43-2 夏休みラストスパート
「普通……普通ってなんだろう……」
「お兄ちゃん~~早く行こうよ~~」
「ああ、うん」
昨日普通のデートをしようと言ったものの、普通のデートってなんだろうという事を妹から言われる。
普通のデート、普通の高校生が普通の彼女と普通のデートをする……
俺と妹は普通の関係じゃない……妹は普通の女子高生ではない、そもそも普通ってなんだ? 平均値? 人間なんてそれぞれだ、考え方も全然違う、それで平均ってなんだ?
そもそも俺って普通と思ってたけど……
そんな事をずっと考えていたらいつの間にか寝てしまっていた。
そして翌日、朝から妹に叩き起こされ、家を出る。
普通のデートをしに行くと……でも普通ってなんだろう。
「もう、お兄ちゃんまだ悩んでるの~とにかく出掛けようって事にしたでしょ~~早く行こうよ~~」
「ああ、うん」
とりあえず何も決めていないけど、家を出て駅に向かう、妹は最近周りを気にせずに俺の腕に捕まる……まさか学校行くのもこうじゃないだろうな? 一抹の不安が頭をよぎる。
本日の妹のファッションは、チェック柄の七分袖シャツ、グレーのカットソーロングスカート、サンダル状のヒールを素足で履き、ピンクのペディキュアを塗っている、頭には大きめのフレンチハットの帽子を被り、耳にはハートのイヤリング、いつも薄化粧なんだけど、今日は薄いピンクの口紅がやたらと目立つ感じがする。
いつもより若干大人っぽいイメージだ。
「とりあえず、朝ごはんを食べようお兄ちゃん」
「いいけど、どこへ?」
「うーーんそうだな~~じゃあちょっと豪華にしよう」
「豪華?」
「ホテルで朝食~~」
「ホテルで?」
「うん、景色の良いホテルで朝食バイキング、といってもそんなに高い所じゃないよ、ネット見てたら見つけたの、そこに行こう」
「へーーい」
一瞬超高級ホテルを想像したけど、普通のデートじゃないよなと……
####
某駅から徒歩数分、シティホテルの最上階、東京や果ては富士山まで景色が一望、値段は1500円位とそこそこだが、ホテルの朝食としては安い。
料理は比較的良くあるメニュー、卵にソーセージにと定番メニューが並ぶ、場所柄出張とかの比較的年配者の宿泊が多いのか? 若干漬物やお惣菜が多い感じがする。
俺は和食にして適当に皿に盛り窓際に座る、妹はパンにスープにオレンジジュースにサラダとヘルシーメニュー
「良く見つけたな、景色が凄くいいじゃん」
「うん、ネットで見たんだ、メニューは普通っぽかったんだけど、景色がいいって書いてあって、お兄ちゃんと来たかったの~~出来ればお泊まりして、朝はここで、えへへへへへへへへへ」
「おーーーーい……、朝からか……」
いつも通りに妄想の旅に出る妹を見つつ、味噌汁を飲む……まあ……ある意味普通だよな~~
外を眺めつつ、朝食を食べる……普通であり、非日常であり……か
「えへへへへへへへ、でもお兄ちゃんとの初めては…………高級ホテル…………ベットの上で……モーニング……えへへへへへ」
妹はすっかり妄想の世界に入り込んでいた、これもある意味日常であり非日常であり……
「おーーいスープが冷めるぞ~~」
「は! い、いただきま~~す、スープがあまり温かくないな~クロワッサンはおいひい」
パンを頬張りながらニコニコしている妹、可愛いな~小動物が餌を食べている感じがして、いつも見ているが飽きない。
「スープは栞のせいだよ」
「えーーーー」
えーーーじゃないよ、どのくらい妄想の旅に出てたか自覚してないんかい……
ご飯を食べ終えフルーツを少し持ってきて食べ、コーヒーを飲む
すぐ側を電車が通過していく、玩具の電車の様なその景色を眺めていると不意に妹が俺に聞き始めた。
「お兄ちゃんて、私と一緒にいて嫌じゃない?」
「へ?」
唐突に真剣な顔で聞いてくる妹に少し同様した。
「私が付き合ってって言わなければ、前と同じ生活で、私とこうやって出かける事もなかっだろうし、好きな本を読んでのんびりした生活が出来たのかなって……」
「ああ、まあ……それはそうかもな」
俺は苦笑いをしてそう答えた
「ごめんね……お兄ちゃん」
シュンとした表情になり謝る妹に俺は笑顔で答える。
「でも、嫌なんて思った事はないよ、栞と一緒にいて楽しいし、ドキドキするし、ワクワクもする、中学迄は味わえない体験をこの半年足らずで経験出来て凄くよかった、これは本を読んでるだけじゃ体験出来ない事だからな、だから、栞、ありがとうな告白してくれて」
「お兄ちゃん……」
「普通のデートって言われてさ、普通ってなんだろうって考えたんだけど、中学迄は多分俺と栞は普通に近い関係だったんだろうけど、4月からは、全然普通じゃくなったよな……、栞は俺に告白するし、俺はそれを受け入れるし、そしてそこから今まで本当に毎日の様に非日常な事が起きて、今も今までの関係じゃ絶対にやらない事をやっていて、もう今さら普通になろうなんて無理なんだよな」
「…………」
妹は若干戸惑いの表情を見せる。
「でもそれが苦痛なんて思った事はない、まあ多少疲れる事はあっても毎日が刺激的で凄く楽しいよ、今さら元に戻るなんて無理だし……、嫌だよ……、だから普通じゃない今を、これからも栞と一緒に過ごしたいな」
「お兄ちゃん…………ありがとう……嬉しい……」
栞が少し涙ぐむ、でもすぐに笑顔になり俺を見つめる、可愛いな……俺の、俺だけの妹……
「だから、普通じゃなくていいから、楽しいデートをしよう、昨日栞が言った夏休みのラストスパートをさ」
俺がそう言うと、栞が驚いた顔をした、そして
「つ、つまり……お兄ちゃん遂に……」
「は?」
「私と……ひ、ひと夏の経験を……お兄ちゃん!!!待ってて、今からこのホテルで泊まれるか私!!!聞いてくるううううううう!!!!!!!!」
「ちょ……ちょっと待て、そう言う意味じゃ、おーーーーーい、栞いいい!!」
俺は走ってレストランを出ていく栞を慌てて追いかけた。
ちなみに料金は前払いですので……
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