18-2 生徒会


 「あ、お兄ちゃん買い物付き合って」


 妹は、会長って、副会長に依存してんじゃね?、という謎の言葉を言うだけ言って、後は興味なしとばかりに買い物に誘っくる。

 この切り替えの早さは凄いなと思うよ。


「買い物ってどこへ?」


「えっとねえ、今日お母さんご飯作れないって言ってたから、私が晩御飯作るの、何食べたい?」


「うーーん」

 まず妹が何を作れるのか分からないんだけど? そう思ったら妹がメニューを言ってくれた。


「何がいい?、ハンバーグ?、カレー?、オムライス?それとも、わ、た、し?」

 お決まりのネタを入れてきたので、普通に返したらどうなるか、やってみたくなった。


「じゃあ、栞で」


 すると、妹は俺の前まで近づき、手を後ろに組、目を瞑り、背伸びをして俺の顔の前で


「はい、め、し、あ、が、れ」

 その艶のある小さな唇から紡がれる言葉におれは思わず……



「はい、すみませんでした、ハンバーグで!!!」

 素直に謝った。


「えーーーーー」

「えーーーーじゃねえよ、こんなところで、そんな事して、誰かに見られたら……」

 何か気配を感じて横を見ると、なんかそこに見覚えのある頭、いや銀髪の美少女がって美智瑠!

 銀髪美少女の渡ヶ瀬 美智瑠が俺たちのそばで、茫然とし鞄を落として立っていた


「み、み、美智瑠、これは、これはその」

 俺があたふたしながら言い訳をしようとしたところ、フリーズしていた美智瑠が再起動した。

 しかし、再起動したが直らず壊れたロボットの様に


「き、き、き、きみたち、ききき君たちは、そういう関係だったのか!、えっとえーーっと兄妹、兄妹だよな、僕は、そういうのはどうかと、あ、いや、それは、君たちの心次第ってのは、わかるぞ、でも、親友としてだな」


「落ち着け、落ち着け、美智瑠、ちがうそうじゃない!俺たちはそういう仲じゃない!」


 慌てて美智瑠に今の経緯を話そうとしたが、美智瑠は壊れっぱなしで治らない。

「き、き、キス、兄妹、キス、天ぷら、兄妹の天ぷら」


「いや兄妹の天ぷらは無いからオーイ」


 妹は何をしていると横を見ると


 あっちゃーーーみたいな顔をしてソッポ向いている


「栞、お前も何か言ってくれよ、冗談だったってー」


 すると、小さな声で

「えーーー、冗談んじゃないんだけどなーー」

「い、い、か、ら、」

「はーーーい」


「おーーーい美智瑠ーーおーーい」

「美智瑠ちゃーーん」


「きすきすきすきす、スキ?すき?」

 

