前世スライムの俺は魔王に転生しても分裂、合体、変身使えました 【日常編】

あざね

プロローグ 俺は日常へと至る




 ――俺は、最弱の【スライム】だった。

 あの日のことを、俺は決して忘れることは出来ないだろう。

 己の未熟さから仲間に見捨てられたこと。勇者に殺されたこと。そして、その後に【魔王】へと転生を果たしたことを。


 そこから、俺の生涯は激変した。

 従者のフーコから言い渡された先代魔王の遺志により、俺は【人間】について学ぶこととなる。二度に渡る旅の中で、俺は【家族】について学ぶこととなった。

 それはきっと、人が人として成長するための基礎。その苗床といえるモノ。温かく、そして大きな敵に立ち向かう勇気ともなり得る存在だ。


 俺は二つの家族の在り方から、そのことを知った。

 まだまだ未熟だけれども、多少は【人間】というモノを理解できたのではないか、と。そう思った。ならば、それをこれからに還元しなければならないだろう。

 いや、これは決して義務からではない。俺が――そうしたいと、そう思ったから。


 だからまずは、ここからまた一つの家族の在り方を始めよう。

 それは真っ白なキャンパスに、初めての色を塗りつけるようなモノ。

 あるいは、新しく積み木を組み上げていく、その工程だった。先ほどの例から、小さな小さな芽吹きであると、そう表現してもいいのかもしれない。


 俺は、俺の家族を築き上げる。

 それはまず、その相手の理解から始まるだろう。

 だとするならば、従者であるフーコのことをもっと、知らねばならない。




 ――これは【魔王おれ】と【従者フーコ】のお話。

 取るに足らない、しかし温かい、そんな物語のひと欠片であった――。

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