第17話

タジマは謝罪の言葉を口にしながら、泣き崩れてしまう・

なんだこれは?俺が悪いのか?

くそ、なんで泣くんだよ。情緒不安定か!

とにかくこのままじゃ不味い。俺が新人をいじめて泣かしているみたいじゃないか。客が来たら変な目で見られてしまう。


「タジマさん。ちょっと、こっち来て。こっち。」


俺は慌ててタジマの手を取ると、控室まで引っ張っていく。タジマはおとなしくついてきた。


「これでも飲んで落ち着いて。」


俺はタジマに支給品のコーヒーを渡してやる。こうゆう時は炭酸の方がいいんだっけ?

まあ、そんなものはないからこれでいいだろ。


「ありがとう…ございます。」


タジマはコーヒーを受け取るが、口にしようとせずに、うつむいてしまう。


俺もなんと声をかけていいかわからず、二人の間に気まずい沈黙が流れる。


これはあれだろうか…事情とか聞いた方がいい系なのか?


俺はコーヒーを口にしながら、タジマの様子を観察する。残念ながらタジマの見た目からは話を聞いてほしいか、そうではないかの判断はできなかった。


話、聞かないといけないのだろうか…でもなんか深い事情だったどうするんだ?俺にできることなんて、たかだか数万程度の金を出すことだけだ。それに俺にはこいつは助けなきゃいけない理由なんて…。


(深入りするのはやめておこう。)


部外者がずかずか踏み込んでいい話ではないだろう。少なくとも助けになってやるという覚悟もないのに事情を聞いてどうするんだ。

俺はそう自分に言い聞かせる。困っている知り合いを突き放す、そんな後ろめたさに言い訳するように。


「ごめんなさい。」

「え。」

「急に泣き出してしまって。」

「しかたないさ。誰だって…。」


ふとよぎるのは大学受験に失敗し、親に八つ当たりをしていた自分。


「辛いこと一つや二つはあるだろう。」

「ありがとう…。」


俺のそんな月並みな慰めな言葉に、タジマは目を潤ませながら喜びを表す。

まるで自分が聖人君子にでもなった気分だ。

タジマは俺のことを誠実な男とでも思っているのだろう。

タジマが知らないだけで恋人や両親に平気で八つ当たりをする最低な男なのに。

タジマだけは俺のことを…。


「つらいなら…。」

「え。」

「もし、よかったらでいいんだけど…。嫌じゃなければだけど…。俺でよければ…相談に乗るよ。」


俺のそんな言葉を自然と口にしていた。踏み込まないそう決めたはずだったのに。

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