魔術・妖術・処世術!?

田名崎剣之助

第1話 その名はターナー

魔法義務教育を終えたターナーは自宅から愛用の魔法箒である〈ペガサス〉を使っておよそ20分余りで到着する〈クリスタル魔法高等学校〉への進学を間近に控えていた。


【ターナー・ブリッジマン15歳・男】


ターナーはちゃっかりとしたやつだった。魔法の勉強に対して意欲的に取り組むかと言われれば、どちらかといって取り組まない。しかしその中でも学校での成績などは平均のちょっと上を維持していないと気にくわないのである。


ターナーは面倒を嫌うやつだった。高等学校進学においてもそれは同じで、例えばクリスタル魔法高等学校通称〈クリ高〉を選んだ理由などは〈面接のみで入学することが可能だったから〉である。


クリ高の偏差値は魔法教育委員会の定めるところによると55であった。


ちゃっかりと平均のちょっと上を行くターナーは魔法教育について次のように考えていた。


「魔法ってさ、使えればよくない?」

「どうせ魔法学なんか極められないし」

「使える魔法を教えてくれないし、教えてくれる人が魅力的じゃないし」


周囲の反応に賛否はあれどターナーは自分のスタンスを変えない頑固なやつだった。


確かに魔法学と実際に使う魔法は違う。義務教育や高等学校での教育では魔法学という学問を座学中心に学んでいく。魔法の真理を深めれば深めるほど当然魔法への理解は進むため、有名な魔法使いなどは魔法学をしっかりと高水準で修めている場合が多い。


だが前述の通り、一定の相関関係にはあるものの完璧な比例ではなく学問としての魔法学が未熟でも魔法使いとして大きく羽ばたく者も一定数はいる。その背景は、魔力量の限界値が先天的に決まっているからで、ほとんどの魔法使いは日常を快適にするレベルの魔力量。鍛錬して国の精鋭隊に入る場合もあるが中々通用しないのが現状であった。つまり多くの魔力量や魔術を使う上でのセンスといった学問以外のスキルがターナーの目指す強さであるので魔法学に対しての熱量がほとんどないのである。


因みに〈魔法〉とは魔術と妖術、そして個々に持ち合わせているオリジナル能力を総称してそう呼んでいる。


魔術とは見えない力

妖術とは変化させる力


と定義されている。


例えばターナーが登校時に使うペガサスには魔術によって生み出された魔力という名の見えない力で箒を浮遊させている。この見えない力を仮に火の玉に変化させれば妖術ということになる。


そして最後のオリジナル能力。これは15歳になると芽生える魔術にも妖術にも属さない魔法のことである。


つまり15歳のターナーにはまもなくこのオリジナル能力が芽生える。


ターナーは実践的な魔法だけは念入りに秘密特訓していた。オリジナル能力を自身のスキルとして迎え入れる時、即座に応用できるようにするためであった。


ターナーの目標はお金持ちになること。そのために社会で使える魔法。すなわち学問ではなく実践的な魔法のみに重きを置いて行動してきている。闘志だけは常にメラメラであった。


まもなくクリ高へ入学。2月生まれのターナーは現時点でまだオリジナル能力が芽生えていないがおおよそこの1年で開花するであろう。ターナーは変化を心の底から好む。自身の新しい変化と新たな学校生活に胸を踊らせていた。


「いこう!ペガサス!」


かくしてターナーはクリスタル魔法高等学校へ入学式を迎えるのであった。

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