46-7 葵の行く末


「那珂川 蛍を知ってるのか?」

 俺は慌てて確認をした、本当に知っているのかと


「ええ、ケイとは同級生だったですわ、スイスのボーディングスクールで」

 真剣な顔の俺を見てセシリーが真面目そうな顔になった。


「同級生?」

 あれ確かセシリーって15歳じゃなかったっけ? にいにと会長は年が2つ違ったはず……にいには高3か大学生だろ? なのに同級生?


「ああ、わて、中学の時に、えっとなんでっしゃろか……Advanced Placementしたはって」


「あどば?」


「飛び級よお兄ちゃま」


「ああ、なるほど」

 ああ、また頭のいいやつが……まあでも……海外じゃ普通にあるからな、俺も美月が飛び級すればと思ったし、多分婆ちゃんもそう考えていたんだろうな。


「そこでケイとは知り合ってな~~、わて、日本のアニメ大好きでな、色々聞いてたんよ、まあケイは最初はわての事はあまり相手にして貰えんかってんやけど」


「それで?」


「ええ、日本でえらい災害があった時な、酷く落ち込んでたはんで……大丈夫か聞いたんでっせ、したら親も妹も死んじゃったって……写真片手に涙してはった……」


「そうか……」


「自分も日本に行くと言ってたけど、家のもんに止められたそうで」


「家の者?」


「ケイはウインザー家の子供デースからね、そんな危険な時に行かせられんって」


「ウインザー家?」

 なにやら聞いた事のあるような、ないような、そう思い美月を見ると……美月が固まってる?


「美月?」


「お……お兄ちゃま……美月が思ってたより全然違ったね……美月は子爵くらいの人だと……」


「子爵? ああ、オペラ座の怪人だもんな」


「そんなもんじゃ……なかったね……」

 美月がビビってる……そんなに凄い家なの?


「えええ? そうなの?」


「へえ、ケイはちゃんとしたら、身分的に確か王位継承順位が28番目? だったデースかね」


「王位継承…………へ?」

 なにそれ、意味が分からない……え、にいにって王子様なの? じゃあ会長はお姫様?


「ただ~、お母様のスキャンダルや、そもそもお母様自体が隠し子的なやーつ? だったんで、ケイも今のところ公には発表されてないですね~」


「そんな事まで、それにしても偉いこと詳しいな、付き合ってたのか?」


「いえいえ、男の子~には興味あらへんで、あ、男の娘~なら少しは」


「聞いてないよ!」


「いや、ケイの妹さんが偉いこと可愛くてな、写真見せてもろた時に……こんな可愛い娘が死んじゃったなんて考えたら泣けてもうて泣けてもうて、勿体ない勿体ないって、それを勘違いしたんでっしゃろか? それからケイとはちょくちょく話しさせてもろてん、いや生きていてくれたとは~~、アオイちゃん、食べていい?」

 セシリーそう言うと、舌なめずりをしながら会長を見る、会長は眠い目をしてボーーっとしていたが、セシリーのなんとも言えない視線を感じ、慌てて麻紗美の後ろに隠れた。


「ダメだよ、なるほどな、じゃあ早速連絡して解決……」


「へえ、どうやって連絡するん?」


「え、電話で?」


「番号しってはるのか?」


「知らないの?」


「わては知りまへん」


「じゃあ学校に」


「家族以外は繋いでも貰えないで?、各国のVIPのご子息、ご令嬢が集まってますから、一応わてもVIPです!」


「そうか…………えっと……じゃあ家族に連絡をして」


「どうやって? ウインザー家にコネでもおありで?」


「あるわけないだろ……え? そうか俺達だと出来ないのか……」


「そうだすな~~」


「じゃあセシリー……お父さんに頼めないか?」

 大使ならそう言ったコネもあるんじゃないのか?


「うーーーん出来るかと思うけんど、どなたに言うんで?」


「どなたって、今現在のにいにの家族、ウインザー家? の誰かに」


「ケイの信頼出来る家族ってどなたどす?」


「え?」


「うん……そうだねお兄ちゃま、にいにの家族は皆死んだって報告した人がウインザー家の中に居るって事だよ」



「……どういう事だよ?」

 なんでそんな事をするんだ、そうだよ、いったい誰が……酷すぎる……


「スキャンダルの発覚を恐れてか、継承問題か、でも一番は多分…………相続かな?」


「な!」


「一人増えれば誰か損をするんだろうね、それでだろうね」


「だったらケイはなんで!」


「うーーん、まあまた美月の想像なんだけどね、多分信頼出来る人に先に知らせてたんじゃないのかな? 例えばにいにのお母様が知らせていたとか、『スイスに留学に行かせたい、いい学校なんで協力お願いします、あと何かあった時はよろしく?』とか?」


「そうか……VIPの行く学校に居たって事はそういう事だよな、でもじゃあ、それが誰だか……」


「うん……今は分からない、その人にたどり着く前に知られたら……」


「葵が……か……」


「うん……危険だね、今まで良く平気だったね」


「……そうか……副会長はにいにから隠す為じゃなかったって事か……」


「うーーん、まあ多分両方かな?」


 しかし、じゃあ一体どうすれば…………


「そうだよ、直接行けば!」


「うん、無理だすね、電話で取り次がない者を直接取り次ぎでけるわけないでっしゃろなーー」


「そうか…………じゃあ、セシリーが行けば……」


「お兄ちゃま、さすがにそこまでは」


「えっとな~~じゃあ栞ちゃんくれるなら考えても~~なんて?」


「ふ、ふざけんな~~~~絶対にダメだよ!!」


「お兄ちゃん!」

 妹が満面な笑みで俺を見つめる、そりゃダメだよ、当たり前だろ!!


「じゃあ、美月ちゃんは」


「ダメだよ!!」


「美智瑠ちゃん、麻紗美ちゃん、アオイちゃん」


「ダメダメ、絶対にダメ!!」


「お兄ちゃん……」

 今度は妹ががっかりした顔に…………だってええ


「じゃあしゃーない、先生で」


「えっと……」


「おい!」

 先生が俺に突っ込む、えーーーだって誰か選べって言われたら、そりゃ成人の人でしょ……見た目小中学生でも……大人だもん、自己責任で……



「まあ、冗談でっせ、そもそも時期が悪い、ちょっと前なら夏休み~~スイスに旅行に~~って行けたかもだすが、さすがに今スイスに行くゆうたら、親に許可を得ないと、わて、お嬢様ですさかいに、一人で行く事も出来ないし」



「そうだよな~~まさか正直に言う訳には行かないしな」

 こんな喋りをしているから忘れがちだが、この人超VIPだからな~


 だったら一体どうすれば……場所までわかったのに……


 にいに探しは再び暗礁に乗り上げた。





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