39-2 裕の凄さ


 「もう本当になんなの!いっつもいっつも!」

 

「お兄ちゃん、なんだか知らない得たいの知れない物に私達邪魔されている様な気がするんだけど!」


「得たいの知れないって……」


「お兄ちゃんもガッとしちゃってよ、ガッと」


「そんなファーストキスは嫌です」


「ファーストキスは美月ちゃんとしてる癖に……」


「寝込みを襲われるのはファーストキスじゃありません」


「じゃあ私も襲っちゃおっと~」


「色々ヤバイんで、止めてください栞さん」


「えーーーーーー」


「えーーーじゃないよ、寝込みは駄目です、そもそも勝手に部屋に入らないように!」


「お兄ちゃん、隠してくれないと面白くないよ~~」


「ふふふふ、最後の手段を使ったぞ、例の本は隠さない、スマホのパスも外した」

 もう隠すの止めた、普通に置いてある、諦めました……


 妹は俺の腕を掴む力を強め、肩に頭を乗せる、そして……



「ねえ……お兄ちゃん……石垣で美智瑠ちゃんと麻紗美ちゃんに告白されたでしょ?、返事はしないの?」


「え?」

 やっぱりしないといけない……よな……でも……


「美月ちゃんにも告白されたでしょ? どうするのお兄ちゃん……」


「……」


「3人ともお兄ちゃんが大好き……私も……」


「えっと……」

 正直実感が無い……本当に?



「お兄ちゃんてさ、人を信用してないでしょ……基本的に人間嫌いなんだよね……」


「そんな事……ないと思うけど……」

 まあ、あまり好きでは無いのは確かだよな、ボッチ気味だし……


「なのに助けちゃうんだよね……そして傷付けたくない……、お兄ちゃんて優しすぎるんだよ」


「そうなのかな~~?」

 妹が言うならそうなのかも知れない、自分では自分の事なんか分からない、俺って普通じゃなかったのか?


「だから……私ね前にも言ったけど、お兄ちゃんの優しさを利用したの、お兄ちゃんなら断らない、私を傷つけない、そんな打算があった、酷い子だな私って」


「ああ、それで俺を束縛しないって言ってたよな、でも今腕を掴んで俺を思い切り束縛してるけどね」


「今は刑の執行中だから良いの!!」


「それもある意味束縛だけどな~~先生の家に行って罰を受けるってさ」


「違うもん、嘘付いたからだもん……」


「……そうか嘘は駄目だよな……ごめん」


「お兄ちゃん、私に、私達を傷つけない様に嘘を付いたんでしょ?、でもね私にも美月ちゃんにも言ってくれれば良かったんだよ、少し一人になりたいって……」


「うん……そうだね」


「お兄ちゃんに嘘を付かれたのもショックだったけど、私達も信用されてなかったって事が少しショック……」

 妹はそう言ってグリグリと頭を肩に押し付ける、ちょっと気持ちいい……


「ごめん……、でも信用とかじゃないんだと思うんだけど、本当に魔が差しただけなんだよ~~」


 すると突然妹は笑いだす、さっきまで全く表情を崩さなかったのに急にコロコロ表情を変える様になる、なんか演技派だよな妹って……


「ふふふ、嘘だよお兄ちゃん、わかってるよ」


「え? あ~~しおりいいい」


「えへへへ、仕返し、美月ちゃんも私も分かってるよ……」


「そ、そうだよ、栞も俺に嘘を付くじゃん、プリクラの時とか……」


「……今までお兄ちゃんの事を好きって隠してたとかも、嘘だし?」


「……うんそうだな、ずっと騙された」

 本当にずっとずっと騙されてたて……

 

「でも、お兄ちゃんが他人をあまり信用していないってのは本当だよ、だから凄いなって思うんだけどね、それでも相手が困っていたら飛び込んで行っちゃう所が……」


 そんな言うほど助けてないと思うんだけど……本当に妹は俺を美化しすぎてるんだよな~~


「あとね告白の件は美月ちゃんが心配してたよ、あんなに鈍感で大丈夫かって、恋愛に鈍すぎだって小学生以下だって」


「あちゃーーそんなに怒ってたか……昨日帰って来てから普通にじゃれてきたから、そこまで怒ってないと思ったけど……」


「あれは、じゃれてる通り越してたけどね……ふん!」

 まあ……妹が怒るくらいには、じゃれついてきた……


「だってさー、考えてくれよ、栞は妹だろ? 美月は小学生だろ? 美智瑠は元男友達で、麻紗美は中学の時にクラスで喋ってただけ、なんでそれで俺が好かれるんだ? ラノベの主人公かよ?」


 普通気が付かないよな、俺ってそんな魅力ないだろ?


