52-4 涙の学園祭


「終わった~~~~」


「お疲れ様~~~」


 学園祭初日が終了した、時間にしたらほんの数時間程度だったんだけど、行列は途切れる事なく、殆ど休む暇さえなかった。


「もう少し狭くして座席数増やす?」

 会長は相変わらずの魔法少女姿で俺に話しかけてくる……なんか魔法で増やしそう。


「そうだな~~でも麻紗美が追い付かないんじゃないか?」


「明日は撮影会無いし、配膳はあまり人数掛けなくても良いんじゃない?」


「うーーーーんでも今日は殆ど休憩も無かったし、明日は皆も他の出し物とか見たいんじゃないか?」


「僕はいいぞ、スッゴク楽しかった」

 途中ブルーの着物から赤の着物に着替え直した美智瑠、なんでも赤い方は結構良い着物らしく流石に貰え無かったって言ってたけど、コーヒーこぼさないか心配で仕方が無かったので主にオーダー聞きをさせていた。

 前回最後の店内の説明の時に美智瑠が居なかったのは着替えていたからで、決して忘れた分けじゃない…………多分……


「お兄ちゃん! ところで、誰が一番なの!」


「あーーーー」

 やっぱり来たか……


「そうです、私と言ってください、そうすれば私は女神になれるのです!」

 またセシリーが意味の分からない事を、なんで俺の妹になるのと女神になるのが同じなんだ?


「えっと……まさにそれなんだけど、今決めても結局明日一緒に回れないんじゃないかなって」


「そうね、店長さんともう一人って例えば麻紗美ちゃんだとキッチンが手薄になるとかってなっちゃうもんね」

 先生が鉄の棒を手でクルクル回しながら言う、えっと何処からその棒は……俺は何気に先生の太ももを見たが他は装着していない。


「え! わたしぃ?」


「例えばよ、裕君が選ぶのにそういう制限がかかっちゃうって事ね」



「そうなんだよ、そもそも俺がそうやって抜けるのには無責任な気もするんだ」


「だからぁ? 止めたいって事?」


「うん……そもそも俺には妹が居るし、誰が一番の妹って言われても結果は出てるんだ……でもそれは頑張ってる皆に悪いし……」

 今日の皆を見ていたら、とてもじゃないけど言えない。


 そしてそれを聞いて皆が黙る、せっかく盛り上がってるのに水を差す様な事を言ってしまった……でも今日の皆を見て俺がそう思ってしまったんだら仕方がない。


「えっと……じゃあお兄ちゃま、お兄ちゃんではなくて店長として、誰が一番の妹か決めてみたら?」


「え?」


「妹カフェのナンバーワン、明日1日やって誰が一番なのか誰が一番頑張ったのか Most Valuable Playerを店長として決めて見たら? それもある意味一番の妹でしょ?」


「うーーーん」


「そうか、MVP、店長賞か、良くあるよなそういうのって」


「うん、いいねえぇそれならぁ明日もぉ皆頑張るよねぇ」


「それで? 賞金は?」


「へ?」


「店長賞なんだから賞金出さないと」

 会長がとんでもない事を言い出す、賞金? いや店長だからって店のお金は……


 ちなみに今回の売り上げは次期生徒会運営費用に充てられる予定だ。


「いや、流石にお金は……」


「お金じゃないよ、お兄ちゃんが賞金って事だよ」


「俺?」


「そうだな、裕が賞金だ」


「うん、それならぁやる気がぁ出るねぇ」


「いやちょっと待って、俺が賞金ってどういう」


「そうね、まあ例えば、何か裕君に出来る事を一つやって貰うとかかな?」


「え、え、エッチな事でも良いんですか? 良いんです!」


「良くない、セシリー、カトリックじゃないのか? その格好でそんな事言うとバチが当たるぞ?」


「大丈夫、わては浄土真宗ですさかい」


「じょ……」


「じゃあ美月は、お兄ちゃまに大人にしてもらおっと」


「やーーーめーーーてーーーー」


「あんちゃんに、やって貰いたい事……なんでも……」

 雫がフラフラし出す。


「し、雫、倒れるな!」


「ぼ、ぼ、僕はエッチな事なんて、よ、要求、エッチな」


「落ち着け美智瑠、先生が言ってただろ、俺が出来る事だ!」


「な、なんだと! 僕とはエッチな事は出来ないって事か!!」


「あああ、めんどくさい、体育会系の負けず嫌いめんどくさい」


「デートでもぉいいのかなぁ?」


「ああ、まあそれくらいなら」


「お兄ちゃん、私が一番を取るから考える必要ないよ」


「いや……まあ」


「じゃあ……き、……ま……」


「あ」


「にいに~~~~~~~~~♡」


「またか」

 今日1日緊張していたせいか? 会長の幼女化は無かったがやはり緊張解けたのか今頃来た。


「じゃあそう言う事で片付けして帰りましょう」


「はーーーい」


「どうでも良いけど、会長のこれに慣れすぎじゃない?」

俺のほっぺにへばりつく会長を尻目に皆が立ち上がり片付けを始める。


「だって今の会長マイナスポイントでしょ? もう戦いは始まってるんだよお兄ちゃん!」


「そうですか……」


 とりあえず1日目は無事終了、あと1日……そしてMVPは誰に

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