沖田君の眼鏡は異次元空間と繋がっている

瑠輝愛

プロローグ かわいいあの娘は三次元

 メガネをかけたのは、小学生高学年だった気がする。

 それ以降、高校受験を無事に終えた今でもメガネはかけている。

 こだわりはあるわけではないが、運動用、パソコン・勉強用、授業用と3つは携帯している。これくらい、メガネを着用している人なら普通だ。


 そして僕はモテない。女子相手にキョドるほどコミュ障なわけでもないが、原因は分かっている。恋愛シミュレーションゲームが好きだからだ。俗世間一般に言えばエロゲーだ。

 だから「嫁」と言える娘は結構いる。好みのタイプは似通っている。


 髪は肩くらいまでの長さで、目は大きく、おっぱいはそこそこで服の上から分かる程度がいい。性格はがさつではなく、許してくれるタイプ。でも、間違いがあったら叱ってくれるし泣いてくれる。ふとした瞬間に手を引っ張ってくれる娘がいい。

「あー? マジだっさ」とか今時の悪習たる言葉遣いは厳禁! これ重要。


 殆どのゲームはこんな娘を真っ先に攻略してしまい、後は未読スキップでざっとやってしまう。言い忘れたが、ロングすぎる娘はなんか信用できない。


 専らPCでプレイしているから、男でもあるから、……ここからは言わなくても分かるな。


 でだ。本題というか、現実に戻る。


 今、目の前にいるこの娘のことをどう認識すればいい?


「沖田君? どうしたの?」

 と可愛く首をかしげてくるこの娘だよ!

 夢か幻か?

 理想の女の子が目の前にいるんだ。

 しかも、体操服にブルマの姿で! そしてノートを抱えている。ここポイント高し。


 こんな娘が現実に居てたまるか⁉

 とメガネを外した。

「い、居なくなった?」

 俺は周りを見回した。ド近眼じゃない。裸眼で自転車くらい運転できる。けど見つからない。


「沖田君、どこ行ったの?」

 聞こえた。どこからだ?

「どこ、どこにいるんだよ?」

「あ、沖田君、見えなくなったよ。どこ?」

「くそっ」

 俺は再びメガネをかけ、遠くを見ようとした。


 むにゅ。


 ん?

 なんだこの柔らかくて幸せで、それでいて脳に響く甘い感触は?


 むにゅむにゅ。


 両手いっぱいに広がるぞ。もっと確かめてみよう。


 むにゅむにゅむにゅ。

「あっ……、お、沖田君……これ以上は、らぁめ……」

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」

 思わず手を離した。

 声の聞こえた方向に目を下ろすと、そこにあの娘がいて、俺は思いっきりおっぱいセクハラしていたのだ。

 Oh,No!


「あわわわ、ごめんごめんごめんごめん。あんまり気持ちよかったから……じゃなくて、うわわわわ」

「むぅ……」

 胸を庇って拗ねている。めっちゃかわいいじゃねーか!


 その娘は顔を真っ赤にして言った。

「もう駄目だよ、沖田君。女の子の胸は勝手に触るものじゃありません!」

「本当にごめん」手を合わせて、さら頭を何度も下げて謝った。

「他の娘にしないこと! それを約束してくれたら許してあげる」

「他の娘? それって……」


「私、沖田君のこと、大好き!」

 満天の笑顔で、いきなり告白された。

「はい! 俺も!」

 勢いで答えた俺。


 相手は三次元だ。だけど、メガネを外すと消えるんだ。


 なあ、この状況どう思う?

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