53-3 生徒会長選挙

 

「失礼しまーす」


「にいに!」


「……会長、ここにいましたか」

 翌日になり放課後会長に次も生徒会長になって貰うべく、俺は説得に向かう。


 今日は妹にその旨を話し先に帰って貰う。

 妹は俺と一緒に行くと言うかと思ったが、お茶の準備をして待ってるねと素直に帰っていった。


 俺は、まず会長のクラスに向かった、1学年上、2年生の教室だ。


 さすがに上級生の教室にずかずかと入っていけないので、扉からそっと覗くも会長は既に居なかった。


 ひょっとしたらと思い生徒会室に足を運んだ。


 ノックをして中に入ると会長は机の上で何やら書き物をしていた。


「うん、学園祭の時の売り上げが実行委員会から入って来たから帳簿を付けてたの、来年の予算凄いわよ、生徒会室に超高級ダブルベットとか買えちゃうんじゃないかな?」


「ぐはああ、な、何でダブルベット?」

 何? 俺の家に盗聴器でも取り付けてるの?


「さあ? 何となく? でもあれよね、写真イベントじゃなくて指名制度にして指名料を取れば良かったのね、学園祭が偶然重なったとは言え、さすがに妹作家の大御所よね、うちの自称バカ妹作家とは格が違うわよね」


「何の話しですか!」


「指名料プラス接客かー、成る程ねしかも一律1000円ってかなりぼったくれるよね」


「だーーーかーーーらーーー何の話しですか!」


「え? この本の事だけど」


「見せるな! 見せても言えないから!」

 何でそんなもの会長が持ってる……ラブレター持ってる表紙が……


「そうなの? これセシリーが凄く楽しそうにこれやるべきでしたって言って持ってきたんだけど、それにしても何でこれエロ」


「タイトルとか言わなくていいから!!」


「えーーーー、うーーん、今日のにいになんか怖いな~~、で、どうしたのわざわざここまで?」


「あーーえっと、会長にお話しがあって」


「話し?」


「はい……」


「何かしら? 愛の告白、えっと……どうしましょう、私……にいにの事はお兄ちゃんと思っているから、ああ、でも世の中兄妹で付き合ってる変な人もいるし」


「おい! 違いますから!」


「あら違うの?」


「はい」

 誰が変な人だ! まあ変だけど……


「じゃあ何かしら?、私、何でも言う事を聞く権利はまだ考えてる所だから、もう少し待ってね」


「何でもじゃないですから! いや、それはまた今度で……」


「あら、それでもない……、じゃあどうしたの? 何かしら話しって」


 俺は姿勢を正し会長に向かって頭を下げてお願いをした。


「えっと……会長……来期も会長になってくれませんか?」


「え?」


「次の会長選挙に……出てくれませんか?」

 俺は敢えてダメ元で何も考えずに直接お願いしてみた、恐らく嫌だと言うだろうが……


「うん、いいわよ」


「そこを何とか……え?」


「出てもいいわよ?」


「ほ、本当に?」

 あっさり了承される、え? そんな簡単に?


「うん、ただし……栞さんも出るならね」


「え、ええええええええええええええ!」


「栞さんが立候補するなら出るわよ?」


「はあああああああああ?」

  な、何を言ってるんだ会長……それって……


「栞さんが出て、栞さんに私が勝てたら会長になるわ、ううんそうじゃなきゃ駄目、栞さんに勝って初めて皆に認めて貰った事になるもの」


「いや、でも」


「だって栞さんが出ないで私が選ばれても、栞さんが出なかったから会長になれたって言われるでしょ? それは嫌」


「……」


「私は今でも……副会長……瑞希のおかげで会長になったと思ってる、次もそんな思いをしながら1年間会長なんてしたくない、だから栞さんが出て、栞さんに勝ったら喜んでなるわ、会長に……」


「……」


「栞さんが出ないなら私も出ない……それが条件よ」


「はい……」


「うん、まだ立候補の締め切り迄時間があるから栞さんと一緒に考えておいてね」


「分かりました……」


「うん……宜しくね~~にいに~~♡」


 会長に何も言い返せず俺は生徒会室から出た……今日はほっぺにチューは無かった。

それにホッとしたのか残念なのか、そんな事を考える余裕なんて今の俺には無かった。


「マジか……」

 会長を次も会長にするには、栞と共に会長選挙に出て栞に勝つ事……それが条件……


「なにその無理ゲー」

 あのチート妹に勝つなんて絶対に無理、しかも選挙とかって……

 ほぼ人気投票のうちの会長選挙、栞なら恐らく何もしなくても圧勝だろう……


「妹に頼んで皆に入れないように言うとか……」


 駄目だそんな事をして勝っても意味がない、それが会長に伝われば会長は辞退する……


「かといって……」

 絶対に無理だ、あの妹に勝つなんて……一体どうすれば……


 栞は当然俺が出るなと言えば出ないだろう、でも会長を立候補させるには栞も立候補させないといけない、最悪会長の立候補を諦めれば栞も……


「でも……」

 俺は来期も会長に……那珂川葵に会長になって貰いたい……そう思っていたからこそ嫌々ながらも先生に言われ会長の説得を引き受けた。


 でもその条件が妹との選挙戦……


 一体俺は……どうすれば良いんだ~~~~~~~~!!


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