18-1 生徒会
約束の火曜日、完全にヘソを曲げてしまった妹を、二日間あらゆる手を使いまくり機嫌を取った。
ここでは言えない約束までさせられ、ようやく機嫌がよくなり生徒会室に一緒に向かう。
葵会長、白井先生、妹、この三つ巴の中に突っ込んでいくって一体何なのマジ勘弁
今日はラップも出来ないのにラップっぽく、ぶつぶつ言いながら歩いていく。
そう言えばと思い出し、
「栞って中学の時に生徒会長に推薦された事なかったっけ?」
確か、そんな話しを聞いていたので確認すると。
「されてたけど、断った」
まあこの妹なら生徒会長くらい余裕だろうなと思いきや断ったと言われ、断る理由ってなんだろうと興味本意でつい聞いてしまう。
「へーーなんで?」
「お兄ちゃんを見る暇がなくなるから」
皆からの推薦を断る理由がそれですか……
「あーーそうですか……」
「うん、私のライフワークだから」
「ライフワーク、俺を見ることって……」
妹とは、一度真剣に話し合った方が、良いんじゃないだろうか?
そうこうしている間に生徒会室に到着、ノックをすると中から、どうぞとの声、
察するに書記の町屋さんだろう
「失礼しまーす」
中に入ると、すでに全員部屋にいた、はええなお前ら授業受けてたのか?
「こんにちは、裕さんに、栞さん、ご苦労様です」
明るくいつものアルカイックスマイルで挨拶をする会長、本当に同一人物?
と今でも疑ってしまう。
「こんにちは」
俺と一緒に妹も挨拶、わだかまりは、まだ解けていないだろうが、ここは大人しく挨拶している。
「まだ先生がいらっしゃってないの、生徒会主導で行う事になってるので、抜きで初めてもいいのだけれど、一応今回が実質初回ということで、参加したいとおっしゃってたので、いらっしゃるまで待ってていただけますか?」
俺がうなずくのを確認して、書記の町屋さんにお茶を出すように言う。
というか、生徒会室にお茶の用意って普通あるのかな?という疑問を今さら思いつつも、某軽音部にもあるし良いかと自分で納得し待っているとノックの音と共に、白井先生がツインテールを弾ませて部屋に入ってくる。
「遅れてごめんさない」
先生は俺と目を合わせる事なく、おもむろに席に着く
一瞬、妹がビクッと身体を震わせていたが、見てない事にした。
「では、揃った所で始めましょうか」
そう言い今回の集まりの趣旨とその経緯の説明が先生よりされる。
先生の話しはこの間も言っていたが要するに、ボランティアを学校でなんかしらやって、それをまとめてレポートを提出しろと、お偉い方々から言われたって事らしい。
まあ、体よくいっても、めんどくさいんで、生徒会に丸投げしとけって事だな。
ほんと生徒会って日頃なにしてんのかと思ってたけど、こんな事してんだな、お茶飲んでだべってるだけだと思ってた、あのラノベとかあのアニメとか……
そして、簡単に何をするのかどうするのか
まあ5W1Hを話し合う、When、Where、Who、What、Why、How、いつ、どこで、誰が、何を、何故、どのように、を決める。
そこにさらに、予算 How muchが加わり
そんなのは無いけど、5W2Hって事になるのかな?
W多すぎて草生えるWWW
さあ、では話し合いましょうと言う事になったが……
生徒会長が副会長に尋ね、副会長が何か提案、書記が良いねと言う、しかし副会長がそれのデメリットを言うと、書記がじゃあダメだねと、今度は会長が提案、また書記が良いね、副会長がそれだと予算がというと、書記が駄目だね……
延々話しが進まない、書記は良いねと駄目だねしか言わない、お前はフェースブックか、ついでに悲しいねも言え
内輪だけで色々話している状態、俺らいる?と思い白井先生を見ると、先生は俺をじっと見ていた。
そして、俺と目が合うと、真っ赤になって顔をそむける。
えーーーー何?、その態度
隣の妹がまたビクッとなるのを、またも見ないふり、ついでに先生の態度も見ないふり、横には妹、前には先生、その先には生徒会長、何この四面楚歌……
俺の態度に気付いたのか、悪魔、いや会長は俺達の方を向き、アルカイックスマイルでたずねてくる。
ちなみに今更ながらアルカイックスマイルとは微笑、すました顔で口だけ笑っているような状態、ググると怪しい彫刻が出てきて逆にわかりずらくなるから注意
「お二人はどう思いますか?」
しかし、なんの議論も進んで無い状態でどう思いますか?と言われても
「あー、いやよく分からないですね」
お前らの話しがな、と言うしかなく
「そうですか、なにかあったらいつでも言ってくださいね」
会長は、非常に優しい口調で言っているが、俺の脳内では
「ち、使えねえ」
と聞こえてくる。
不毛な議論が延々続き、結局決まった事は、毎週火曜と木曜日に集まる、夏休みに入るまでなんとか形にする。
この2つだけだった……
使えねえのはお前らだ!
以上で解散となり、妹と席を立った
梅雨も近いため空はどんよりし、気温もそれほど高くない。
昨日から衣替え、妹の半袖から伸びる細い白い腕にちょっと慣れてくる。本日はすこし肌寒く、その腕に鳥肌がたっているのがわかる。
二人で並んで帰るいつもの帰り道、今日は何も言わなかった妹にたずねてみた。
「栞、何も言わなかったけど、どうだった?」
「白井先生がお兄ちゃんの事ばっかり見てた、お兄ちゃん年上にもモテモテで凄いね!」
フンっとまた機嫌が悪くなる、ああ、帰ったらまた手の皮が剥ける程、頭を撫でさせられるのか……
「いや、そうじゃなくてな、今日の生徒会の人達どう思った?」
妹は首をかしげ、今日の3人の会話を思い出すように考える。
「うーーーん、会長さんと副会長さんが逆に見えたかなー?」
「逆?」
「うん、なんかどっちが会長かわからないっていうかーーうーーーん」
さらに、どう言えばいいか考え込み、
「一言で言えば、依存かな?」
「依存?」
「うん、会長さんが副会長さんに依存している感じ?」
「依存?依存ねー」
またも抽象的でよくわからないが、あの会長が副会長に依存している?
そんな事があるのか?
しかし、妹の人を見る目、特に女子を見る目は確だ。
あの会長が……依存? 本当に?
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