51-13 妹の座争奪戦
「で、出来たぞ!」
悪戦苦闘の末2時間掛けてようやく着物を一人で着ることが出来た。
「出来たのは良いけど、また口調が男の子に……」
「あ……、えっと……できた……わよ?」
「どうして疑問形? 出来たよ、とか出来たわ、とかで良いんだよ美智瑠ちゃん」
「む、難しい……着物も言葉も……」
僕は、あ……いや、わたしは今、いとこの家で着物の着付けの特訓と、女の子らしさを出す特訓をしている、あ……、しているの……
従妹正式には義理の従妹の天音、中学3年なんだが自他共に認める着物バカ親の英才教育で着付けは一通りマスターしたらしく、今日は彼女に気付けのレッスンとついでに女子の言葉遣いの練習をお願いしている……していますの……
以前は物凄いコミ障だった彼女だがとある事情ですっかり良くなったらしく今は普通に僕と会話もしてくれる。
「朋ちゃん入って良いよ~~」
「やっと出来た? あ、美智瑠可愛い、似合ってるよ」
「あ、いや……ありがとう……朋程じゃないけどね……」
従兄の朋が部屋に入ってくる……ちなみにどこかの女子の制服……セーラー服を着ているが、れっきとした男、最近すっかり男の娘に目覚めたのか?
前回会った時よりも、さらに磨きがかかり強烈に可愛いくなっている……前から本当にこいつ男の子? って思ってたけど今や彼が男と分かる人は居ないだろう、それくらい凄く可愛いくなっていた……
そうそう、ちなみになんとこの兄妹は付き合っている、付きってると言っても裕と栞とは違いこっちは義兄妹なんだけどね……天音のコミ障が良くなったのも彼の女装のお陰なんだとか? 何度聞いても意味は分からないんだが、どうも男の子は苦手らしいからだそうだ。
しかし……なんだ? 僕は他の兄妹とかよく知らないが兄妹って普通に付き合う物なのか?
「当たり前だよ美智瑠ちゃん、朋ちゃんより可愛い娘なんてこの世にいるわけないよ、ね~~~朋ちゃん」
「そんな事ないよ~~天音の可愛さに比べたら全然、私は偽物だし~~」
「えーー本物以上に可愛いよ~~私なんて朋ちゃんに比べたら月とすっぽんだよ~~ね、あ、月だからまさにルナだね」
「天音はすっぽんなんかじゃないよ、天使だよ、私の天使リン」
「朋ちゃん!」
「天音!」
見つめ合う二人……おーーい僕の存在忘れてないか?
そうそう、今二人がルナとリンって言ってたのは、この二人の出会いがネトゲの中だったらしいから、時々キャラ名で呼んでしまうとの事、詳しくは僕の理想の妹はネトゲの中にいたを読んでくれ……
「えっと……またか……あのさ、のろけは違う場所でやってくれないかな?」
今回は着付けを教わってる手前先に帰るとは言えないんだよ……
「えーーーーだってこの作者ブクマ少ない所はあまり更新しないって言ってる酷い奴なんだもん、ここでイチャイチャしないと私と朋ちゃんイチャ出来ないでしょ」
「そんな事を僕に言われても……」
「また僕って、だから女の子として見て貰えないんでしょ? その裕って人に」
「ううう、そうなんだよ」
自業自得とは言え、元々男友達の相棒だったんだ、そう簡単には行かない。
「でもさ、美智瑠ならそんなしゃべり方でも全然問題無いんじゃないの?」
「僕……私じゃ敵わない奴らが一杯居るんだよ」
昔は外人って言われてたけど、今は可愛いとか言われるので自分の容姿が悪いとは思っていない、思ってはいないんだけど、今の生徒会に居るとそんな自尊心なんて簡単に打ち崩される、本当に自信を無くすよ
「そうなの? 朋ちゃん程じゃないけど美智瑠ちゃんより可愛い娘なんて居るんだ?」
「毎回毎回その朋ちゃん程っていう枕詞を付けないでくれ」
「えーーだって本当の事なんだもん」
「ハイハイ、でも本当にそうなんだ、僕じゃ駄目なんだ、全然裕に振り向いて貰えない……」
「わたし!」
「私じゃ……」
「駄目だよ美智瑠ちゃん、諦めちゃ、絶対に絶対に、私だってなんど諦め掛けたか……でも今はこんなに幸せになってるんだから!」
二人がギュッと手を繋ぐ……うーーん
「えっと……そうだね~~」
この二人……あまり幸せそうに見えないのは僕だけだろうか……
「でも美智瑠が好きだって言っても何も無いなんて、そいつは硬派なの? それとも周りの娘達がよっぽど凄い娘達なの?」
腕を組み頬に指を当てながら朋が僕に向かって言う、この顔で、このしぐさ……なんだ? 朋は本当に女の子になっちゃったのか? 天音ちゃんが言うように僕でもドキドキするほど可愛すぎる。
「裕が硬派なのは否定しない、でもやっぱり妹の栞ちゃんの存在が大きいんだよね」
「そうなの?」
「うん、愛される事に関してはチート級の女子だから、多分裕も……」
「へーー、そんな凄いんだ? その栞ちゃんていう娘……見てみたいな」
「ちょっと~~朋ちゃん浮気?」
「えーー私が天音以外にそんな事を思うわけないよ~~」
「うん、知ってる♡」
「…………」
「どうしたの美智瑠? なんか遠くを見てる様な目で私達を見てるけど」
「うん、そのままだよ、二人が遠い所にいるから」
「私達がラブラブだからって美智瑠ちゃんを置いてったりはしないよ」
「いやもう既に、いや、最初からかなり置いていかれてるけど……」
「でもそういう事じゃなくて本当に見てみたいな、美智瑠のライバル達を」
「来ればいいじゃん、来週の土日だから、チケットあげたでしょ?」
「でも一応私……男だし、女子限定何でしょ?」
「毎年仮装の様に女装してやって来る男が一杯居るって言ってたけど、先生が見た目をチェックして男って分からなければ良いらしい、今年は面子が凄いから先生が気合い入れてチェックするって言ってたけど、朋なら問題無いんじゃないかな?」
「あはははは、朋ちゃんが男認定されたら殆どの女子が男認定されちゃう」
「うーーん、でもボーイッシュな女の子って居るじゃない? それって大丈夫なのかな?」
「なんか先生は匂いで分かるって言ってたな」
「えーー匂いなら私ばれちゃうよ」
「大丈夫先生がチェックするのは怪しい奴だけだから、朋なら疑われもしないよ」
「そうかな?」
「うん、それは保証する」
「じゃあ美智瑠の晴れ舞台を見に行くか」
「朋ちゃんと学園祭デートしに行くね~~」
「うん……じゃあ僕も頑張るよ」
「私! もう全然ダメじゃん、もう~~じゃあ今から私と朋ちゃんで、美智瑠ちゃんの女子力を引き上げる特訓をするから!」
「朋にも……まあ料理も出来るし僕より全然女子力高いしな~~じゃあ頑張るから二人とも宜しく頼むよ!」
後1週間、僕の戦いはもう始まっている。
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