58-1 生徒会活動再び

 

 会長に呼び出され栞を連れて生徒会室に、扉を開けると、そこには会長の前で腰に手を当て仁王立ちする美智瑠が突っ立っていた。


「ようこそ僕の新しいフィールド生徒会に!!」


「うわーーノリノリだ……」


「なんだよ、良いじゃないか僕は副会長様だぞ!」


「自分で様を付けるなよ、って言うか……美智瑠が副会長か……」


「なんだよ、不満か?」

 可愛い顔で膨れっ面になる美智瑠、不満ではないが調子に乗っているのが美智瑠の相棒としては気がかりだ、マジでこいつもポンコツだからな、頭は良いのに……


「会長、うちの選挙そろそろ指名制度じゃなくて、副会長も書記もきっちり選挙をやって決めた方が良いんじゃないですかね?」


「なんだと裕!」


「うーーん、それをすると誰も会長になりたがらないって言われたわ、あまり仲が良くない二人が会長と副会長になったりすると大変だしね、そもそも、うちの学校って会長になってもあまり利点はないから」


「てか、生徒会の活動って何をしてるんです?」


「まあうちはほぼ雑用ね、他の学校はクラブの予算とか行事の取り仕切りとかやってるみたいだけど、うちはそもそもあまり部活動は盛んじゃないから予算も奪い合いとかにはならないしね、いつも各クラブの部長と顧問で大体決まるわね、一応生徒会長が議長をやるけど、前年通りで大抵収まるのよね、行事も実行委員会が立ち上がるからそっち任せだし」


「うわ、マジ生徒会要らねえ~~」


「し、失礼だな君は! ちゃんとやることもあるぞ!」


「例えば?」


「えっと…………なんでしたっけ会長」


「美智瑠……」

 やっぱり美智瑠は残念な子だった、これが次期生徒会長って、まあうちならやれるか……


「うーーん、そうね、まあ実行委員会が立ち上がらない臨時の行事や、殆んど通らないけど校則の見直しや施設の改修案を提案したり、各委員会の橋渡しやトラブルの時の最終決定権とかかな? ああそうそう、いつもはあまり利点はないけど、1年生で生徒会役員になると修学旅行の行き先を決められるってのが結構良いかもしれないわね」


「1年で役員になったら?」


「うちの学校って2年の夏休み前に修学旅行っていうちょっと珍しい季節にやるんだけど、大体生徒会役員って2年の秋の選挙で今まではほぼ2年生がやっていたの、指名制度だから1年生の子を指名するって中々無いしね、だから修学旅行先が決められるって言っても新生徒会が発足した後だから皆既に行った後だしね、だから基本的に生徒会が決めてもあまり意味はなかったのね、まあ行った上で後輩にも行って欲しいとか、今一だったから他にした方が良いとかっていうアドバイス的な事なのかもね? まあ直接関係がないからこそ決められるって言う事もあるし」


「へーー修学旅行の行き先って生徒会が決めるんだ? って事は会長は去年1年で生徒会長になったんだから自分で決めて自分で行ったって事じゃないか」


「あ、ま、まあそうね」


「へーー、どこに決めたんですか?」


「えっと……イギリス……」


「え!」


「副会長が……前の副会長の瑞樹がね……強引に決めてしまって……イギリスで言われたの、留学の支援を貰えて卒業したら二人でまた来ようって……」


「あーーーー」


「まあ、それも私を縛る為の手段の一つだったんだけど、でも凄く楽しかったわよ、その時は……」

 少し寂しそうな顔をする会長、自分の人生を変えた人間に対して、当たり前だがやはり色々と複雑な思いはまだまだあるようだ。


「なるほど、でも修学旅行先がイギリスってかなりお金がかかるじゃないですか? うちってそんなに積立金とか高く無かった様な」


「うん、えっとまあ、色々と……瑞樹がね……」


「また裏から色々と手を回したって事か」


「お金持ちって凄いよね~~何でも出来ちゃうのよね~~」


「会長も今やお金持ちでしょ?」


「私はほら、家柄だけで、そもそも末席だし、なかなか自由にはね」


「そんなもんですか……まあとにかくそれが生徒会のお仕事って事なんですね?」


「そうね、校則の変更や修学旅行の行き先って個人個人の話しを聞いてたらキリがないでしょ? かといって学校側で一方的に決めるってのもね~~」


「なるほど校則はどうせ変わらないけど、代わりに修学旅行は名目上生徒に選ばせてるだろって事か」


「そうね、まあ完全に自由って訳には行かないけど、候補の中からどれを選ぶって感じかな? 最終的には生徒代表として選出された生徒会が決める事になってるわね」


「へーー、候補ってもう出てます?」


「気になるの?」


「ええ、まあ」

 出来れば飛行機に乗らない所がいい……海外とか無理だし、石垣は栞が隣だったらなんとかなったけど……


「えっと……あの、会長さん、お兄ちゃんが何も言わないから黙ってましたけど、私達が生徒会の仕事を手伝うみたいに進めてますよね? でも、そもそもそれって約束が違うんじゃないですか?」


「あーーうん、まあ言われるとは思ってた、ごめんなさい栞さん、でも本当に必要なのよお二人は」


「で、でも!」

 やはり栞はオコだった、まあ俺もそうは思ってたんだけど、修学旅行の行き先の話しは俺にも、いや俺達兄妹にも利点がありそうだと思う、なので怒り心頭の栞の耳元に向かって小声で言った。



