We are 赦されざる者達

@E38

第0話

We are 赦されざる者達 第0話


 薄ピンク色の微笑


 残骸。骸。ひとつ、またひとつと抜け殻達が産み落とされていく。わたしはというと、ただひたすらに真っ直ぐその光景を眺めていた。からんころん、からんころん、音が響く。血肉がそこら彼処に踊っている。


 ここは昔で言うところの夢の国なのかも知れない。


 ぱきっ、ぽきっ、ごきん。旋律を奏でるのはわたし。徐々に強く、激しく、鮮血が舞うたびに血湧き肉躍る。決まりルール終わりフィナーレもないわたしだけの舞台。これは例えるならジャズ。


「聴こえる?アレックス。早くわたしを見つけなさい。わたしはここに居る。それなのに貴方は?貴方は一体どこに居るのかしら?この子の中もわたしを力でねじ伏せ、楽しい事をしようとしていたあの男の中にも見当たらなかったし……困ったものだわ」


 わたしは、ただひたすらに彼女を見つめていた。綺麗な彼女を。血と汗と涙と色々な体液が混ざり合ってぐちゃぐちゃになった荒地と不釣り合いな淡い薄ピンクのワンピース。狂気が漂うその光景をわたしはとても美しいと思った。



 目覚め。


 いつものように喫茶店に入り、アメリカンを頼む。キャッシュで支払いを済ませ、席へ。ジャズ音楽が流れる店内はあいも変わらずガラガラで街の謙遜からかけ離れた異次元空間とかしている。


「アレックス、こんなしけた店に来て何になる?街はクリスマス一色だぞ?お前サラとはどうなった?」


「別れたよ。ホワイトカラーがお好みだとさ」


「四年も付き合って断り文句がそれだったのか、ドンマイ、ドンマイだなアレックス。こいつぁ奢りだ」


「どーも、マスター」


 出されたアメリカンをすする。自分とアメリカンコーヒーのカップとの間にエラーが発生する。


 注意、この飲料には中毒性が有ります。速やかに飲むのを止めてお近くの病院に診てもらってください。


「どうにかならないものかね、アレックスよぉ、この優し過ぎる社会ってやつは。昔は結構栄えたもんだ。二十四時間営業してたうちも、今じゃ夕方まで。向かいにあったでっかい映画館は趣味娯楽禁止のこのご時世の煽りで閉鎖、商売上がったりだよ」


「その仕組みを作ったのはマスター達の世代だろ?言わせてもらうけど僕らこそ、その煽りを受けてるよ」


 いつの時代も変わらず老害の老害による老害の為の社会が形成されているのだ。事実、年金なんてものはこの数十年支払われた試しがない。


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