35-3 裕と栞と美月


 ノックの音がした……

「どうぞ~」

 お兄ちゃんとはノックの音が違う、お母さんは今日居ない、多分美月ちゃんだろう……

 

「お姉ちゃま、ちょっといい?」

 やっぱり美月ちゃんだった、多分来るだろうと思っていた。

 お兄ちゃんなら、美月ちゃんを助けられる……今日帰ってきたら美月ちゃんの雰囲気が変わっていた、聞かなかったけど……、おそらくお兄ちゃんが美月ちゃんを救ったんだろう……お兄ちゃんはやっぱり凄い!!、でも……


 そして美月ちゃんは相変わらずお兄ちゃんTシャツを着てる…………ずううるうういいいいいいい!!

 私だって隠れてしか着れないのに…………勿論使用済みのシャツ…………えへへへへ


「……うん、入って美月ちゃん」

 気を取り直し美月ちゃんを部屋に入れる。

 美月ちゃんは、部屋に入るなり私の部屋をキョロキョロ見回す。


「お姉ちゃまの部屋普通だね、お兄ちゃまの大きな写真とか貼ってあるかと思った」

 お兄ちゃんの写真?そんなの貼るわけないじゃない、お兄ちゃんの昔の写真は劣化しないようデータ化して保存してあるし、バックアップも何重にもかけてるから大丈夫、ネガもプリントも厳重に保管してる。

 

 最近の写真も全部データで保管、PCに全部入ってるしスマホにも容量限界まで入ってる、でもあんまり見ないの、何故なら私は目を瞑れば……、お兄ちゃんがそこにいつでも現れる、ああ、お兄ちゃん……、きゃああああああああ、このお兄ちゃん、格好いい……


「えっと……お姉ちゃま……相変わらず異世界に行っちゃうのね……」

 お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃんがああ、えへへへへへ!!!


「は!、ご、ごめんね……えっと、座って美月ちゃん」

 美月ちゃんを丸テーブルのパンダの座布団に座らせる、熊の座布団もあるんだけど、あれはお兄ちゃんが座ったのでもう誰にも座らせない……


 私は、部屋に置いてあるコップに飲もうと思って部屋に持ってきてたウーロン茶を入れる。


「少しぬるいと思うけど」


 そういって美月ちゃんに出す。

 美月ちゃんは大丈夫と首振り、少し飲むと私を真っ直ぐに見つめる。


「あのね、お姉ちゃま……今日はありがとう、お兄ちゃまと二人きりにしてくれて……」


「ううん、いいの……、美月ちゃん、今日は栞姉ちゃまじゃなくて、お姉ちゃまなのね?」

 微妙な変化だった、たまに、いい間違いの様にお姉ちゃまとは言っていたけど、今日は終始お姉ちゃまなんだ……


「うん…………お姉ちゃま……ありがとう……嬉しかった」

 突然感謝をされる、感謝される様な事ってやっぱり……


「えっと?、何が」

 お兄ちゃんと二人きりにになった事しかない?、それは嬉しいよね、嬉しいに決まってる、ううう私は悲しいよおおお、身を切り裂かれる思いとはこの事だよおおお


「今日ねお兄ちゃまに抱き締められたの……」

 美月ちゃんが目を閉じて自分の身体を抱き締める…………!!!!!


「な、な、な、な…………」

 いやあああああああああああああああああああああ、お兄ちゃんが……お兄ちゃんが……やっぱり……私に手を出さなかったのは……やっぱり……ふえええええええええええん、お兄ちゃんがロリコンになっちゃったよおおおおお、え?どうすれば、え?白井先生に相談すればいい?大人になってもロリでいられる方法を……


