BeautifulWorld

ツナ缶

ミソラとグレイ

「ねーグレイ?空って何色なの?」

男女が二人降り注ぐ光の下、建物の屋上から鉄を格子上にして作られた壁の向こうの空を見ていた。

男のほうは細身で、白い肌から汗をにじませていた。真っ黒な瞳は前髪が長いため光を失っていた。寝転がりぼうっとしている。

女のほうは対照的に屋上を行ったり来たりしている。そのたびに短いスカートが揺れる。

「青」

「ちゃんと答えてよー。グレイって国語の点数悪いでしょ?私に伝わるように言ってくれないと困るよ」

「はぁ?なんでいちいちそんなことしないといけないんだよ」

「教えてよー」

女が顔の上に覆いかぶさり影をつくった。

男はうっとおしそうに手を振る。

「どけって。肌焼いてんだから、邪魔すんなよな」

「どうせ色なんて変わんないくせにー」

「うっせー」

太陽が彼らの真上に達した。空に飛行する物体が線を一本引いた。

「で、空の色だっけ」

「うん。教えて」

女は男の隣に寝て言った。

「空はな。さわやかで、すずしげだけどどこか温かで、不思議な色だ」

「ふーん。いい色だね!」

嬉しそうに、鼻歌交じりに言った。

「じゃあ灰色はどんな色?」

「灰色。灰色は、黒でも白でもない中途半端で、出来損ないの色だ」

「えー絶対そんなんじゃないよ」

「じゃあどんな色だよ」

「灰色はね!暖かくて、優しくて、安心する。そんな色だよ」

「ふーん」

太陽がまぶしくて目をつぶる。温かくポカポカしているので眠りに落ちてしまいそうだった。

「いい色だな」


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