56-2 大人デート


「うわーーお兄ちゃん! 凄い素敵~~あ、あれ? レインボーブリッジ?」


「ああ、そうそう」


「料理も美味しいね、安いし」


「ああ、これで2000円しないとか本当、凄いよな」


 栞との久しぶりのデート、今回は大人のデート、まあ要するに前に行った横浜本気デートの続き、あれは栞が熱を出して途中帰宅になってしまった。


 今俺達は海の見えるレストランでランチを食べていた。


海岸沿いのビルの最上階、レインボーブリッジが一望出来る凄く雰囲気の良いレストランで、俺と栞はその店のランチタイムで提供させているお手軽なフルコース料理を堪能していた。



「本当素敵な所だね~~~~」


「だ、だろ?」


 前菜、スープにサラダをペロリと平らげ、メインディッシュ、イサキのポワレが出される、白身魚を焼いた物なんだけど、色合い良く野菜を周りに乗せ、ソースを丁寧に掛け、その一皿は絵画の様な色彩を放っていた。


「うわーー美味しそう」


「肉もあったけど良かったの?」

 なんか肉ってよっぽどの高級店でもない限り、どこで食べてもそれほど大差がない気がして、それこそ高い肉を買ってきて自分で焼いた方がいい、なので俺はいつも魚料理、こういった魚料理って作るのも大変だし、なかなか食べれない。


「うん! お兄ちゃんと一緒の物がいい」

 

 栞がそう言う俺は頷いた後少し勿体ない意識を振り払い、魚用ナイフでお皿の絵画を崩しながら食べる……うまあ!!


 パンかライスを選べるのでそのままライスを頬張る、うん、合うな~~ご飯ラブ……


「美味しいね、お兄ちゃん」


「ああ、最高だなぁ、ここは」



「うん、そうだね……お兄ちゃんが美智瑠さんと来たところじゃなくて、これが私と初めてだったら本当に言うことないんだけどね~~~」


「う、うぐうっ」

 ご、ご飯が……こ、米が……の、喉に……

 

「大丈夫? お兄ちゃん、はいお水」

 栞から受け取った水をグビグビと飲み干す、ううう、死ぬかと思った…… 


「し、知ってたのか……栞……」


「うん、お兄ちゃんが美智瑠ちゃんと一緒に撮ってた着物写真見せてもらった事あるから」


「えっと……いや、で、でも確かここで美智瑠と写真は……」

 あれは東京タワー縛りで撮ってたから、ここでは撮ってないはず……


「うーーん、でもこの近くで写真撮ってたし、ここってオフィスビルでレストランの入り口が少し分かりずらいのにお兄ちゃん迷わないで入って行ったし、お兄ちゃんの凄いよなの言い方とか、ここは最高だなぁって言い方が、やっぱりって前にも来た事ある言い方だったし、お兄ちゃん彼女居なかったし、友達も居ないし、勿論一人でこう言う所に来る分けないし、あ、美智瑠ちゃんかなって」


「友達はいるわ!…………でも……やっぱりすげえな栞、お前は何でも分かるんだな」


「何でもは分からない、お兄ちゃんの事だけ」


「あははは、……ごめんな」


「ううん、良いの、お兄ちゃんがここを気に入って私をお兄ちゃんのお気に入りの場所に連れてきてくれたって分かるから」


「うん……」


「私も黙ってれば良いんだけどね、ちょっと悔しくて、お兄ちゃんのお気に入りの場所を見つけた時、そこにいたのが……最初に一緒にいたのが私じゃなくて美智瑠ちゃんだった事が…………うん……ただの焼きもち」


「ううん、言わなかった俺も悪かった」


「ううん、そんなことないよ、ごめんねお兄ちゃん、さあ食べよう美味しい料理が冷めちゃうよ」


 そうなんだ、ここは美智瑠と以前に来たレストラン、景色も良いし値段も安い、階下はオフィスなので平日はカレーやパスタなど安いランチを提供しているが、夜はフレンチ風のシックなレストランに変わる、土曜日はリーズナブルなランチは少なくなるものの、それでも安い、前菜、ミニサラダ、魚or肉、デザート、コーヒーで2000円を割る、さらにお台場レインボーブリッジが一望出来るロケーション、穴場中の穴場、お店の名前は教えない。


 だって大人デートって言われても、思い付くのは高級レストランで食事くらい……、この辺にも高級ホテルがあるけど、さすがに俺の小遣いで高級レストランは無理、生活費をそこに使う分けには行かないし……


 でもこれで終わりには出来ない、それはさすがに栞が可哀想だ、俺も栞には楽しんでもらいたい、今回だって栞には助けられた、俺の思い通り、いやそれ以上の事をしてくれたんだから……


 メインディッシュを食べ終わるとデザートとコーヒーが出てくる。


 さすがにデザートはアイスと小さいブリュレだったが、良く冷えた皿にチョコを垂らして皿を寂しい感じにしていない所はさすが抜かりない、いやマジでこの店は教えてやらない。



「よし! 栞、この先にちょっと面白い所があるんだけど、行って見る?」


「面白い所?」


「ああ、景色が凄くいいってさ」


「へーー行く!」

 デザートのアイスを頬張りながら子供の様に笑う栞、俺はその笑顔、スプーンを咥えている仕草に思わず見とれてしまった。

 

 ヤバい、マジヤバいよ、うちの栞……本当に可愛いすぎる……









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