「あーーーやっぱりそうなんだ、うええええええええええん、お兄ちゃんやっぱりそうなんだあああ」


 突如妹が泣き出す、えええええええ?


「ちょ、ちょっと栞なんで泣くの?」


「だっでえええ、こないだ皆と話した通りなんだもんんんん、ふえええええええええええん」


「えええええ、なんの事? てかいつ皆で会ったんだよ? …………ああああ! 美月がこれから用があるって言ってたのは!」


「ふぐうう、おにいじゃんのばかああ、ううう」


「えーーーー? 何? 何なの? なんで泣くの? 俺そんな変なこと言った?」

 妹は袖で涙を拭う、あーーあ袖がびしょびしょ


「お兄ちゃん! 本当に私の事妹としてしか見てないって分かったから!! そしてお兄ちゃんの恋愛脳は幼稚園以下って分かったから!!」


「小学生以下から幼稚園以下に格下げ!?」


「お兄ちゃんて……人を好きになった事無いでしょ? 恋したこと無いでしょ?」


「そ、そんな事無いぞ……俺だって可愛いとか思ったり?、綺麗とか思ったり? その…………したいとか……思ったり?」


「それは恋じゃないいいいいい!!! それは性欲!!!」


「いやいやいやいや、てかそれってセットじゃ無いのか?」


「セットだけど先に恋がないと駄目なの!!」


「恋って下心だろ」


「恋を愛に変えるんだよ、下心から真心にするの! それが恋愛なの!!」


「あーーー、……でもそれと俺が恋をしたことが無いと、どういう関係があるんだ?」


「お兄ちゃんは恋に理由を求めてるから……」


「理由は要るだろ?」


「理由は後付けなんだよ……先に落ちるのが恋なの!」


「後付け?」


「そう、気が付いたら好きになっていた、で、なんで好きになったんだろうっ考えるの、そうすると理由が浮かぶの、でもね理由があってから恋をするなんて聞いたことが無い」


「えーーでも可愛いから好きだってなったり、優しいから好きだってなったりするだろ?」


「それを考えた時点でもう恋に落ちてるんだよ、それが既に後付けなの」


「そうなの?」


「少なくとも私はそう考えているよ」



「だからお兄ちゃんは恋をしたことが無いって……つまり私の事も愛して無いって事……ふええええええええええええええええん」


「いやいやいやいや、そこで泣かれても……兄妹愛はあるから、凄く愛してるから」


「私はお兄ちゃんと恋愛がしたいの!! びええええええええええええええええん!」


 妹は大泣きする……でもまあ、最近妹の事が分かってきた、この泣きかたは半分演技入っている……しかしカラオケボックスで良かった……喫茶店とかなら偉いことになってた。


「お兄ちゃん! お兄ちゃんのお陰で私これから嫌な事を三つも言わなくちゃいけなくなった!! 責任取って」


「えええええええ、なにそれ? 意味がわからん、責任?」


「キスして!!」


「やだよ!、なんの責任だよ」


「もう~~私これから私にとって嫌なことを言わなきゃいけないんだから、少しはサービスしてくれてもいいでしょお兄ちゃん」


「嫌な事ってなんだよ?」


「キスしてくれたら教える!」


「意味がわからん……やだよ、それこそさっき言った事だろ、恋愛してないのにキスするって、性欲だけって事だろ」


「それは私にだけは向けても良いの!!」


「それこそ嫌だよ……、じゃあおでこにするから、な? それで話してくれよ」


「うううう、お兄ちゃんのヘタレ、じゃあはい!」

 妹は目をつむる、ここでふつうにキスするのがいいんだろうけど……、すんませんヘタレなんで普通におでこに……




「お兄ちゃんのヘタレ……ここで普通にキスするのが良いのに」

 といいつつ、妹は真っ赤な顔になり、口元が緩んでいる……


「やだよ~~ほらしただろ、約束は守ろうな」


「ぶうううううう」


 膨れっ面になる妹、ほっぺた超可愛い、押してみたら怒るかな?

 

 俺が押そうとする前に少し神妙な面持ちになってしまう妹……残念


「じゃあ一個目美月ちゃんから聞いてるでしょ?」


「えっと……ああ、なんか栞と話してくれって言われてたよな」


「うん」


 妹は美月の今後の話をし始めた……


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