43-1 夏休みラストスパート
「お兄ちゃん!」
「ほい?」
「家でイチャイチャと、外でイチャイチャどっちがいい?」
「…………」
「もう夏休みも終わりだし、私とお兄ちゃんの関係もラストスパートしないとね」
「えっと……いや、ほら高校1年の夏休みだろ、宿題をやらないと、延々と夏休みを繰り返すんだぞ、いやすでに今15532回目かも……」
「あと8回夏休みやれば終わるんじゃない?」
「それでも宿題は終わらない……」
「あ、お兄ちゃん宿題は今日私がやっといたから」
「は?」
「数学とレポートと感想文が残ってたからやっておいたよ~~」
「また部屋に…………いや、いい……それはもう諦めた……」
「誉めて誉めて~~~」
「………………」
麻紗美の家から帰ってくると、妹は玄関で待ち構えていた……なに? 俺が帰るタイミングとか分かるの? それともずっとそこにいるの?
そのままリビングに連行される……そしてこの調子……まあ覚悟はしていたが。
「えっと、じゃあ、ありがとう……でも、ほら、書き直さないと……字でバレちゃうでしょ?、だから……」
「え? 大丈夫だよ、お兄ちゃんの筆跡で書いたから」
「は?」
「私、お兄ちゃんの筆跡で字が書けるの、最近ずっと練習してたから大丈夫だよ~絶対に分からないレベルで書けるから~」
「えーっと……なんの為にそんな技術を?」
え、なに? 怖いんですけど、なんか契約書とか書かれたりしても分からないって事? 妹なら筆跡鑑定クリアするレベルなんじゃね?、一体なぜそんな事を、何が目的で……
「お兄ちゃんからラブレターを貰ったっていう感動を味わいたくて、自分で書いてたの~~えへへへへへへ」
「………………そうですか……」
麻紗美と話して再認識したんだけど……、妹はとんでもない位の能力の持ち主なんだよな……、でも……どうして俺の事となると、こんなポンコツに……
妹にバレないようにそっと涙を拭う……不憫な妹よ……
「だからお兄ちゃん! 私と気兼ねなくイチャイチャしていいんだよ~~、さあ、お兄ちゃん、高校1年の夏休みはこれが最後なんだよ! もう二度とないんだよ! 私とひと夏の経験をしよう!!」
「そりゃダブらない限り1年の夏休みは二度とないけど……、ひと夏の経験って……、何をするんだよ?」
「いやん、お兄ちゃん、何をなんて……エッチ……でもお兄ちゃんが望むなら……私……どんな事でも……」
「いやいやいやいや」
妹は俺の前にひざまつき、太ももに手を置き下からうるうるした瞳で見上げ言った……
「お兄ちゃん、私お兄ちゃんが望むなら、どんな事でもする覚悟があるから、心の準備は、いつでも出来ているから…………ね」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」
「たとえお兄ちゃんが私を(自粛)しても、(自粛)で、(自粛)しても、私は笑顔で受け入れるから、いつでも言ってね……お兄ちゃん」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、しないから、絶対にしないから」
「ええええ、でもお兄ちゃんが一冊だけ大きめの本の間に挟んで隠してた、薄い漫画の本を読んで、私……覚悟を決めたの……、お兄ちゃんが望むなら……それも受け入れようって」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、て言うかまたバレた……隠さないで置いてあるっていうカモフラージュもダメだったか……」
今回は行けると思ったのに……肝心な物だけ隠すっていうのもダメだったか……
「ああ、そうか、お兄ちゃんはこういうのじゃあダメなんだね、えっと……、じゃあ改めて言い直すね」
妹は一つ咳払いをして今度は俺の足にすがり付く様な体勢になる……そして
「あの! あの同人のように……、あの同人のように私に、私に酷い事をするのね……でも身体は奪われても、心までは奪われないわ、さあ、私を……お兄ちゃんの好きなようにしなさい……覚悟は……出来ているわ……」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」
「えーーーーー、そこはこう、へっへっへっへとかいってゲスな笑い方をしながら私に迫って来ないと~~~」
劇おこプンプンな顔で俺を見るってなんだこれ?
「何ですか栞さん、何で突然こんなプレイをし始める……」
「お兄ちゃんの好きなシチュエーションで、ひと夏の経験ゴッコ?」
「好きじゃないし、そんな経験はしたくありません!」
「じゃあ……、素敵な経験にしてくれる?」
「うーーーん、素敵ね~~、でも思ったんだけど、俺と栞ってさ~、なんかまともなデートってしてないんじゃない?」
「まとも?」
「そう、必ず何か起こるじゃない?」
「ああ、うーーん、そうだね~~何でだろうね~~」
遠い目でどこかを見ている妹……
「どこを見てる?」
「ううん、ちょっとね……何でもない、それで?」
「だから、何て言うか、一度はこう、高校生らしい普通のデートを最後までしてみたいかなって」
「それは私に言われても~~っていう感じなんだけど、言いたい事はわかるよ、お兄ちゃん」
「まあ、一度は間違いなくセルフ下着ファッションショーを開いて風邪をひいた栞のせいでもあるし」
「ううう、ごめんねお兄ちゃん、今度はお兄ちゃんの前でするからね」
「しなくていい……だから、こう原点回帰って言うか、普通の、普通の高校生らしいデートってものを、最後までしてみようっていうか、してみたいっていうか、本当頼むよ……」
「お兄ちゃんどこ向いて言ってるの?、でもそうだね、もう私達夫婦みたいな物なんだから、デートって言う特別な感じではなくて日常っていう感じで、どこかに行くっていうのもありかもね」
「夫婦ではないけどな、でも、まあそんな感じ? 非日常な夏休みから日常に戻る練習も兼ねて」
本当この夏休みは特別過ぎた……もうじき始まる学校生活に戻るためにも、一回リセットした方がいいと思うんだよね、ラストスパートするより、日常へのウオーミングアップ?、夏休みのクールダウン? そういう事をした方がいいと思うんだけど。
「うん、お兄ちゃんそれいいかも、普通のデートいいね!、いいよ、普通のデート!…………で?」
妹が賛同した後に首を傾げる。
「で?」
意味がわからずに聞き返す、なにが、で?、なの?
「……お兄ちゃん、普通のデートって……何をするのかな?、どうすれば普通に終わるデートって出来るの?」
「…………………………………………さあ?」
普通じゃない事ばかりだったので、わかりません……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます