第17話 僕のお父さん<童話系>

 僕のお父さんの毎日は忙しい。朝出勤すると夜中まで帰ってこない。僕と顔をあわせるのは朝ごはんの時だけだ。

 それで、去年から朝ごはんの前に30分くらいの散歩をしている。眼が覚めるし、運動にもなるし、僕もお父さんも気にいっている。

 ところが、今日は散歩休みだって。

 昨夜、お父さんは怪我をして帰ってきた。酔っ払って階段で転んだんだって。幸い打ち身だけらしいけど、むこうずねってところが青く晴れていて、痛いらしい。

 毎日、散歩を楽しみにしていたのに。しかも今日は土曜日で仕事はお休みなのに。つまらない。

 かまってもらいたくてお父さんにまとわりつく僕をうるさそうに追い払う。ひどいよ。

 お母さんが外で遊びなさいと庭に出してくれる。こんな狭い庭で何をしろというの? お母さんの大事にしている、お花の鉢を倒せば怒られるし。泥んこ遊びをしようと穴を掘れば怒られるし。

 仕方がないから、今日はふて寝。


 頭の中で散歩道を歩いてみる

 湿った木の葉の匂い

 新しく盛り上がった土の匂い

 いつも食べる草の匂い

 友達がつけた友情の印

 喧嘩相手の縄張りマーク

 可愛いあの子の匂い


 夕方、お父さんがリードを持ってきた。散歩だ。

「ごめんよ、ジョン。冷やしたらだいぶ良くなった。散歩に行こう。今日はちょっと足を伸ばして、ドッグランまで行くぞ」

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