41 甘えて!!


 美智瑠を最寄り駅迄送り帰宅の途につく。


 そこそこ遅い時間になってしまった……夕方に美月から長野に着いたとラインが来ていた、妹が何処まで送ったか分からないが、恐らくもう家に居るだろう、あまり時間が遅いと、またあらぬ疑いがかかってしまう……


「なんか浮気している旦那の気分だ……」

 明日は麻紗美の家に呼ばれている……本当にハーレムじみてきたんだが……

 ハーレムを作る気なんて毛頭ない……だれか絶対に選べと言われれば妹を選ぶ……と思う……多分……


 でも妹はあくまでも妹で恋人ではない、でも俺の中で一番大切な人……

「本当になんなんだろうな俺って……」

 はっきりと言うべきなんだろう……いや言ってはいる、妹が一番と……でも高らかに妹と恋人宣言をしてはいない……出来ない……


 それが一番の原因……、いや一番の原因は俺の覚悟なんだろう……


 人を傷付ける覚悟……妹と共に進む覚悟……


「高校1年でそんな覚悟出来るか!」

 激動の高1、半年前まで中坊だった俺が、人の人生背負う覚悟なんて出来るわけねえ~~


 考えながら歩いていたら、すでに家に着いていた。

 家の玄関でぶつぶつ言ってる危ない奴がいる…………俺だ!


 俺は首を振り変な考えを払いのけ、家の扉を開けた。


「ただいま……あれ?」


 電気もエアコンもついていない?、いつも不在がちな両親は分かるが妹の気配もない……



「帰ってない?、靴はあるよな?」

 脱いで揃えられている妹の靴がある……寝てる?


 とりあえず2階に上がり自分の部屋の扉を開ける


「…………」

 俺の部屋のエアコンはついていたが明かりは点いていない……でもうっすら見える……ベットの上で夏用の掛け布団にくるまっている丸い物体が……


 明かりを点け部屋に入り、ベットの脇に立つ……


「おーーーい」


「にゃああん」


「…………」


「おーーーーーい」


「にゃああああん」


「おい、おい、おーーい」


「にゃん、にゃん、にゃあああん」


「にゃああああん」


「おーーーーーい」

 妹が答える……俺の事をからかってるのか?


