさい、ありがとう」


 アクアは少しシュンとなった。


「焦らなくてもいいよ、時間はまだあるから、ゆっくり見て回ろ」


 僕が言うと。


「うん!」


 アクアは嬉しそうに返事をした。



 僕とアクアは夜ご飯を食べた後だったけれど、市場の出店で食べ物を買って食べた。



「ちょっと食べすぐちゃったね」


 アクアはそう言ってにっこりと笑う。

 僕とアクアは今静かな空き地にいる。


「そうだね、でも、美味しかったからいいんじゃないかな?」

「そうだね、まぁ、体重も少し気にしないといけないけどね」

「え、アクア体も細いのに体重きにする必要あるの?」


 僕は驚いて聞いてしまう。


「私だって、太りたくないの! 女の子にそんなこと聞くのはダメなんだよ!」


 アクアはそう言って不機嫌になってしまう。


「ごめん、謝るからさ、機嫌なおしてよ」


 僕が頭を下げて言う。


「どうしよっかな〜」


 アクアは小悪魔のような笑みを浮かべて言う。


「お願い」

「じゃあ、私がピンチになったら絶対に助けに来てくれる?」


 アクアはそんなことを聞いてくる。

 当たり前じゃないか、アクアは僕たちの仲間なんだから。


「そんなの当たり前じゃん」


 僕がそう言うと、アクアは顔を赤くして尾っぽを向いて黙ってしまった。


「アクア?」


 僕が話しかけるが返事はない。

 僕がアクアに話しかけていると。


「やっと見つけたぜ」


 いきなり声がした。

 僕は声のした方に目線をやると、そこには、体つきのいい男が立っていた。


「おいお前、死にたくなかったらそこの女を置いて逃げろ」


 男がいきなり言う。


「なんで?」


 僕は男に問う。この場合女とはアクアのことだろう。だがどうしてわかったのか?目立つような部分は隠しているはずなのに。


「そいつがいると、俺の計画が台無しになっちまう。だから、俺簿気が変わらないうちにどこかにいくんだな」


 男はそう言った。


「断る」


 僕は即答する。


「そうか、じゃあ死ね。筋力強化25きんりょくきょうかにじゅうごばい


 ただでさえ筋肉の量が多いのに、男の体はさらに大きくなる。


「俺の攻撃に1発でも当たれば即死だぜ」


 男はそう言い、殴りかかってくる。


黒炎剣ダークフレイムソード


 僕は黒い炎で一本の両手剣を生成する。

 僕は生成した剣で男の攻撃を防御する。

 だが、剣は折れ炎の形に戻ってしまい、ほぼほぼ全ての、ダメージを体に受けてしまう。


「ガハッ!」


 口から血の塊が吐き出される。


「ホォ〜、今の一撃を食らって即死にはならないとは、なかなかいい体してるじゃないか」


 男はそう言い、もう1発殴ってこようとする。

 僕はとっさに。


時空逆再生タイムトラベラー時停止タイムストップ


 僕は体の痛みを直し、時間を止めて男の攻撃をかわす。同時に二つ使ったせいか体にはかなりの負担がきている。

 僕はアクアを抱えて屋根の上に飛ぶ。


「アクア逃げるぞ」


 僕は屋根の上をかける。

 後ろでは、動けるようになった男が家の天井に登りこちらに向かってくる。


「アクア、少しこの状態で我慢してくれ」


 僕はアクアをお姫様抱っこしてかける。家の天井を走っては飛び走ってはとび、家の屋根を移動していく。


「フェルト、あそこ」


 アクアが指した方向には同じように筋肉が異常に発達した男が屋根を渡ってきていた。


「あいつが、リーダーじゃなかったのかよ!」


 よく見たら、周りには筋肉が異常に発達した男たちに囲まれていた。


「アクア、少し揺れるよ」


 僕がアクアに言うと。


「うん」


 アクアは返事を返す。


時停止タイムストップ


 僕は前から殴りかかってくる男たちの時間を止め、男たちの頭上を飛び越える。


「よし、このまま服屋に行けば」


 そう思った瞬間。


 ベギッ。


 僕の体のお腹あたりに激痛が走る。

 僕は何が起こったのか理解できず、立っていた家の屋根を突き抜けて家の地面にめり込む。幸いアクアは反射的に上に突き飛ばしていたおかげで、無傷のようだ。


「がはっ!」


 今回で二度目の血反吐を吐く。あばらの骨も何本が折ったみたいだ。


「たく、手こずらせやがって」


 僕の目の前には最初にあった男の顔があった。


「おい、お前らそこの女を城に持っていくぞ。一応拘束はしておけ」


 アクアは必死に抵抗するが、男に殴られて意識を失ってしまった。

 アクアは意識を失う寸前に僕の名前を呼んでいた。

 僕は何もできずに見ているだけしかできなかった。


『嫌だ、このまま意識が飛んだら、目覚めた時に後悔する。また、あんな思いをするのは嫌だ。僕は誓ったんだアクアを守ると』


 僕は頭の中でいろいろな思考が回るが、少ししてから意識を失ってしまった。



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