52-5 涙の学園祭
ノックの音がした、「どうぞと言うと」美月が部屋に入ってくる。
「お兄ちゃま、ちょっと良いかな?」
「どうした?」
自宅に戻り、夕飯を食べ部屋に戻って休んで居たところ美月がやって来た、金曜日の夜から土日を挟んで月曜日の早朝まで4日間うちに居る予定だ。
「あのね、今日1位は誰か決めなかったのって、美月のせい?」
「え?」
「お姉ちゃまを1番にすると美月がこっちに来ないんじゃないかって思ったんじゃない? 美月を妹に、1位にすればお姉ちゃまが悲しむって思ったんじゃないのかなって」
「そんな事は……」
正直1位は美月にしようと思ってた、年的にもそうだし、美月がまだまだ俺に、俺たちに遠慮している気がしてたし
「うん……、まあ正直美月を1位に、一番の妹にするつもりだったよ」
美月に嘘は付けない、俺は正直に言った。
「やっぱりね」
「でも違うんだよ、栞は関係ないよ、皆が頑張ってる中で美月と明日店をほったらかして遊ぶなんて出来ないだろ?」
店長っていう責任もあるけど、そんな事したら……
「お兄ちゃま、お兄ちゃまは前から言ってるけど、優し過ぎるんだよ! 相手の事ばかり考えて自分の事を抑えてる、もっと我が儘になって良いと思う、もっと自分の欲望を前に出しても良いと思う、相手の事ばかり考えて嫌われない様にしてると本当にいつか嫌われちゃうよ?」
「…………」
「でもお兄ちゃまは少し位嫌われた方が良いのか」
ニッコリ笑って俺に言う美月……
「どっちなんだよ」
「お兄ちゃまはハーレム体質だから、少し嫌われた方が良いって事だよ、ライバルが減るしね」
「ねえよ、ハーレムなんて存在しない!」
「まだそんな事言ってる、皆お兄ちゃまの事が好きなんだよ、そしてお兄ちゃまは優しすぎるから、その好意を拒絶しない、はっきり断らない、だから皆希望を捨てられない、お兄ちゃま、ハーレムは無いって言うならそれは少し残酷だよ」
「そ……」
俺は何も言い返せなかった……確かにそうかも知れない、でも……
「でもそうか~~本当は明日お兄ちゃまと学園祭デート出来たんだ~~残念」
「ごめん」
「ううん、皆が頑張ってるのは分かってるから」
「そうなんだよ、皆一生懸命やってる、生徒会でも無いし、会長とそんな交流が有ったわけでも無いし、お金が貰える分けでも無いし」
「お兄ちゃま、分かってないないなーー、何で皆が一生懸命頑張ってるか分からない?」
「え? 明日のMVPとか」
「それは今日最後に決めた事でしょ?」
「じゃあ妹の座争奪戦とか?」
「それだったらたまにしか来なかった美月を選んじゃ駄目じゃない、もう違うよ」
「えーー分かんないよ」
「もう……お兄ちゃまだよ」
「俺?」
「皆ねお兄ちゃまとの思い出の為に頑張ってるんだよ」
「俺との?」
「そう、学園祭に好きな人と一緒に何か出来るなんて学生の今しかないの、だから皆楽しく頑張ってるの、お兄ちゃまの為に、お兄ちゃまと一緒に居られる今の為に」
「美月……」
「あーーあ、でも美月はお兄ちゃまと二人きりで学園祭楽しみたかったな~~そのチャンスがあったと思うと悔しいな~~」
「それは、ごめん」
「美月がもっと魅力的だったら、お兄ちゃま美月と一緒に回ってくれたのかな~~」
「えええ?」
「ねえ……お兄ちゃま……美月って、魅力ないのかな?」
物凄く寂しそうにしかし上目遣いで俺を見る美月……えええええ?
「ねえ……お兄ちゃま、美月……」
そう言うと美月が俺の方に近づくって……これは……
「美月……お前もか……」
「え?」
「美月! 栞か! 栞に聞いたんだな!」
「え~~~~~?」
一転なんの事~~みたいな顔になる美月……演技力の才能も無いな美月
「絶対駄目~~~18禁って書いてあっただろ!」
この間読んだ例の本と同じシチュエーションだった、あのマンガはあのセリフの後ベットに押し倒して……
「お兄ちゃまも18歳以下でしょ!」
「いや、まあ、でも駄目! 小学生は駄目! 法律違反!」
「お兄ちゃま、あれは販売してはいけないって条例で買うのも読むのも法律違反じゃ無いんだよ」
「え? そうなの、いやいやそういう問題じゃない!」
「お兄ちゃま、早く続きを!」
「しないから! ベットに自分から行くな!」
「いいでしょ、明日一緒に回る代わりと思えば」
「思わねえよ! なんだよその交換条件!」
「こら、布団に潜り混むな!」
「お兄ちゃまはやくううう」
「はやくうううじゃねえ、可愛いけど、いやいや」
暫く攻防戦を繰り広げていたが、騒ぎに気がついた妹が部屋のから美月を連れ出しことなきを得た……全く……
明日は誰を一番にするか……誰が最も頑張っていたか……
そして賞品とは、俺はそれを考えていた。
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