「斜め七十七度」


「にゃにゃめにゃにゃじゅうにゃにゃど」




「……何してるんだ?」


「布団にくるまってお兄ちゃんの匂いを吸って鋭気を養ってるにゃ」


「…………うりゃあ!」


 俺は一気に布団を剥ぎとると、ふわふわパジャマで丸まっている大きな妹猫がそこにいた……


「うにゃああああ」


「うにゃあじゃない……」


「お兄ちゃんの匂いがなくなるにゃああ」


「にゃああじゃない」


「お帰りにゃ」


「ただいまにゃ」

 ベットに腰掛け妹の頭を撫でる、ゴロゴロとのどを鳴らす妹……本当に猫みたい……可愛い……


「お兄ちゃん、美智瑠ちゃんとは楽しかったかにゃ?」


「あ~、まあ……そこそこかな?」



「ううううう、ワン!」


「今度は犬か!」


「明日も麻紗美ちゃんとデートずるいワン!」


「だって栞が決めて来たんだろ? みんなと話したって」


「だって、あの二人が私達ばっかりずるいって……そんなんだからお兄ちゃんは恋愛に疎いんだって……」



「そんなんだからって……」

 なんだそりゃ、悪かったな恋愛に疎くって、酷い言われようだ……


「私は我慢してるんだからご褒美がほしいワン!」


「なんでだよ……うーーん、ご褒美ね~、何をすれば良いんだ?」


「えっとね……、お兄ちゃんに甘えたい……ううん、そうだ!、お兄ちゃんが私に甘えて!!」


「………………は?」


「私がご褒美って言って、お兄ちゃんに甘えるっていうのはワンパターン過ぎると思うの、やっぱり新鮮な事をしていかないとね、倦怠期になっちゃう」


「えっとよくわからんけど…………俺が甘える?」


「そう、お兄ちゃんが私に甘えるの」


「…………やだよおおお、俺が栞に甘えるってなんだよそのプレイ?」


「ほらゆう君ママでちゅよ、おっぱいのみまちゅか?」


「服を捲るな!、やだよおおお、なんだよそのおっさんが喜びそうなプレイは」


「えーーー、じゃあ赤ちゃんじゃなくて良いから、お兄ちゃん私に甘えて~~~」


「やだよ恥ずかしい」


「え~~、うーーーん、ああ! じゃあお兄ちゃん耳掻きしてあげる」


「えーーー自分でやってるからいいよ~~、それこそなんかプレイじみてるし、恥ずかしいし……」


「いいでしょ、お兄ちゃんお願い! 耳掃除させて~~」


「う~~ん、まあ、それくらいなら……いい……のか?……」


「やったあああ」

 そう言うと妹は部屋から出て行き、フワフワが付いた竹の耳掻きと綿棒を持ってくる。


「はいお兄ちゃん」

 ベットに座ると太ももをポンポンと叩く……やっぱり膝枕もセットか……ていうか、前から思ってたが、膝枕じゃなくもも枕だよな~~


「えっと……じゃあ……」

 妹の太ももに頭を乗せる……太もも枕……少し固めの枕って感じで意外と好き。


「お兄ちゃんちょっと頭を……そうそう、見えたお兄ちゃんの! お兄ちゃんの中が見える! 見えるよおおお!!」


「何! 変な言い方しないで……」


「動かないでえ、えへへへへへへまた新たなお兄ちゃんが見れた、えへへへへへへ」


「この状態でトリップしないでくれよ……、怖いから」


「はーーい、じゃあ動かないでね~~ってお兄ちゃんの耳のなか綺麗……つまらない~~~」


「そりゃだって自分でやってるもん」


「やだあああ、これからはお兄ちゃんの耳掃除は私がやるからお兄ちゃんはしちゃダメ」


「えーーーーー」


「あ、でも少しはある、えへへへへ」


「うひゃひゃひゃひゃああああ」


「動かないでってばああああ」


「くすぐったい、うひゃひゃ」

 やべえ、凄く……くすぐったい


「ほらお兄ちゃん、じっとしててね~~危ないからねえ~~」

 危ないと聞くと、ついじっとしてしまう、くすぐったいけど……でも……少し気持ちよくなってきた……妹よ上手いな、まさか変なバイトしてないよな?……


「はーーい、いい子ですね~~」

 うーーん、なんか……良いかも、俺専属妹耳掻きエステ?


「仕上げに綿棒でコショコショっと、ああ終わっちゃった~じゃあお兄ちゃん反対ね」


「反対?」


「うん、反対側だよ」

 そう言えばよくマンガやテレビでも耳掻きのシーンとか見たことあるけど、必ず外側を向いてるよな、でも耳って反対側にもあるんだよ、つまり……

 俺は寝返りをうつように身体を入れ換える…………うわわわわわわわ


「はーーい、いい子ですね、動かないでねえ~~、あ、こっちは少しあるねえ」

 左耳は利き手の反対側なんで少しやりにくいせいなのかな? ってそうじゃない、今の俺の態勢……目の前に妹のお腹が……そして、凄く良い香りが……


「こっちはやりがいが少しあるよ!、お兄ちゃん!」


 恥ずかしくなって目を瞑る、でも……ああなんかいい匂い……凄く心地いい、そう言えば昨日美月の攻撃であまり寝てなかった……


 俺は心地良さと睡魔に襲われ、ウトウトしてしまう……


「お兄ちゃん、気持ちいい?」

 凄くいい、なんかさらに眠気が……


「お兄ちゃん、寝ちゃった?」

 妹の声がだんだん遠ざかっていく……眠い……


 あれ、なんか……さらに凄くいい香りがする……夢って匂いするっけ?、いや妹の香りだよな……、妹ってこんなにいい香りがするんだ…………あれ、何か今……




 凄く柔らかくて、いい香りのするものが……唇に触れたような……





 そして、遠くから、妹の声が微かに聞こえる……






「寝込みはファーストキスじゃないんだよね?…………お兄ちゃん…………」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る