第1話 必ずいるあいつ
朝。起立、礼、着席。さあ学校の始まりだ。よく本にみんなの仲良くいじめのない空間や、全てが管理統制された秩序ある社会などと言う言葉が出てきますが、僕のいるのこ世界はその限りでは無い。
ご覧下さい。これが僕の机。スプレー缶や何か先端の尖ったもので跡がつけられている。死を連想させる言葉が机一杯に広がってる。
「A01《エーゼロワン》。お前今日もちゃんと登校するとか偉いじゃん」
「ありがとう」
「は?キモいんだよ。こっちみんなゴミ」
ジェイコブの暴言がクラスを包み、ケタケタクスクスと狂気混じりの笑い声で溢れる。
今日もいい日だ。目の前が赤く染まっていく。じつにいいひだ。
「アレックス、アダムって知ってるわよね」
「当たり前だろ?俺たちの神様。この世界の敵」
「正解。彼のお陰で一個の都市から争いが消え、それは国にも影響を及ぼしたわ。やがてその恩恵は世界をも包むことになるの」
「共通の敵をたった一体のアンドロイドに任せたなんてね。アダムを作った人間も僕たちをこんな風に扱う大人達もどうかと思うよ」
「そうやって斜に構えないのアレックス。いい?そもそも人は誰でも平等なんて事自体が綺麗事なの。気持ち悪いわ。生まれた場所、血筋、肌の色、エトセトラエトセトラ。そう言ったくだらない要因に縛られてしまうから人類に変革なんてあり得ないの」
「僕には難しい話だよ」
「そんな事ない筈よ?貴方もくだらない社会の枠組みのワンピースなんだから。勿論、残念ながらわたしもね」
理想都市は今日も平和で、賑わう商店街。訳の分からないアニメメーション。街のど真ん中に建つ広告塔には今流行りの女優と男優のラブストーリー物映画の予告が流れている。
天候は晴れ。勿論人工的に作り出された味気のない気候。それでもこの街は、この国はとても綺麗だと僕は思う。綺麗過ぎる。
『間も無く現場だぞ』
『あいよ』
言葉を介さず会話が出来るこの電子通信も始めほどの気持ち悪さは無くなってきた。自分の中に他人の声が言葉が迸るこの感覚。そう、まるで姉さんの、イライザの言葉の様だ。簡単にすんなりといとも容易く身体の奥底に浸透してしまう。
『そこだ』
腐乱臭。そして血の匂い。ぱきっ、ぽきっ、ごきん。旋律を奏でるのはわたし。徐々に強く、激しく、鮮血が舞うたびに血湧き肉躍る。
「ごめん。君の物語はここで終わりだ」
「待って、俺は、俺は悪くないんだってば!!」
「それを判断するのは僕でも君でもないからさ。どうしようもないんだ。これは、ルールだから」
「アイツらが悪いんだ!!俺だって人間だ!!感情だってあるんだよ!!」
「だからと言ってルールを乱す理由にはならない。悪いけれど、君の言葉は僕の心には響かないよ」
「
僕の詠唱と共に両手に出現する歪な形のナイフ。僕の十八番、かつてロンドンを混沌と恐怖の底へと追いやった連続殺人鬼の名前を冠したこの武装は僕が初めてこの組織に入って使用許可を貰えた相棒。
「A01、君は使命を放棄した。お別れだ」
「ふざけるなぁぁぁ!!裏切り者がぁぁぁ」
突進して来る。いなす。足を払う。ここまでの一連の流れで対象はぐぎぎと汚らしい呻き声を上げた。
「落ち着いて、といっても無理だろうけど。どの道もう君は死ぬしかない。ここで殺されるか、施設に戻されて処刑されるか。選んで」
「お前を殺せばここから抜け出せるんだよ!わざわざ殺されるなんて選択肢選ぶわけないだろ?」
「ごもっとも。でもこの状況を考えないと。君に勝ち目なんてないよ?皆無だよ?」
「ごちゃごちゃウル」
血飛沫が舞った。見慣れた色。真紅。そして対処の首が地面にコロコロと転がり運悪くこちらを向いてピタリと止まった。グロテスクな笑顔を浮かべたそれはもはや、ただのぬけがら。
「全く、また暴徒化したか。いくらジェイコブ達が君をいじめても、傷付いても、人間を殺していい理由になんてならないんだよ?君達の役目を果たさないと。何の為に生まれて来たのさ?なんて言ってもまぁ、何一つ聞こえてはいないのだろうけれど」
『済んだか?』
『勿論。また変えを用意しないといけないね』
『一体いつまでこんな事続けるんだろうな』
『世界が平和になるまで、だろうね。勿論、残念ながらそれが訪れる保証なんてどこにもないのだけれど』
『お前がその言い方をする時は決まって不吉な事が始まる。何かが起こる。そうだろ?』
『分かるわけないだろGB《グッドボーイ》。僕達がやれる事を今はやるしか方法がない』
『そいつはそーだな。一先ず戻って来てくれ、次の候補と面会だ』
僕の仕事は人を人ではない存在として扱い、手懐け、見殺しにする事。また、それが出来なくなった場合、自らの手で殺す事だ。
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