 あ、駄目だこりゃと、美智瑠をすぐそこの公園まで連れていく。

 妹は美智瑠が落とした鞄を持ち、後ろから付いてくる。


 自販機で冷たいお茶を買い美智瑠に飲ませる。


 グビグビと飲み、はーーーっと息を吐く美智瑠、ようやく落ち着いたのか目がぐるぐるしなくなっていた。

 そして俺達に向かってこう言った


「君達は、キスだったのかーーー!」


 駄目だ、まだ治ってないや……




 ####



 ようやく落ち着いて来たので、美智瑠にことの顛末を話す。


「そうか、冗談を冗談で返した訳だな、はははは相変わらず君たちは仲がいいな」

 乾いた笑いだが、笑顔になった美智瑠、そう言ってようやく納得したようだ。

 妹は不満な顔をしているけど……


 美智瑠はさっきの事は無かった事の様に話しを変えてきた。


「そう言えば栞君、昔、自分の事を言わないで、いてくれてありがとう、一度お礼を言わなければいけなかったよ」

 美智瑠は妹に頭を下げる。


「ううん、私こそ、美智瑠さんがいなくなった時に、お兄ちゃんに言えば良かったの、そうしたらお兄ちゃんも美智瑠さんも困らなかった」


 妹は少し考え、美智瑠に向かって当時の自分の気持ちを語り始めた。


「私ね、美智瑠さんに焼きもち焼いてたの」


「僕に?」


「うん、お兄ちゃんと一緒にボール蹴って、お兄ちゃんも美智瑠さんも凄く楽しそうで、羨ましかった」


「私ね、美智瑠さんの事、大嫌いだった、だから本当は全部ばらして困らせようと思ったの、でも出来なかった……」

 妹はその理由を言わなかった、そして美智瑠も聞かなかった。


「だから、謝らないで、あやまってほしくないの……」

 悪いのは自分、それとも美智瑠、それとも俺か……


「そうか、分かったよ、もうあやまらないよ」


 そう言うと美智瑠はその美しい顔を、さらに美しく見える笑顔で妹に聞く。


「今でも僕は嫌われているのかな?」


 妹は首を傾けたまま美智瑠を見て正直に言う。

「うーーーん、ちょっと嫌い?」


「ははは、ちょっとか」


「うん、凄く綺麗になったから、ちょっと嫌い」


「じゃあ、僕も君の事が、君よりもちょっと嫌いだな、凄く可愛いし、素敵なお兄さんがいるしね」


「うん」

 お互い見つめあって、笑いあう。


 おーい二人とも俺の存在忘れてない?


「そう言えば美智瑠、ここで何してんたんだ?」


「え!あ、そ、えっと、ちょっと昔を思い出して、この辺を歩いて、見てただけだよ、あ、といっても、決して君との懐かしい思い出に浸りたかったわけじゃないんだからな、勘違いするなよ」


「いや、そんなテンプレツンデレ、しなくてもいいんだけど」


「そ、それより君たちも遅いじゃないか、今頃帰りとは何をやってたんだい」


「あー、俺達は今、生徒会でちょっと手伝いを頼まれているんだよ」


「生徒会……?」

 美智瑠の顔が怪訝な顔に変わる。


「どうしたんだ?」


「あー、いやちょっとな」


「何かあったのか生徒会で」


「うーーん、まあ昔の話しなんだけど、家の近所に物凄い豪邸があってな、僕はその家の近くでよくボールを蹴っていたんだ、ある日そのボールがその家の庭に入ってしまってね、ちょうどそこに同じ歳くらいの女の子がいたんだ、僕はその子に、すみませんボール取って下さいって言ったんだよ」


「そうしたらその子持っていたハサミで、いきなり僕のボールを……ブスッと」

 美智瑠は何かに向かって振り下ろす仕草をしながら説明する。


「うわ」

 その仕草が生々しく声が出てしまう。


「パパに買って貰った大切なボールだったからな、僕は怒鳴ったんだ」


「そうしたら、その子はニヤッて笑って、怒鳴る僕を無視して家に入って行ったよ」


「その後、家の人、今思うと執事の人なのかな、その人がお金をくれたんだけど、突き返した、あの時は悔しかったなー」


「で、それが生徒会と、どう関係が?」


 美智瑠は一瞬迷ったそぶりを見せたが、そのまま話しを続けた。


「あの時の女の子、あれ副会長なんだよなー」


「本当に?」


「うん、その家の表札が確か市川だったし、入学式の時に会ったけど間違いないよ、僕は悔しかったからねー印象に残ってるよ、向こうは覚えてなかったみたいだけど」


「でも態度には面影なかったな、常に笑顔だし、清楚で優しい感じがしたけどね、まあ子供の頃だし、何かイライラしていたのかも知れないし」


「僕も、道端でボール蹴ってたのが悪かったしね、それで場所を探していたんだよ、そのおかげで君とも会えたんだから」


「じゃあ暗くなる前に帰るよ、一応女の子だからな」

 その話しを終わらせ、そう言って美智瑠は笑顔で帰っていった。


 美智瑠の背中が見えなくなるまで見つめた後に、妹に今の美智瑠の話しをきいてみた。

「栞、どう思う」


 妹は見えなくなった美智瑠の歩いて行った方を見つめながら答える。

「美智瑠ちゃん、絶対にお兄ちゃんの事好きだね」


「いや、そうじゃなくて」


「ふん、よかったねお兄ちゃん、ほら買い物いくよ!」


 そう言って歩いていく妹の後をついて行きながら思った。


 妹に会長に先生に副会長まで入るのか、

 あーーなんか、この先、めんどくさくなってきたー。




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