「うふふふふふ、大丈夫だよお姉ちゃま、ちょっと脅かしただけ……お兄ちゃまはそう言うつもりじゃ

 ないよ」

 あわてふためいている私を笑い出す美月ちゃん……ううう、そういうつもりって……どういうつもり…………


「……えっと、そんな心配なんてしてないわよ、全然、これっぽっちも…………」


「ふふふ、本当お姉ちゃまってお兄ちゃまの事になると全然凄くなくなっちゃうんだね」


「うう、私は凄くなんかないよ、凄いのはお兄ちゃんだもん……」


「うん……本当にそう……、今日ねお兄ちゃまに抱き締められて言われたの、お前は俺の妹で家族だって、お姉ちゃまもそう言ってるって、寂しかったらずっと一緒に居てくれるって、嬉しかった、そう言ってくれて凄く嬉しかった、美月嬉しくて泣いちゃった……お兄ちゃまって、凄く凄く暖かいんだね……」


「美月おばあちゃま、おっと弥生ちゃまも、お母さまもお父さまも居て、お姉ちゃまと、お兄ちゃまも出来ちゃった、これで寂しいなんて言ったらバチが当たるね、お姉ちゃま……美月を妹にしてくれてありがとう、お姉ちゃま…………大好き!!」


 美月ちゃんが私に飛び付く、ウサギの様な瞬発力で………

 勢い余って後ろのベットに背中をぶつける、


「きゃああああ、美月ちゃん痛いよ~~、背中ぶつけたよおおお」


「えへへ、お姉ちゃまあああ」

 美月ちゃんが頬をすりすりしてくる、可愛いな~~妹って可愛いな~~…………は!!これか!!これが妹が可愛いって感覚か!!

 これをお兄ちゃんに使えば、もっと私を可愛いって思って貰えるかも~~~!!美月ちゃんありがとう!!


「でもね、お姉ちゃま……」

 美月ちゃんが私の首に抱きつきながら、耳元で呟く……


「お兄ちゃまは、渡さないよ……もう美月はお兄ちゃま無しでは生きていけないの……お姉ちゃまは大好き、お姉ちゃまがお兄ちゃまを死ぬほど好きなのも知ってる、でもお兄ちゃまは譲らない……お姉ちゃまとお兄ちゃまが付き合ってるのは知ってる……だから…………」


 美月ちゃんは私から離れ背筋をピンと伸ばし正座をする。

 そして先ほどまでの笑顔から一転真剣な眼差しで私を見つめる。


「お姉ちゃまは大好き!でもお兄ちゃまはもっともっと大好き、だから大好きなお姉ちゃまに、美月は宣戦布告をします!、お兄ちゃまを、お姉ちゃまから奪います!!


 私も美月ちゃんの前に正座をして、同じように背筋を伸ばす。


「美月ちゃん!お兄ちゃんは絶対に上げない、誰にも渡さない!!、その宣戦布告、受けて立つよ!……かかってこい!!」

 私は美月ちゃんに向かってファイティングポーズ取る。


 そして私と美月はちゃんは二人で見つめあった後に笑った、ゲラゲラと笑った、今言った事は冗談っていう意味の笑いじゃない、何か同士が見つかった、そんな思いの笑いだと思う。


「でも、美月ちゃん……お兄ちゃん、最近結構モテるんだよね……、私たちで取り合ってると、トンビに油揚げをさらわれるかも……」


「漁夫の利を狙ってる人がいるのね……ああ、あの美智瑠ちゃんと麻紗美ちゃんね……あとあの生徒会長も……美人ばっかり……手強そう……」


「うん、後ねうちのクラスの担任も……凄く可愛いくて、しかもお兄ちゃんからラブレターを貰ってるの……」


「お姉ちゃま……!!」

「美月ちゃん……!!」

 私と美月ちゃんは、握手をする……


「とりあえず……!」

「うん!!」


「協力しよう!!」

「協力しよう!!」


 この握手で、お兄ちゃんを他の人に取られない様にするという協定が締結される、先ほど宣戦布告をした直後に休戦協定を結ぶという……やっぱり、いとこだけあって似た者同士の二人だった……




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