「栞、修学旅行の行き先決められるって言ってたぞ……二人で回れる所とか提案すれば、ほら夜景が綺麗な有名な所とかならさ……」


「あ、あん、お兄ちゃんくすぐったい、ってか! お、お兄ちゃん!」


「あんとか言うなし」


「ど、どうしたの? 昨日からデレまくりだよ!」


「は? あ、まあ……」

 だから俺はツンデレじゃねえ……


「ちょっと裕君栞さん、ここであまりイチャイチャされても……」


「ううううう、裕のバカ」


「イチャイチャしてねえ」

 普通だ普通、いつもの事だ…………え? いつもイチャイチャしてるって事か? いやいや気のせい気のせい。


「まあ、その辺も含めてとりあえず二人とも座って話しだけで聞いてくれないかな?」


「……わかりました」


 面談の様に俺と栞の向かいに会長と副会長が座る。

 本日は4人で話そうと言う事になっていたので麻紗美とセシリーと雫はいない。

 麻紗美はともかくセシリーが居ると話しが進まないって事になりかねないのと、雫と俺が絡むと澪も来かねないので……とりあえず今日は4人で今後の話し合いをするとここに来る前教室で麻紗美に言われていた。



「えっと改めまして、会長の那珂川葵です、裕君と栞さん今日は来てくれてありがとう、選挙の後にいきなり役員外補佐なんて変な発表してごめんなさい、でもお二人は今後の生徒会に必要なの、出来るだけで良いからお願い出来ないかな?」


「出来るだけって言われても……栞はともかく俺は何も出来ないですよ?」


「「「そんなことない!!!」」」


「うわ揃った……はははは……」


「お兄ちゃんは凄い、お兄ちゃんがいなくちゃ私は何も出来ない!」


「裕は相変わらず自分を蔑(さげす)む、そう言うのは裕が好……裕の友達の僕たちを軽く見てる事になるって言ってるだろ」

 言ってたっけ?


「裕君は私を助けて、そして本来の姿に、元に戻してくれたじゃない、凄いよ」


「いや、それは栞と美月のおかげって言うか」


「ううん、美月ちゃんも栞さんも裕君だから、裕君が頼んだから頑張ってくれたんじゃない?」


「いや、それはそうかもしれないけど、でもなんかそれって他人の手柄を自分の物にしてる感が」


「司令塔って言うのは得てしてそんなもんだぞ裕」


「司令塔ねえ」

 物は言い様だよな……本当俺の周りの人間って……


「裕君も栞さんも本当に必要なの、助けると思って、ね?」

  手を合わせてウインクをする会長、畜生……可愛いじゃねえか。


「うーーーーん、どうする栞?」


「ずるいって思うけど、でも判断はお兄ちゃんに任せるよ」


「そうか……えっととりあえず、どのくらい手伝えば?」

 毎日とか止めて、また俺の日常が、平穏な暮らしが……ああ、本読みてえ……


「そうね、前と違って今年人数は揃っているの、だから日常業務は問題ないんだけど、ほら夏休み前にお二人に頼んだボランティアの件、あれ物凄く評判が良くてまたお願いしたいって言われてるの、でもほらあれって栞さんがいないと誰にも出来ないって言うか……」


「ああ、まあそうですよね」


「うん、またお願い出来るかな? 栞さん」


「うんまあ、友達も楽しかったって言ってたし、良いですよ」


「本当! ありがとう~~、で、どうかな? こんな感じでたまにで良いんだけど?」


「あーーまあ、それくらいなら……」

 俺は栞の顔を見る、栞は俺を見てニッコリ笑って頷く。


「じゃあ、まあ良いですよ」


「本当!」


「ええ、えっとじゃあ年明けにそのボランティアの打ち合わせに……」


「あ、ごめんさい、来月にイベントをするからそれにも来て欲しいの、と言うかそれを手伝って欲しいの」


「イベント?」


「そうだ! 僕たちは今年妹喫茶で稼いだだろ? その予算を使うためにイベントを行うんだ!」


「予算を使うイベント? 何をするんですか?」


「えっとね、クリスマスイベントをやりましょうって事になったの」


「クリスマスイベント?」


「そう、この間の妹喫茶の売り上げが凄かったのよね、それを生徒会の予算に組み込まれているんだけど、普通に使いきれないのよ、だから何かイベントをってね?」


「随分と豪勢な事で……それでどんなクリスマスイベントをやるんですか?」


「それは! まだ決まってないぞ!」

  ふんぞり返って美智瑠がのたまう、あーーお前やっぱりポンコツだな!!


「内輪だけでも良いし、還元って事で学校で妹喫茶みたいな物をまたやっても良いし、ほらボランティアで行った幼稚園とかにサンタクロースで行ってプレゼントを上げても良いし、何かやりましょうって事にね」


「ああ、なるほど、でもその内輪って何ですか」


「私達でパーーーっと使っちゃおうかなって」


「おい!」


 テヘペロ可愛いけど、それは鬼畜の所行だぞ……あーーでもそれが楽で良いかも……いやいやいや。


「とにかくなんでも良いから予算を使う為のクリスマスイベントをやりましょうって、二人とも無関係じゃないし、ね? 良いでしょ?」


「ああ、まあ」


「じゃあ決まりね! 明日から何をやるか会議するから来てね」


「明日から……はあ……」

 またか……結局乗せられてしまった……でも……クリスマスイベントね~~何をすれば良いんだ?

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