あやかし引っ越しセンター

山本 ヨウジ

第1話 あやかし公園

 この街の東の外れに、普通の子供ならどんなに楽しげな遊具が手招きしても絶対に近寄らない、怪しげな雰囲気が漂う公園がある。


 その公園が、元々何という名前だったのかは誰も覚えていない。


 深夜零時を過ぎると、そこはかとなく怪しい雰囲気に包まれる公園の遊具でたわむれる妖怪を見たとか、砂場の真ん中、首まで埋まった物の怪に話しかけられたとか――そんな噂が伝言ゲームのように尾ひれが付いて街に広がった。

 そんなこんなで、畏怖と好奇心――そしてもう一つの理由から、街の人は、その公園を「あやかし公園」と呼んでいた。


 そんな、あやかし公園の背後には、雑木林がうっそうと生い茂る、標高五十メートルにも満たない小さな山がある。

 街の人々が古墳じゃないかと噂しているその山は、威風堂々いふうどうどうと、しかも威圧的に公園と街を見下ろしていた。


 あやかし公園の入り口から分岐するように一本の細い道が、その古墳のような山の頂に向って、まるで蛇のようにクネクネとうねりながら伸びている。


 太陽の光すら通さない鬱蒼うっそうとした雑木林におおわれたその小道も、やはり怪しい雰囲気に包まれていた。


 それは、あたかも山に入るものたちを拒んでいるような――そんな道だった。

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