51-7 妹の座争奪戦
「えっと……いいんですか先生……」
「はい! 許可は取り付けました!! あの、山野井先生のお孫さんです! そんな方が当校の学園祭に協力してくださるなんて……ああ、なんて素晴らしい……」
俺は美月に小さな声で聞いてみた……
「サイン本だけにしては気合い入ってるな先生……」
そういうと美月は俺の耳に口を寄せてさらに小さな声で答えた
「えっとね、弥生ちゃまの昔書いてた生原稿を学校に寄贈して、いつか講演もする……かもって」
「え? 婆ちゃん講演片っ端から断ってるんじゃなかったっけ? めんどくさいって」
「うん、だから……かもって、生原稿も捨てようとしてたのを美月が前に貰ったんだよね」
「マジか、婆ちゃん人気作家の自覚ないな……」
「今は全部PCだから凄く貴重なのにね、弥生ちゃま書道の師範クラスで字が凄く綺麗だから、あれって超お宝だよ」
「そうか……そりゃ校長も許可するよな……」
「えっと、それでは許可も下りていると言う事で、山野井美月ちゃんにも、妹カフェのお手伝いをして頂く事になりました」
会長がそう言うと、美月は席から立ち上がり、何処で覚えたのか素晴らしい所作でお辞儀をする。
「山野井美月小学校4年生です、拙い自分ですが精一杯頑張りたいと思います、宜しくお願い致します」
ポカーンと魅入ってしまう一同、さすがに今日はゴスロリではなく制服姿、いや正確には公立の小学校なので制服はない、多分私服のブレザーなのだろう、そんな姿で小学生に美しいお辞儀をされればこういう反応になる。
「美月ちゃん~歓迎するよぉ」
「美月君一緒にやれて嬉しいぞ!」
美月の友達の二人、恐らく今日の事はある程度連絡していたのであろう、美智瑠と麻紗美がそう言うと、他の皆が我に返り拍手をした。
「ありがとうございます」
笑顔でそう言うと美月はもう一度お辞儀をして俺の横に座った。
すっかり人当たりが良くなった美月、何があったのか、前から知識は大人よりも凄かったけど、この1ヶ月で急速に性格も大人になった気がした……それはそれでまた怖くなったと言う事なんだろうけど……
「えっとでは、これからの予定を決めましょう」
そう言うと美智瑠が立ち上がり各々の意見をホワイトボードに書き込んで行く。
美月が加わった事で、計画や予算が見る見るうちに決まって行く、特に今まで考えて居なかった恐らく出来るであろう行列やその対処まで言及する……やっぱり凄い子だよ……
そしてそろそろお開きになろうかと言う時にやっぱり来ました、小学生の前でもお構い無しです。
「に~~~~い~~~~に~~~~」
「ああ……またか……」
俺の首に抱きつき、ほっぺにキス……ハイハイ
「お兄ちゃまが言ってたのはこれか……」
美月がぼそぼそっと言う
「どうなんだ美月これって」
「うーーん、フラッシュバックの一種なのかな~~」
「フラッシュバック?」
「うん、凄く辛い体験や事故の記憶が突然甦ってくるって奴」
「辛い体験……」
「そのショックを和らげようとしているのかも」
「どうすれば?」
「お兄ちゃま嬉しそうだし、そのままさせとけば~~」
「いやいやいやいや」
「ストレス解消になってるんでしょうけどね……ただ」
「ただ?」
「他にストレスを貯めている人がいるからそっちのケアをしないとね~~」
俺はそう言われ妹を見る、うわーーーー溜めてそう……
いつも隣なんだが今日は美月が居るので少し離れた所からこっちをジト目で見ている妹、しかも今日は美月が泊まる事になっている……
「美月も他の皆もだけどね~~」
ううう……そんな事言われても…………
俺は恐る恐る全員を見渡す……あれ? そう言えば、全然発言もしなく、雫より存在を感じなかった奴が一人…………
「えっと……セシリー、大丈夫か?」
「あ…………わての事覚えててくれはりましたか……」
どよーーんと沈んでいるセシリー、いつもの明るさは全くない。
「ど、どうした?」
「わての扱いが……どこもかしこも雑で……もうわて……要らないんじゃないかなって……」
あ、ヤバい本気で落ち込んでる。
「そ、そんな事ないぞ! セシリーには女子の気持ち、特にこういうイベントじゃあ、オタク女子の気持ちを考えて貰わないと!」
「そ、そうでっか?」
「ああ! セシリーが居ないとこの企画……成功しないぞ!」
「せいこう……」
「いや成功な、平仮名は止めて、いやちょっと待て、漢字にもしないで」
「分かりました! わて頑張ります、お兄様の為に一肌でも二肌でも脱ぎます、全裸になります! お兄様と一緒に、せいこうしますううう!!」
そう言うとセシリーはスカートのホックを外しチャックをおろしってやめろおおおおおおおおおお!
俺は慌てて目を瞑る、一瞬黒い物が見えたけど……周りがドタバタとセシリーを取り押さえようとしている音が……
あああ、もう一体どうなるんだ! 学園祭までたどり着くのか?
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