66-4 生徒会の旅
「お兄ちゃま、あーーーーん」
「あーーーーん」
「ひゃうう、美月の指まで食べちゃだめだよお」
「おっと勢い余っちゃった」
「お兄ちゃま、美味しい? 美味しい?」
「ああ、美味しい、美月の指は最高だよ」
「違うよお、お兄ちゃま、お菓子の方だよぉ」
「美月程じゃないけど美味しいぞ!」
「きゃはは、お兄ちゃま~~」
ここが新幹線の中、隣に座る美月は、俺の腕に絡み、子猫様に顔を腕に押し付ける。
「いや、えっと……あのさ……僕の存在覚えてる?」
「ううう、お兄ちゃんのロリコン」
俺達の反対側に座る美智瑠と栞が呆れた顔で俺を見ている。
いや、だってしょうがないだろ? 可愛い可愛い俺の美月があーーんって言ったら食べないわけにはいかないだろ?
「──裕くん……通報されないでねぇ」
通路を挟んで隣の麻紗美がスマホを持って俺にそう言う……いや、その俺に見える様にしている緊急通報の画面は何?
「うほおおおお、天使がいるデーース、シャッターチャンスがいっぱいいっぱいありまーーす」
そして麻紗美の向かいに座るセシリーがパシャパシャと音を鳴らしプロが持っている様な一眼レフのデジカメで美月と栞を撮りまくる。
「あまり騒がないでえ」
「変な写真を取るとまずい……」
そう言ってセシリーを先生と会長が取り押さえる。
発車したばかりの新幹線はみるみるとスピードを上げていく。
「こ、こわ……」
俺はその加速に思わず声を上げてしまう。
「お兄ちゃま?」
「あ、いや、何でもないよ」
俺は美月に笑顔でそう言う。そして正面にいる妹を、栞を見つめた。
すると栞は俺に向かって口を動かす。ゆっくりと、わかる様に……。
『だ、い、じょ、う、ぶ』
栞は恐らくそう言っているんだろう……飛行機が苦手なのを知ってるのは栞だけ。
今回は新幹線なので飛行機程怖くは無いが、それでも加速していく感覚、高速で流れていく風景等共通点がいくつかある。
「……お兄ちゃま! 美月がいるから大丈夫!」
栞の口の動きを見た美月が、俺に抱き付く、そうだった……美月は読唇術も得とくしていた。
「あああ、ずるい! 美月ちゃん!それはずるい!」
栞は美月と俺を離そうと手を伸ばす。
「あうあう、少女とそんなエッチな事、ふ、不潔だ!」
その隣の美智瑠は抱き付く美月を見てそんな事を言い出す。
「あのぉ、鉄道警察ってぇ、新幹線にぃ、乗ってますかぁ?」
麻紗美は俺をみながらスマホでどこかに電話している……いや乗ってないから!
「はおう、私にも、美月ちゃわん、私にもハグを!」
そう言ってセシリーはカメラを連写モードで切り替え、美月をローアングルで写し始める。
「セシリー、駄目、それは児○に引っ掛かるわ!」
先生はわけのわからない事を言いながらセシリーを席に引き戻そうとする。
「あーー楽しい」
そんな俺達を優しい目で見ている会長……いや、会長あんた責任者なんだから、止めなさいよ!
「お兄ちゃま~~お宿に着いたら温泉あるのかな?」
「うーーんどうかなあ?」
「どっちでもいいか、今日も一緒にお風呂入ろうね、お兄ちゃま」
美月が笑顔で俺に向かって大きな声でそう言った!
わざとか? わざとだろ!
「「今日も!」」
栞と会長を除く皆が一斉に声を上げる。
「いや、入ってない、入ってないから!」
最近は入ってない、本当に入ってないから!
「「さ、最近は!」」
また一斉に声が上がるってお前ら仲良すぎだ!
「ち、違う、小さい頃だ、小さい頃にだ!」
「え? お兄ちゃまこの間ってそうか、お姉ちゃまよりは小さいからなあ美月、お兄ちゃまがもっと揉……」
「だあああああ!」
危険だ、危険過ぎるわ!
「うわああああ、うわああああ」
「おい! 美智瑠! 俺を人殺しの様な目で見るな!」
「もしもし鉄道警察隊を次の駅に!」
「麻紗美! 毎度お約束の様に通報するな!」
『カシャッカシャカシャカシャッ』
「セシリー空気読め!」
「お兄ちゃん! 私の方が美月ちゃんより多く一緒に入ったよね! ついこの間も一緒に」
「あああ、栞まで何を言い出すんだあああ」
俺達の旅は……始まったばかり……。
もう帰りたい……。
【後書き】
セシリー並みに空気を読まずに新作ですヾ(;゚;Д;゚;)ノ゙
『外面のいい幼馴染みに、いいように使われた、だから俺は彼女よりもいい女と付き合う事にする。そして出会った女子は秘密でモデル活動をしていた隠れ美少女だった?』https://kakuyomu.jp/works/1177354054916463017
宜しくどうぞ(  ̄ー ̄)ノ
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