39-5 裕の凄さ


 「あっはははははは、美月はそんな事で悩んでいたのか、ばっかだな~~」


「バカ! 美月バカなの?」


「うん、美月はバカだな……」

 あはははと笑いながら美月の髪を撫でる、サラサラとした長い髪が指の間を抜ける。


「ええええええええ、どういう事お兄ちゃま」

 美月が俺の胡座からずり落ち、そしてくるりと半周周り俺の膝の上に手を起き俺を見つめる、動きが子犬みたいで可愛いな~~


「あのな、まず一つ、俺は妹に見続けられているんだよ、まあ最近知ったんだけどな、そのもう何年も見続けている妹が俺を好きって言い続けてくれる、凄くないか?、もし美月が俺の全てを知って俺を嫌いになったなら、妹に言ってくれ、栞は俺を過大評価しすぎてるんだから」


「お兄ちゃま……、でも……それだけじゃないの、お兄ちゃまの本心が……本当の心がわかったら……例えばもう美月の入り込む余地がないとか分かったら……、お兄ちゃまの事を知るのが怖い」


「あーー、うん……、でもそれもな、美月はわかってないんだよ」


「わかってない?」


「そう、美月は理系だからな……そうか、うん美月はもっと文系の勉強しないとな、弥生さんがいるんだから」


「え?」


「元来人の気持ちなんて揺れるし変わる、俺は栞がさっきまで一番好きで一番大事だと思ってたよ、でも今美月を前にしたら美月は可愛い、大好きって感情になる、人の気持ちって揺れるんだよ、そして変わる変わり続ける、答えは一つじゃないし数学とは違うんだよ」


「俺を見続けて結論を出しても、その数秒後にはその答えは変わっているかも、数秒後じゃなくても数年後には全然違う答えになっているんだよ、だからな、全然見続けて構わないよじゃない、俺はなんとも思わない、そして美月の出した結論を完全否定してあげるよ」


「お兄ちゃま……」


「美月のその人の中を見る能力は凄いよ、人を理解しようとするってのは良い事だよ、でもね100%その人を理解するなんて、できないんだよ、だってその人自信、自分の事を100%理解出来ている人なんていないんだから、だからどんどん俺を見て理解してくれて良いよ、俺も美月を理解する努力をする、お互いがお互いの気持ちを理解出来れば、凄く良いと思わない? 悪いところがあれば指摘してくれ、そうすれば直す事だって可能なんだよ……、だって人は変われるんだから」



「人の気持ちは一つじゃないって事……そうか……そうだよね、そうなんだ!!」


「そうだな、一つじゃない、気持ちなんて一つな分けない」


「うん! お兄ちゃま!!!」


 美月は俺の胸に飛び込む、勢い余って後ろに倒れこむって後ろは布団だよ、ダメだって~~~


「お兄ちゃま、お兄ちゃま、お兄ちゃまはやっぱり凄い、お兄ちゃまは天才」


「ちょっと美月、まあいいか、あのなこれに限っては俺が凄いんじゃないよ、美月がまだ子供って事だよ」


「うん、美月はまだまだバカなんだね、もっともっと勉強しないとね」


「いや、勉強とかじゃ無いと思うんだけど……、まあ人生っていう勉強かな?」


「お兄ちゃま~~大好きい~~~」

 胸に顔をこすり付ける、今度は子猫のようで超可愛い、なにこれ飼いたい、飼っていい?


「でもお兄ちゃま、それじゃお兄ちゃまは延々誰も選ばないって事になっちゃうよ、長谷川ハーレムでも作る気なの?」


「なにその微妙なネーミング、作らねえよ!」


「美月は愛人さんでもいいよ~~」


「やめなさい、小学生の愛人とかどんだけ終わってる……」


「じゃあ正妻の座は美月で」


「ハイハイ、どっちにしろまだ高1年だぞ俺、そんな事決められるわけないだろ」


「美月もお兄ちゃまと結婚出来るまであと7年も先だしね~~」

 


「ずいぶん先の話しだな……じゃあ、こっちの小学校に転校って事でいいな?」


「……ううん、美月ね明日向こうに戻るね」





「…………え?」





「美月明日で夏休み終わりなの、だから明日向こうに戻るね」


「な、何でだ?、俺は大丈夫だよ……、栞も、それなのに……帰るのか?」


「ううん、帰るんじゃないよ、向こうに行くだけ、ここが美月の家だよ」


「え?向こうにわざわざ帰らなくても手続きとかは全部やってくれるぞ?」



「違うのお兄ちゃま、美月は帰るんじゃないの、向こうに行って来るの、そして戦って来るの」


「戦う?」


「そう、皆の事を変えてくる、変えられたら美月の勝ち、そしたらこっちに帰ってくるね」


「えええ?」


「お兄ちゃまが言ったでしょ人は変わるって、美月はそう思わなかった、でも言われてみればそうだよね、だから美月は逃げない、相手が傷ついても言ってあげる、……変えてあげる」


「美月……」


「お兄ちゃま……ありがとう……、そんな悲しそうな顔してくれて」

 美月は涙ぐむ、俺も……


「大丈夫、美月だよ、お兄ちゃま、すぐに皆を変えてくるから、そうしたらこっちに帰ってくる」


「いや…………うん……そうだな美月なら直ぐだな」

 嫌だ、という言葉を飲んで、何とか送り出す言葉を発する。


「それに海外じゃないんだから、直ぐに帰って来れるよ、電車で数時間なんだから、お兄ちゃまと離れて1000怖くなるだけ……」


「うん、俺も1000位寂しい、けど我慢するよ」

 美月と半月も満たない生活でこんなにも寂しくなるなんて……



「お兄ちゃま、美月に……最後に怖さを0にしてくれる」


 0?……えっと0って……ええええええええええええ



「お願い、お兄ちゃま……、美月に勇気を下さい……」

 美月はそう言って、ブラウスののボタンをって……おいおいおいおいおいマジか!!



「美月!!!!」

 俺は美月をそのまま抱き締める、思いっきり抱き締める……!


「ぐえええ、お、おにいじゃま……」

 俺の中に入れる位、同化する位抱き締める!!!!


「お、おにいじゃま、ぐ、ぐるじい」


「美月、美月、美月!! どうだ! 0だろ、一つになっただろ」

 ギリギリと美月の身体から音がするくらい、強く強く抱き締める!!!!!


「うん、なっだ、おにいじゃま、なっだよ、ぐえ」

 やばいかな? これ以上したら美月が潰れる……俺は美月をそっと離す


「はあああああああああ、お兄ちゃま!! 美月を殺す気!!」


「美月が社会的に俺を抹殺しようとしたからな!」


「もう最後がこれじゃ色気がないよう」


「小学生が色気を求めるんじゃないよ……じゃあ、ほれ」

 俺は美月の首筋にキスをする……これなら社会的に抹殺されないよな?大丈夫だよな?……


「ふええ、…………もうお兄ちゃま本当にヘタレだね、最後は唇でしょ」


「だって最後じゃないんだろ、直ぐに帰ってくるんだろ?」


「ふふふ、そうだね、じゃあいいか」

 美月は笑顔で俺を見る、もう涙はない。


「明日送るからな」


「いいよ、お兄ちゃまは明日デートでしょ、お姉ちゃまに送って貰う」


「そんなの延期して貰う、それにまだ約束もしていない」

 今夜電話がかかってくるって言ってたからまだ何も決まってない……


「ダメだよ、美智瑠ちゃんも、麻紗美ちゃんも楽しみにしてるんだよ、美月の友達を泣かさないで」


「友達?……美月……友達になってくれたのか?!」


「うん、二人とも美月の親友だよ、お兄ちゃま……ありがとう、だからお願い……ね、美月お姉ちゃまと二人で話したい事もあるし」


「そうか……わかったよ、向こうに着いたら電話しろよ」


「うん、電話もするし毎日ラインも送るね、既読スルーしたらダメだからね」


「それじゃ延々終わらないじゃないか」


 俺と美月は思いっきり笑うと再び美月は俺に抱きつく、今度は俺もそっと抱き締める。


「お兄ちゃま大好き……直ぐに帰るからね」


「俺も大好きだよ美月……待ってるよ」





 美月は明日長野に戻る……直ぐに帰ってくるかは…………



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