64-6 これからが本当のハーレム展開?
俺のキスで安心したのか、栞はそのまま寝てしまった……あれだけ興奮したのだから無理もない。俺はそっと栞に布団をかけ起こさない様に部屋を出た。
自室に戻ると俺は制服のままベットにダイブする。そして枕で顔を覆いそのまま深呼吸する。
そして……「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」と叫んだ。
初恋の相手と初めてのキス、しかしその相手は実の妹。
これが叫ばずにいられるわけがない……。
初恋の可愛い女の子と初めてキスをしたという喜ばしい気持ち。実の妹に手を出した俺は兄としてどうなんだという怒れる気持ち。妹を好きになってしまい、当然二人の将来の事を考えると真っ暗としか思えない哀しい気持ち。俺と栞は間違いなく相思相愛だという楽しい気持ち。
俺の頭の中で喜怒哀楽が複雑な感情となって渦巻く。
「ヤバいヤバいヤバいヤバい……」
なんだこの感情……ヤバいよヤバすぎる……本当にヤバい。
栞が好きだ……好きで仕方がない……大事な大事な妹、俺の大切な妹、その気持ちが、その思いが、変化している。愛してるという気持ちが、意味が変わって行く。愛しい……愛くるしい……苦しい……この気持ちが……恋って事なのか?
「まずい……自分が抑えられない……」
あの状況、抱き締めるだけで良かった、そしてちゃんと話せば良かった……キスする必要なんて無かった。
俺は……自分の欲望が抑えられなかっただけだ……。
好きな人に対して抱く欲望抑えられなかった。妹に欲望を抱いた。俺は栞をバカになんて出来ない、出来るわけがない……。
寝ている栞に何をするかわからない自分がいる……。栞は俺に対して全てオープンだ、何をしても文句は言わない……だから、だからこそ俺が止まらなければ……でも……俺は止められなかった。自分を、自分の欲望を……。
まずい……駄目だ……好きという気持ちがどうにもならない。
家族として好き、大好き、俺の命よりも大切な妹……それが好き、女性として好きに変わってしまった。
元からカンストしているんだ、栞への愛は思いは、それが変化しただけなんだ……。
「駄目だ……止められない……このままじゃ……駄目だ」
もう破滅へのカウントダウンは始まってしまったのだ。俺の力ではこれは止められない……それが今日わかった……。
もう人に頼るしかない……それしか……ない……。
俺はスマホ手に取ると、メールを打ち始めた。
『もうダメぽ……』
そう打ちメールを送信した。すると直ぐに返信が来る。
『りょうかい~~♡』
もう……こうするしか無かった……栞……ごめん……お前を守る為なんだ……俺達の為なんだ……許してくれ……。
####
あれから2時間程経った。俺は今久しぶりの夕飯の準備をしている。
栞は多分まだ部屋で寝ている……もう家を飛び出す事は無いだろうが、万が一の為にキッチンの扉は開けておいた。
階段をチラチラと見ながら、料理をしている。まあ料理と言ってもカレーなんだが。
あまり食欲は無い、とは言え部屋でボーッとしていても仕方がない、何かしてなくては落ち着かない。
とりあえずあいつに助けは求めた……明日来てくれるはず、今日さえ乗り越えれば多分……でもそれが一番の問題かも知れない……。
「おっと焦げる……」
カレーを美味しく作るにはとにかく玉ねぎをよく炒めるのがコツだ。飴色になるまで焦がさない様にとにかくかき混ぜながら炒める……炒める……炒める……。
「…………お兄ちゃん」
「うお!」
炒める事に集中しすぎて、階段を見てなかった。
「栞……起きたのか?」
ピンクのセーターにミニスカートという何か少し栞らしくないミスマッチな姿で扉の前に立つ栞……俺は玉ねぎを炒めつつそう答えた。
「……何作ってるの?」
「あ、うんカレー」
「そか……ごめんね……代わろうか?」
「いや、今日くらいやるよ」
