アットホームな秘密結社です。

@hironokagi

第1話 想定外の秘密結社。

高校に上がると、往々にしてアニメや漫画のような、青春に汗を流し、部活に血を滾らせ、勉学で一喜一憂をして、友人との他愛無い話で未来を語り、恋に涙を零す。そんな未来を入学前に抱くものである。それが、物語の中だけであり、美少女転校生が現れたり、道路の曲がり角で女子とぶつかったり、朝起きたら入れ替わっていたり、親方、そらから女の子が降ってきたと言ってみたり、変な部活に入れられたり、生徒会の権限が大きいのかなと考えたり、クトゥルフ神話の美少女化け物がいきなり現れたりするわけがないと高校生という未成年でありながら、良識と常識を持つがまだ子供である高校生は考えてしまうわけである。


でも、それらは全て、蓋を開けてみたら現実で知っていた味気無い物だったりする。ありえないと知っているが、それはそれで悲しい物である。

そして、それは大きい様に聞こえるが、実際は小さいようなことでも的中する。そして、それは一人の少女にそう言えた。


秘密結社とはどんな物だろう。普通に考えるのならば壁を埋め尽くさんばかりの本棚とその本棚の中にある、読んだだけで懸賞金が掛けられる本、それに、魅惑で色気が溢れている女性や、貫禄に満ちている初老のおじいさん、そして、無口で素っ気ない先輩。だが、いざという時は助けてくれるかっこいい人。


そんな人たちを少女は想像していた。それに、事前の話では基本的に危ないことは起きないし、起きたとしても我々が守ると言っていた。しかも、お金も貰える。正直、少女はそれの為に入ったのだ。だからこそ、夢を膨らませ、安心して目の前の、古びて、時代を感じさせるが、これからも現役であるだろう木で出来たドアを開けて中を見ると、ガラスを割ったような音を立てながらその膨らんだ夢は呆気なく割れた。


中は生活感あふれる家その物で、キッチンまでついている。そして、思ったより狭い。詳しいことは中の人に聞けと言われたが聞ける状況ではなかった。理由としては、ソファの上でごろごろしている黒髪で短髪、容姿は優れている訳でもない同じ高校の制服を着た男子に向かって箒で掃除をしている眉目秀麗、成績優秀、文武両道等の二つ名が有り余るほどの高根の花であり美少女が、白い肌と対照的な黒いボブカットの髪形を揺らしながら嫌な顔をしているからだ。


「働いて下さい」

「後五分・・・」

「そう言って二週間が経ちますよ!」


これは傍から見たら母親が息子に対して外で遊びなさいと言っているのと同じような感覚がした。そして、そんな状態に対して赤の他人が首を突っ込めるはずがない。だから、少女は戸惑いを隠せなかった。


「思ってたのと違う・・・」


夢とは往々にして抱いたものと現実はかけ離れているものである。それに例外は無い。そして、それを知り人は夢から離れ現実と向き合う。それが大人になる事だという事に少女、桜空神無おうぞら かんなは齢十五歳という年齢に気づいた。

そして、何故そうなったのかというと朝まで遡る。

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