次、何食べる?

カゲトモ

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「晴女も最強寒波には負けたな」

「そりゃそういう時もあるって」

 かろん、とベルを鳴らして入って来たのはいつもと変わらない笑顔の梓だ。十一月の結婚式以来だ。

「これ、口に合うかは分かんないけど。旅行のお土産、もらって?」

「え、気を遣わなくてもよかったのに」

「いーのいーの、本当にちょっとだから」

 マフラーを外しながら手渡して来たのはクラフトの紙袋。中には筆記体でなにやら書かれた箱が二つ入っている。

「新婚旅行の?」

「そう、年が明けてから行ったの。年末年始は忙しいからさ」

「どこに旅行行ってたんだ?」

「ヨーロッパだよ」

「へぇ、おしゃれじゃん」

「橘が行きたいってうるさくて」

「橘君ってヨーロッパが好きなんだ?」

 温泉とか好きそうなのに。

「なんかテレビで見たハンガリーの温泉に行きたかったんだってさ」

 温泉は温泉でも国外だったか。

「まぁ私も一度くらいヨーロッパ行きたかったし、ドイツとかイタリアとかフランスとかさ、美味しいもの沢山あるじゃん」

「そーゆーとこは昔から変わらないな」

 結婚式でもファーストバイトで新郎より大きなスプーンで食べていたし。

「私の長所でしょ。何でも美味しく食べられるとこ」

「確かに。あ、今日は何にする?」

「あー、今日はノンアルにしようかな、何か温かいやつにして」

「紅茶とコーヒーどっちが良い?」

「んーホットレモネード的な奴が良いな」

「かしこまり」

 最強寒波で店内も寒々としていたので、梓が来店してポッと温かくなった気がする。なにも湯を沸かしたからじゃない。

「あ、お土産ね、チョコレートだから」

「チョコレートか、読めなかった」

「ベルギーとフランスのだよ。はなちゃんチョコレート好きでしょ?」

「よく覚えてたな」

「忘れないよ、だって私よりチョコ好きだもん」

 その覚えられ方も微妙だけどな。俺のとこにまでわざわざ良かったのに。

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