以前は交互にしていた料理当番も今じゃ栞に任せっきり、料理は嫌いではない。腕が落ちるのでたまにはやりたいとは思っていた。
「そか……」
栞はそう言うとキッチンに入りダイニングテーブルの前に腰掛けた。
とりあえず落ち着いた様で一安心だけど……この微妙な空気………お互いさっきの事を言うべきか悩んでいるような……。
「ねえお兄ちゃん……私の唇ざらざらしてなかった?」
「はおう、ふえ? えええええええええ!」
前言撤回……栞は全く悩んでいなかった。
「お兄ちゃんから初めてキスして貰ったのに……突然だったからリップとか塗って無かったし……お兄ちゃんがっかりしたかなあって」
「あ、いや、えっと」
良かったとも悪かったとも言えない……そもそも感触なんてろくに覚えてないし……。
「お兄ちゃん焦げるよ」
「おっと」
フライパンから玉ねぎをお湯の入った鍋に移す。すでに肉は焼いてニンジンと一緒に煮込んでいる。後はじゃがいもを剥いて切って水に浸しておくだけ。
煮崩れするので、じゃがいもは肉が柔らかくなった頃に投入した方が良い、最後に調味料やカレー粉を入れて出来上がりとなる。俺の拘りとしてはコーヒーを入れる事、苦味と深みが増すのでお薦めだ。
とりあえずじゃがいも剥く、包丁で芽を落としつつくるくると皮を剥いていると、突然背後から栞が抱きついて来た!。
「!! あ、危ない、栞!!」
包丁を持ってる時は危ないので、良い子真似しちゃ駄目だよ!
「ねえ……お兄ちゃん……今リップ塗ったよ……確かめて見る」
耳元でそう囁く栞……や、やめてくれええ。
「え、ええええええ! いやいやいやいや」
「もう二回も三回も一緒でしょ?」
俺は包丁を置いて後ろから抱きつく栞を俺から剥がし栞の方を向く。
栞はトロンとしたなんとも言えない表情で、うるうるとした瞳で俺を見つめる。
そしてゆっくりと目を瞑った。
あああああああああ、やめてええええええ。
もう今さら何回でも同じじゃん! 俺の中の悪魔がそう言って俺を誘う。
うう、やっぱり歯止めが聞かない……。
「ちょ、ちょっと待って鍋が」
しかしグツグツと煮えきる鍋の音で辛うじて理性が勝った。
栞の肩を持ち俺はキスしたい気持ちをグッと堪える。
「じゃあ……待ってる」
栞はそう言うと、再び椅子に座り俺を見つめる。もう誰がどうみても恋する乙女の表情……私の全てをあなたに捧げますと全身からそんなオーラが出まくっている。
「あ、うん……」
鍋がと言って制止したと言うことは、出来るまで待ってという意味だ……つまりカレーが出来上がった後にしようという意味だという事に気付く……。
もう断る理由は何も無い……他人がいるから、親がいるから、兄妹だから……今や全て意味が無い。
出来るだけゆっくりとカレーを作るも、そんなの殆ど意味は無い。
栞はひたすらそこにいる。出来上がりを今か今かと待っている。
そして1時間弱、俺は全ての調味料を投入しカレー粉を投入し完成させてしまった。
それを見て栞は立ち上がり、俺の元へ……。
「お兄ちゃん……」
「栞……」
カレーの匂いが充満している中、色気もへったくれも無い環境にも関わらず、栞は俺に迫ってくる。
だ、駄目だ、もう……俺は自分を止められない……。
鍋の火を止め、栞の肩を持つ。
ゆっくりと目を閉じる栞、可愛い……滅茶苦茶可愛い、俺の好きな人……。
間に合わなかった……明日まで持たなかった。
多分このまま俺達は……朝チュンを迎えるのか……あれ……あったっけ?。
俺はゆっくりと栞に顔を近付ける。このキスはさっきのとは違う……全部俺の欲望だ。なんの理由も無い、ただの欲望……。
「今夜はカレーかあ……」
「!!」
その時キッチンの入口から声が聞こえた、聞き覚えのある声が……そうか、てっきり明日だと思っていたが……流石だ。
そこには、キッチンの入口には、いつものゴスロリ姿の天才少女、俺の美月が立っていた。
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